佐藤氏は、記者に、「Zさん」が怪しいと思った経緯などについて問われ、「消去法」だと述べている。

佐藤氏「消去法ですよね。消去法でいくと、これじゃない。これじゃない。で、まあ、X子さんでもないかなと。そうすると、って話ですよね。

　だから、あんまり、Zは、あくまでも俺の想像なので。推理というか、見立てなので」。

　また、佐藤氏は、被害者遺族とは一回も会っていないが、露木長官の発言は、遺族の気持ちを逆なでするもので「頭きますよね」と、憤りを見せた。

　「いや、かわいそうですよね。だから、さっきも言った通り、一番に考えなきゃなんないのは遺族なんですよ。これはもうね、はっきり言って基本なんですよ。（略）

　その人たちをまた悲しませる（露木長官の）発言みたいのは、これにはやっぱ頭きますよね。（略）

　そういう人たちのためにね、カッコつけるわけじゃないですけど、『ちゃんと働け』と。（略）

　やっぱり、何ですかね。普通のみんな、末端はそうですよ。我々刑事だって、皆さんの近くにいるお巡りさんだって、親身にやっているわけですよ。そうでしょう？」。

• 日時 2023年7月28日（金）13：00～14：00
• 場所 文藝春秋西館1階 文春ギャラリー（東京都千代田区）
• 主催 週刊文春 編集部（詳細）

（文字起こし56分頃から終わりまで）

記者16「今日はありがとうございます。日本テレビの堤と申します。短く一点だけなんですけど。

　今もお話がありました、Zさんに関してなんですが。恐らく、『疑わしい』と見ているのは、佐藤さんの個人的な見立てなのか、それとも当時の捜査本部の方で被疑者として浮上していたのか。その点を教えていただいてよろしいでしょうか？」。

佐藤氏「個人的ですね。調べ官だけしか、別に心の中は誰にも言っていないので。

　確証が持てれば言いますけど。それはもう俺の心の中だけでそう思っていただけで、その人が本当に犯人かどうかもわからないですよね。ただ、やっぱりほら、やっぱり調べ官だから、いろいろ考えるじゃないですか。

　それだけの話ですよね。だから何か決定的に、という話じゃないですよね。消去法みたいな」。

記者16「いわゆる他の捜査員の方に共有して、まあ、調べをしたりとか、そういったプロセスはなかったと」。

佐藤氏「ないです。あくまでも、任されてますから。

　ただそれを軽々しく言っちゃうと。もう確信が持てないまま言えないので、やっぱりそこはもう何ですかね、『自分流』でやっているような。だから個人の、あくまでも個人の、という話ですよね」。

記者16「分かりました。ありがとうございます」。

記者17「フリーランスの白坂と申します。今日は非常に興味深いお話、ありがとうございます。

　今出た、Zについての質問なんですけども。『週刊文春』では、最後の方にZが登場する展開になっているんですけれども。

　ただ、僕、個人的には、恐らく佐藤さんは途中から、Zに思い至ったんじゃないかなと予想しています。

で、どのようなタイミング、そして、どのようなやりとりで、そのZが佐藤さんの中に浮上してきたんでしょうか？」。

佐藤氏「いつごろ？ …だから、今言ったように、消去法ですよね。消去法でいくと、これじゃない。これじゃない。で、まあ、X子さんでもないかなと。そうすると、って話ですよね。

　だから、あんまり、Zは、あくまでも俺の想像なので。推理というか、見立てなので」。

記者17「今までだと、『X子さんが、実は犯人ではないかな』っていうような雰囲気できたと思うんですけど。でも、このタイミングで、やっぱりあったのかなと思うんですよね」。

佐藤氏「だから、あの、（X子さんの事情聴取は）10日間ぐらいしかやってないじゃないですか。10月の10日から、ほんの少しですよね。1ヶ月もないわけですから。実際やったのは。

　…2、3日目ぐらいかなあ？」。

記者17「比較的、最初の段階？」。

佐藤氏「うんうん、最初の。そりゃ、言わないですよ。自分の気持ちは。だから、『そこからどういうふうに発展するかな』って。それで、まあ、そういうふうに思った時には、もう捜査が終わるかな。ちょっと早すぎますからね、ええ」。

記者17「ちなみに今、佐藤さんは刑事は辞められているんですよね？」。

佐藤氏「ええ」。

記者17「立ち入ったことで申し訳ないんですけど、今回の事件とその辞められたことっていうのは、関連しているのでしょうか？」。

佐藤氏「いや、全然関連してないですね。

　だって、あの、一応退職して、2年間はお世話になって。それで、まあ、ちょっと、お袋が死んだんで、実家を売ったので、特にもうお金もね、普通に生活できるし、あとはもう、『市役所の仕事をちょっとやらせてもらえばいいかな』、みたいな感じです。ええ」。

