10月1~8日まで、インドネシア・バリ島で行われたTPP関係閣僚会合ならびに首席交渉官会合の中身について、日本の報道はあまりに少ない。安倍政権は「年内妥結を目指し、日本が主導的役割を果たす」と意気込むが、実際は当初想定していた「大枠合意」には至っておらず、各国の利害が対立し、交渉は長期化するのではないか、との見方も出始めている。
バリTPP閣僚会合のために出張した篠原孝 衆議院議員・TPPを慎重に考える会会長は、10月17日、同会とTPP阻止国民会議が主催する報告会で、TPP交渉の現状についてレポートした。
現地バリ島では、同時開催されたAPEC一色だったという。インドネシアは、中国・ASEANのFTAで大打撃を受けていることから、TPPには拒否反応がある。TPP交渉に参加していないこともあり、「現地ではほとんど報道されず、かなり冷ややかな対応だった」とその様子を語った。
交渉は一気にしらけムードに
そんな中、オバマ米大統領が国内の財政問題を理由に欠席。予定されていたマレーシア訪問も見送られた。国有企業の問題などを抱えるマレーシアでは、5月の総選挙でTPPに反対する野党が得票数で与党を上回ったこともあり、TPP交渉に対し強硬な姿勢を示し始めている。バリ島でナジブ首相が、公然と「年内の妥結は時間的な余裕がなく、困難」との考えを表明し、またオバマ米大統領の欠席も相まって、一部では「ドーハラウンド化」(※)とも言われ始めているという。
(※)ドーハラウンド
WTO(世界貿易機関)による多角的な貿易自由化交渉。1994年のウルグアイラウンド合意成立後、2001年、ドーハで行われた閣僚会議で開始が決定された。
交渉分野は、農業・非農産品の関税引き下げ、サービス貿易の自由化、途上国の開発促進や環境関連物品・サービスの自由化まで多岐にわたる。そのため、新興途上国と先進国、輸出国と輸入国など、交渉分野によって各国が複雑に対立し、交渉は難航・長期化。議論は膠着し、2008年7月には農業・鉱工業分野での交渉が決裂した。
参考:コトバンク・外務省HP
12月に政治的決着の懸念も