「いわく付き」の漏洩タンク
汚染水を漏らしたタンクは、いわば「アウトレット」だったことも発覚した。
「アウトレット」とは、どういうことか。
汚染水が漏れた当のタンクは、導入当初、現在の「H4」エリアではなく、「H1」エリアに設置されていた。しかし、タンク設置後の水張り試験の際、「H1」エリアはタンクの重さに耐えかね、地盤沈下を起こしてしまった。そのため東電は、そのタンクをいったん解体し、「H4」エリアへ運んで再度組み立てたという。
(文責:岩上安身 取材:箕島望・大西雅明 記事構成:原佑介)
汚染水を漏らしたタンクは、いわば「アウトレット」だったことも発覚した。
「アウトレット」とは、どういうことか。
汚染水が漏れた当のタンクは、導入当初、現在の「H4」エリアではなく、「H1」エリアに設置されていた。しかし、タンク設置後の水張り試験の際、「H1」エリアはタンクの重さに耐えかね、地盤沈下を起こしてしまった。そのため東電は、そのタンクをいったん解体し、「H4」エリアへ運んで再度組み立てたという。
汚染水を漏らしたタンクは、いわば「アウトレット」だったことも発覚した。
「アウトレット」とは、どういうことか。
汚染水が漏れた当のタンクは、導入当初、現在の「H4」エリアではなく、「H1」エリアに設置されていた。しかし、タンク設置後の水張り試験の際、「H1」エリアはタンクの重さに耐えかね、地盤沈下を起こしてしまった。そのため東電は、そのタンクをいったん解体し、「H4」エリアへ運んで再度組み立てたという。
つまり、使い回し、2次利用のタンクなのである。当然、最初の地盤沈下の影響で、タンクに歪みなどが生じた可能性が考えられる。
東電は「地盤沈下に伴ってタンクの底がゆがみ、接合部に影響が出たことも考えられる」と、使い回しの過程でタンクが損傷し、今回の汚染水漏れにつながった可能性があることを記者会見で認めた。引き続き原因究明のための調査を行うとは言うものの、手遅れの感は否めない。
東電は、後手後手に回り続けている。
地盤沈下による影響で、H1エリアから移設したタンクは、他にも2基、存在する。東電は、残る2基内の汚染水も移設したが、これらのタンクが使いまわしのものであったことを東電が把握したのは、漏洩発覚から6日後の24日のことだ。あまりにも遅い。
首をひねるのは、それだけではない。タンクの製造や設置を、メーカーやゼネコンに任せきりにし、今回漏洩があったタンクが移設されたものであることも、まるで把握していなかったというのだ。にわかには信じられないような無責任さである。
IWJは、会見で、タンク再構築後の、水張り試験時の写真を提出するように求めた。
IWJ「水を入れた後、おそらく数時間後に目視確認を行っているはずだが、具体的に何時間後かを教えていただきたい」
東電・今泉典之原子力・立地本部長代理「確認させていただく」
IWJ「おそらく、施工管理会社が、証拠を残す意味で、目視の様子を写真におさめているはず。その写真を提出していただけないか」
今泉「そういう写真が存在しているかどうかという点は、把握していない。確認し、回答する」
IWJが聞き取りをした大手ゼネコン関係者によれば、現場では必ずそうした確認作業がなされるのだという。写真があれば、水張り試験が適切に行われたかどうか、責任は誰にあるのか、原因究明の重要な手がかりになる。
ところが東電は、IWJの照会に対して、そうした証拠写真があったかどうかも把握していないなどと曖昧な態度に終始し、いまだにはっきりとした回答を出そうとしない。誠実さを欠いた姿勢と言わなくてはならない。
東電の記者会見は、時に滑稽ですらある。
東電は、これまでも、タンクからの漏洩はないことを確認するために、毎日、作業員らによるパトロール体制を敷いていたというのだが、その実態は驚くべきものだった。
パトロールは1日2回行われていたというが、なんと、敷地内に約1000個もあるタンクを、1回あたり2時間をかけて、2人で巡回していたというのだ。タンクは広い敷地内に点在している。漏洩がないかどうかを確認しながら、わずか2時間ですべてのタンクを見て回るなど、物理的に不可能である。
東電は記者会見で、大真面目な顔でこのように説明するが、今では、このような説明に対しても、記者からは驚嘆以上に失笑が漏れることが恒例となっている。
26日に福島第一原発を視察した茂木敏充経済産業大臣は、パトロールの回数を1日4回に増やすよう、東電に指示。この支持を受け、東電は、パトロール要員も、現在の9名から60名にまで増員することを決定した。
汚染水など漏れるはずがないと高をくくっていたのか。それとも、そうしたことすら想定しない、できない思考なのか。どれほどいい加減なことをやろうとし、原発の維持・推進は「国策」だから、どうせ法的責任を問われることもないと踏んでいるのか。東電の考えていることは、本当に理解できない。
ニューヨーク・タイムズは、8月23日付の記事で、「福島第一原発は非常事態宣言すべきだ」と書いている。世界中から悲鳴のような懸念が寄せられている。にも関わらず、我が日本の誇るべき東京電力は、相も変わらぬマイペースぶりである。
ずさんな管理体制が、果たして本当に改善されるのか。不安は拭えないが、これまでの「お散歩」のようなパトロールを繰り返すことはないよう、切に願いたい。