記者17「はい、わかりました。ありがとうございます」。

記者18「どうもありがとうございます。フリーランスの藤田明子と申します。えー、証拠の件でおうかがいしたいんですが」。

佐藤氏「え？なんの件？」。

記者18「証拠の件ですね。あの、携帯電話が、えーと、種雄さんが、恐らくなんですけど、『3台持っていた』という話を聞いたんですが。

　『1台が行方不明になっている』という話もあるんですけれども、この携帯電話の証拠について、『2台は見つかったけど、１台は不明になっている』。

　この理由と、その携帯電話の、会話とかメールとかあったと思うんですけれども、そういったことは調べられたのかどうかっていうのを、知ってる範囲でお聞かせいただければと思います」。

佐藤氏「もうメールは、分析班がやっていると思うんですけども。

　だから特に、あの、その、種雄君とYさんだとか、種雄君とX子さんだとか、そういうようなメールは、やっぱり分析してますよね。ただ、そこにはこの事件に関する直接のつながるものはないですよね。

　ただ、やっぱり、あの、喧嘩をしている状況とか、あと、仲が悪くなった頃だとか、そういうのは推測できますけど。その犯人につながるような情報というのは、入ってなかったような気がします。

　だから、あまり重要視してなかったですね」。

記者18「1台なくなってると思うんですけど。それは遺族に返されたのか。もしかしたら、X子さんに返されたのか。それとも、警察の中に保管してるのか、いつの間にかなくなってしまったのか、どれだと思いますか？」。

佐藤氏「いや、わからないですね。あの、『1台なくなっている』と言ってますよね。あんまり、その記憶がないんですよ。ええ。申し訳ないですけども」。

記者18「ありがとうございます」。

記者19「日刊スポーツの澤田と申します。今日はどうもありがとうございました。あの、先日、被害者の遺族の方が涙ながらに会見されていますけども。

　佐藤さんは遺族の方と会われて、…最近会われたとか、会見を見て、こういうふうに感じたとか、っていうのがあれば、教えていただきたいです」。

佐藤氏「あの、遺族の方と一回も会ってないんですよ。やっぱり担当がいますから。さっき言った通りに、被害者担当みたいな。なので、あまり立ち入らないです、調べ官は。会ったことはないけども、会見は拝見させていただきました。はい」。

記者19「どういう風に感じられましたか？」。

佐藤氏「いや、かわいそうですよね。だから、さっきも言った通り、一番に考えなきゃなんないのは遺族なんですよ。これはもうね、はっきり言って基本なんですよ。

　だって皆さんだって子供さんがああいう状態だったら悲しいじゃないですか。非常に。誰でも。そういう人たちに一番接するのが、被害者対策班なんですよ。

　でも、ああいう遺族だったから良かったんですよ。だって、『警察には感謝してます』って言ってくれたじゃないですか。こんな終わり方をしても。普通だったら、『お前ら、何だ。この野郎、警察はちゃんとやれ！』みたいな人もいるわけですよ。

　うん、だけれども、ああやって言ってくれたから、非常にありがたいなと。それに、私、さっき言った通り、その人たちをまた悲しませる（露木長官の）発言みたいのは、これにはやっぱ頭きますよね。だって、そうじゃないですか。そう思いません？ 普通は。

　あのー、…何て言うんだろうな。

　『なんでそこまで遺族の気持ちを逆なでるの』、みたいな。『悲しみをもっと増大させちゃうの』、みたいな。そんな感じを受けませんか？ 受けますよね？ それと一緒ですよね。だから、やっぱり、『もうちょっと（遺族の気持ちを）思いやって言えばいいのにな』、というような感じ、個人的なあれですよ。

　うん。だから結局、あれですよ。そういう人たちのためにね、カッコつけるわけじゃないですけど、『ちゃんと働け』と。そういう人たちのためにね。

　やっぱり、何ですかね。普通のみんな、末端はそうですよ。我々刑事だって、皆さんの近くにいるお巡りさんだって、親身にやっているわけですよ。そうでしょう？

　そんなに、（相手を）選ばないですよ。誰だって『助けよう』という気持ちがあるんだから、そんなのは当たり前じゃないですか。だけど、それをね、逆なでるようなことを言ったりするのは、ちょっとやっぱり間違ってんな、というふうには思いますよね」。

週刊文春編集部「次の質問を、最後にさせていただいてよろしいですか？」。

記者20「フリーランスの鮫島と申します。先ほど、佐藤さんは実行犯がZであるという認識は、『自分の心の中に留めておいて、誰にも言っていない』、ということをおっしゃっていましたが、捜査本部全体としては、やはり全体の見立てとしては、『実行犯はX子さんである』という見立てが非常に強かったということなんでしょうか？」。

佐藤氏「だと思いますね」。

記者20「それであれば、この木原さんや二階幹事長は、捜査本部は、『X子さんが実行犯である』という見立てのもとに動いているという風に、木原さんや二階幹事長が認識していたら。

