<福島第一原発汚染水問題・徹底分析特集!> 特集4. 漏れ続ける汚染水 実害と風評被害に揺れる地元漁業者の嘆き( IWJウィークリー15号より) 2013.9.2

記事公開日:2013.9.2 テキスト
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(文責:岩上安身/取材:箕島望・大西雅明/記事構成:原佑介)

タンクの高濃度汚染水は、海へ「ダダ漏れ」だったのか!?

 今回、流出事故を起こしたタンクは、海から約500m離れていることを理由に、東電は、タンク汚染水の海洋流出について、「可能性は低い」としながらも、「否定はできない」と説明している。

 だが、後になって、付近の排水溝に、H4エリアから水が流れた形跡が見つかっており、排水口からは毎時6mSvもの線量が確認された地点も見つかった。排水溝は海に直結していることから、タンクの汚染水が海に流れ出た可能性は少なくない。

 ここで無視できないのが、排水口のすぐ先の海が、シルトフェンスも遮水壁もない「外洋」であることだ。 1リットルあたり8000万Bqの高濃度汚染水が、ダイレクトに外洋に出ていたとすれば、これまでにない、また新たな深刻な海洋汚染の発生である。

 もっとも影響を受けるのは、地元・福島沖の漁業者だろう。日に日に深刻さが明らかになる海洋汚染に関するニュースを、固唾を呑んでチェックしているのではないだろうか。

 残念ながら、8月21日、福島県いわき市漁協は、9月5日からスタートする予定だった試験操業を延期することを決定した。2012年6月から試験商業を行っていた相馬市の相馬双葉漁業協同組合も、9月初頭からの試験操業を見送ることを決めた。

福島県漁業者「完全に裏切られた」

 IWJは、地元・福島県漁業協同組合連合会に連絡し、JF福島漁連指導部のAさん(本人の意向で名前は明かせず)に、その胸中をうかがった。

「漁業関係者の中には、海水のモニタリング調査、福島沖で導入される実証研究用の風力発電関連の仕事など、十分ではないが、一時的に別の仕事についている人もいる状態だ」。このように福島県内の漁業者の現状を話すAさんは、参院選翌日、7月22日に地下汚染水の流出が公表された時には「完全に裏切られたという感じがした」と、その心情を語る。

 Aさんは、政府に対する怒りも口にする。

「政府の対応には原発直後から満足していない。東電に任せられないといって、ようやく政府が動き出したが、いくらなんでも遅すぎる。国には汚染水が出ないように早く根本的な対策を取って欲しい」

 さらに、地下汚染水流出の公表から、1ヶ月と経たずに、新たなタンクからの漏洩事故が発覚した問題について、残念そうにこう語る。

「タンクから漏れた放射性物質量は24兆ベクレルという報道があるが、海洋に流出したかどうかは現在調査中だ。べらぼうな数値だけが一人歩きしたら、結果、風評被害につながってしまう」

 大きく報じられると風評被害が広がる。しかし、事実が報じられなければいい、というものではないことも、十分わかっている。胸中、様々な思いで揺れ動く。

「原発事故は全く収束していない。収束宣言を正式に撤回し、汚染水漏洩の原因究明と、漏出を完全に防止する対策を直ちに講じてほしい」

 Aさんらが事故前のように、漁業を完全に再開できる日はくるのだろうか。現在の福島第一原発の状況を考えると、残念ながら、まだまだに見通しの立たない、先の話になるような気がしてならない。

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