2020年10月22日、東京千代田区内幸町の臨時会見場で東京電力による定例会見が行われた。
東京電力は、2022年秋にも福島第一原子力発電所から出た汚染水をALPS(多核種除去装置)で処理した処理済汚染水が137万トンの貯留限度を迎えるとしている。
これに対して、経産省は今年2月「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」の結論を受け、海洋放出および大気放出の案を国に答申した。
国の廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議は、海洋放出の方針決定を表明すると見られている。
東京電力は処理済汚染水が貯留限度を迎える根拠として、廃炉作業に必要な土地を確保するため、福島第一原子力発電所敷地内では、これ以上貯留タンクを増設する余地がない、としているが、敷地内にはまだ、使用目的がはっきりしない土地がいくつか存在している。
会見で「口頭ではなく現時点で分かっている福島第一原発敷地内の配置計画について資料・図面で示してほしい」と問われたのに対し、東電は「廃炉計画の進捗に応じて示せるとは思うが、現時点ではっきり示せるものはない」と答えた。
この記者は重ねて「定例会見や多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会などで、口頭で話している根拠となるものを書面、図面で示してほしい」「2017年時点では出していたので、2020年時点を示してほしい」と要求した。
さらに「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会でも5名の委員が納得していなかったが、本当にタンクの置き場所がないのか、配置計画のはっきりしたものが出てこないので(処理済汚染水の)環境放出ありきなのではないのか?」との批判があったことも指摘された。
また、今年1月の会見では「東京電力はメディアを使ってタンクを作る余地はないと宣伝してきたが、まだタンクを作る余地があるか?」との質問に対し、東電は「余地はある」と答えていた。
さらに「メディアを使って、貯留タンクを作る余地はないと地元にプレッシャーを与え続けてきたことは、やめた方がよい」と指摘されたことに対して、東電は「気を付けなければならない」と回答している。
東電自身が会見で認めているように、貯留タンク増設の余地を残したまま、処理済汚染水の海洋放出ありきで突き進んできたのは明らかだろう。