　特に、木原さんとは、佐藤さん、接触したことがあると思うんですけれども。木原さん自身は、X子さんが実行犯というふうに捜査本部は見立てて、捜査を進めていると認識しているという風に感じていましたか？」。

佐藤氏「木原さんがですか？…いや、どうでしょうね。そう思ってるんですかね？ それとも、あの、X子さんを信じているんですかね。やっていないと」。

記者20「逆に言うと、『X子さんが実行犯ではない』という見立てを持っている人は、佐藤さん以外にいなかったんでしょうか？」。

佐藤氏「いや、どうでしょうね。それは聞いたことないですね」。

記者20「これは捜査本部とか、同じそのチームの中で、そういうような認識を持っているな、と感じたことはない？」。

佐藤氏「多分、いなかったと思うんですね」。

記者20「ということは、やはり、政治家、関連した政治家たち、二階幹事長とか、いろいろな人に情報が行った。捜査が動いているという情報が行っていたとは思いますけれども、木原さんをはじめ、当事者たちの多くは、『X子さんが実行犯である』というもとに、みんな動いていたという風に考えますね、と思っていいでしょうか？」。

佐藤氏「いや、どうでしょうね。ちょっとわからないですよね。ただ、やはり、皆さんに逆に聞きますけど、誰だと思いますか。だって、みんな初めはX子さんだ、と思ってないですか？」。

記者20「文春の報道を見て、私も最初X子さんが…」。

佐藤氏「だから、それと一緒ですよね」。

記者20「つまり、最大のポイントとは、捜査の、事件の真相そのものもポイントなんですけれども、やはり木原さんが、この事件をどう考え、実際捜査に介入したのかどうか。

　そこが最大のポイントだとすると、木原さん自身が、『X子さんが狙われている』と、捜査の真犯人というか、実行犯と思われていると認識して動いていたのか。いやいや、真犯人は別にいるということを、木原さんはどう思ったのかは、非常に重要なポイントだと思うんですね。

　そういう意味では、さっき言った、『Zさんが実行犯だ』という認識が、単に佐藤さんの胸の内にとどまっていたのか。

　いやいや、捜査本部を初め、場合によっては、自民党をはじめ、政府権力側、政治家側にもそういう見立てが伝わっていたのか、というのは、結構この話の重要なポイントであって。

　その『Z実行犯説』が一体どの程度、当時、捜査官や関係者に広まっていたのかというのは、結構重要なポイントだと思うんですね。そこを確認したかったな、と」。

佐藤氏「広まってないですね。だって、心の中だけですから」。

記者20「なるほど。じゃあ、やはり関係者の多くは、あくまでも『X子さんが実行犯である』、と。少なくとも、そういう見立てのもとに捜査が動いているという、当時、認識をみんな持っていたと考えるのが自然である、ということですね」。

佐藤氏「自然でしょうね、やはり。ただ、心の中では他の人と思っていた人もいるかもしれないですよ。でも、それはあんまり口にしないんじゃないないですか」。

記者20「表向き、そういう動きがなかったという。多分、捜査報告書にそういう記載があったとか…」。

佐藤氏「いやいやいや」。

記者20「そういうのは一切なかった？」。

佐藤氏「ないですね」。

記者20「わかりました。ありがとうございました」。

週刊文春編集部「すいません。長時間に渡りまして、今日は本当にありがとうございました。

　追加の取材をご希望の方につきましては、配付した資料に記載の連絡先にご一報いただければというふうに思います。今日は本当にありがとうございました」。

（了）

　IWJでは、佐藤氏の記者会見を質疑の部分も含めて、全文文字起こしをしました。ぜひ、全編動画とともに御覧ください。

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし！（その２）「X子さんはちょっと違うんじゃないかと」「（捜査の）終わり方が異常だったんですよ」〜7.28 佐藤誠氏（元警視庁捜査一課刑事）記者会見 2023.7.28（08;39;02〜）
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=519

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし！（その3）「殺人事件で一番大事なのは遺族への対応」、それがなかったのは「異常な終わり方」〜7.28 佐藤誠氏（元警視庁捜査一課刑事）記者会見 2023.7.28（20;02;24〜）
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=1200

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし！（その4）読売新聞記者「『地方公務員法違反』に抵触することは、承知の上か？」〜7.28 佐藤誠氏（元警視庁捜査一課刑事）記者会見 2023.7.28（31;50;25〜）
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=1910

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし！（その5）かつての同僚からは「電話が1個も来ない」「『余計なことをあいつに言うな』っていう話じゃないですか」〜7.28 佐藤誠氏（元警視庁捜査一課刑事）記者会見 2023.7.28（45;11;05）
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=2710

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし！（その6）遺族への思いやりに欠ける露木長官の発言に「頭きますよね」「ちゃんと働け」〜7.28 佐藤誠氏（元警視庁捜査一課刑事）記者会見 2023.7.28（56;04;17）
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=3364