<福島第一原発汚染水問題・徹底分析特集!> 特集1. タンク漏洩事故を検証!~高濃度汚染水漏洩は「必然」だった!( IWJウィークリー15号より) 2013.9.2

記事公開日:2013.9.2 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文責:岩上安身 取材:箕島望・大西雅明 記事構成:原佑介)

1リットルあたり8000万ベクレル×300トン=24兆ベクレルの汚染水漏れ

 福島第一原発は、新たに「レベル3」の事故を迎えた。

 「福島第一原発の事故は、収束どころか、事態はどんどんと悪化し、人類未踏の領野へと踏み込みつつある。これからも、さまざまな想定外の出来事が起こり続けることは覚悟しなくてはならない」――。

 これは、地下から毎日300トンの汚染水が漏洩していた件に言及した「IWJウィークリー14号 箕島望&原佑介式ツープラトン・ブレーンバスター」の中で記述した一文だが、発行から一週間も経たないうちに、「想定外の出来事」は発生した。

 貯水タンクから300トンもの高濃度汚染水が漏洩していたのである。この高濃度汚染水は1リットルあたり8000万Bq。合計24兆Bqが漏洩した計算だ。ケタ違いすぎて、おそらく一般の日本国民の誰も、この汚染レベルを「実感」できないだろうと思う。

 今回の汚染水漏れ事故は、8月19日、「H4」エリアと呼ばれる当該タンクのエリア周辺の地表に、毎時約100mSvの表面線量を放出する水たまりができているのが見つかり、発覚した。東電は4トンの汚染水を回収したというが、残る296トンは現在も行方不明である。地中に染み込んだ汚染水を土壌ごと回収するとし、26日現在、13㎥の土壌を回収している。

▲東電提供「タンク周辺のエリア図」

▲東電提供「タンク周辺のエリア図」

 原子力規制委員会は21日、漏洩量に鑑み、この事故を国際原子力事象評価尺度(INES)の「レベル3(重大な異常事象)」に該当すると判断した。

▲<参考>2013年6月11日福島第一原発入構取材貯水タンク風景

▲<参考>2013年6月11日福島第一原発入構取材貯水タンク風景

溶接もしていない急造タンクは、これまでも疑問視されていた

 漏洩が発覚したタンクは「フランジ型」と呼ばれる、鋼板の板をボルトで留めるタイプだ。事故直後の2011年6月、汚染水対策を急いでいた東電は、製造に時間のかかる「溶接型」ではなく、この簡易タイプの「フランジ型」タンクを350基用意した。うち300基には、原子炉の冷却に使用した高濃度汚染水が入れられている。

 フランジ型タンクの耐用年数は10年と言われているが、鋼版の板の継ぎ目に挟まれている「ゴムパッキン」と呼ばれる樹脂製の素材の寿命は5年とも指摘されている。このため、フランジ型の信頼性は疑問視されており、過去の漏洩も継ぎ目部分からのものであった。

▲<参考>2012年2月3日東電提供写真淡水化装置濃縮水貯水槽フランジ部分

▲<参考>2012年2月3日東電提供写真淡水化装置濃縮水貯水槽フランジ部分

 事故直後、簡易型タンクが応急処置として使われるのは、まだ理解もできる。しかし、事故から2年半も経った今も簡易型タンクを使用しているのは、どういうわけか。

「なるべく金をかけないで安上がりに作った」

 さらに「東電の財務事情から安上がりにすることが求められていた」とも明かしており、「野ざらしで太陽光線が当たり、中の汚染水の温度は気温より高いはず。構造を考えれば水漏れは驚くことではなく、現場の感覚では織り込み済みの事態だ。現場の東電の技術スタッフも心配はしていた」と、劣化が早まる可能性は予想されていたと話しているという。(毎日新聞 2013年08月25日付汚染水漏れ:「タンク、金かけず作った」協力会社会長証言)

 溶接式となれば、製造にかかるコストも違ってくる。簡易型タンクの調達費について、原子力立地本部長を務める相澤善吾(あいざわぜんご)東電副社長は、「1機について数千万円」だと述べ、具体的な金額については「回答を控えさせていただきたい」と濁している。

 事故によって途方もない損害賠償を抱えている東電は、いかにコストを削減していくかを常に計算しているのだろう。とはいえ、汚染が外部に拡大すれば、被害は甚大であり、取り返しがつかない。今回のタンク漏洩も、コスト削減が根本的な原因となっており、希望的観測でリスクを過小評価していたと言わざるを得ない。私企業としての東電の限界である。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です