(前編から続く)
参院広島選挙区の再選挙が4月25日に投開票され、実質的な野党統一候補の宮口治子氏(立民・国民・社民推薦)が自民党公認の西田英範氏(公明推薦)を破って初当選した。
(前編)でお伝えしたように、この広島再選挙の注目ポイントは、西田候補の選挙に、河井克行元法相と河井案里元参議院議員の河井夫妻から、カネをもらった被買収者(地方議員や首長ら)が関わるのか否かであった。
一時は自ら立候補を検討した郷原信郎弁護士は、被買収者に選挙に関わらせないようにする具体的措置を明らかにすることを求める質問状を、自民党広島県連と西田氏に送っていた。しかし期限の3月8日までに回答が届かなかったことから郷原氏は「公正が期待できない選挙に自らプレーヤーとして加わることはできない」と不出馬を表明した。
選挙戦を取材し本稿を執筆した横田一氏は、岸田文雄・県連会長と西田英範候補に、「お金をもらった人は選挙に関わらないのか?」と、繰り返し質問したが、いずれも明確な回答はなかった。
一方、宮口治子候補は横田氏の質問に、カネをもらった被買収議員は「説明責任を果たしていただきたい」と、再選挙に関わるのか否かをきちんと説明すべきだと答えた。
また、被買収議員らを公選法違反で広島地検に刑事告発している市民団体、「河井疑惑をただす会」の山根岩男事務局長は、「カネをもらった議員らも起訴されるべき」と訴えていた。
もう一つの争点「コロナ禍での五輪開催に対する考え」で、宮口候補者は、十分なコロナ対応強化がなされない限り、五輪開催反対の丸山達也・島根県知事と同じ問題意識であることを明言していた。
この(後編)では、宮口候補の応援演説で、郷原弁護士が語った、事件当事者の自民党が候補者を立てるとは「広島県民をなめるのもいい加減にしろ」という激しい怒りの声と、郷原弁護士が語った宮口候補を応援する理由をお伝えする。
また、横田一氏は、岸田文雄・県連会長に改めて「(被買収者は)選挙に関わらないか?」と繰り返し聞いたが、岸田会長は無言で立ち去った。この質疑応答の詳細についてもお伝えする。
西田候補の選挙に、自民党は従来通りの徹底した企業団体選挙で臨んだ。4月4日に尾道の街頭演説会で平井卓也デジタル担当大臣が登壇。選挙戦最終日には小泉進次郎環境大臣がリモートで西田候補と意見交換し、丸山珠代・五輪担当大臣、茂木敏充外務大臣は応援のために現地入りした。しかし民意は宮口候補を当選させ、政権交代の現実的可能性を印象づける画期的な機会となった。
この「広島モデル」が、次期総選挙までに、どれだけ全国に広がっていくのか、大きな注目が集まる。