川内原発避難計画のあらゆる問題点が噴出、FoE Japanが調査結果を報告 2014.8.12

記事公開日:2014.8.13取材地: テキスト動画
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(IWJ・薊一郎)

 九州電力川内原発の避難計画をめぐり、国際環境NGO FoE Japanが2014年6~7月に実施した調査の報告会が8月12日、東京・表参道の地球環境パートナーシッププラザにて開かれた。

 報告会では、鹿児島県内の川内原発周辺地域を対象とした聞き取り調査を元に、FoE Japanの満田夏花氏が川内原発避難計画の問題点について報告を行った。

 日本から原発輸出が計画されているトルコ・シノップ市を視察した同団体の吉田明子氏は、原発輸出の最新情報を報告した。

■ハイライト

  • 川内原発をめぐる最新情勢/川内原発審査書案のパブコメのポイント/川内原発における避難問題/ディスカッション
  • トルコ・シノップ原発の最新情報

「要援護者は最優先避難対応を」

 報告会では、まず8月15日が期限の川内原発審査書案へのパブリックコメントの提出を呼びかけた。特に、原子力防災・避難計画が審査対象外であること、火山影響評価が不十分な点が、パブコメ記入ポイントだと説明した。

 川内原発避難計画の問題点については、30km圏外に避難すれば安全だとしている点、風下へ避難する可能性が高いこと、避難先が現実的でない点などを指摘した。

 さらに、地震と大雨などの複合災害を想定していないことや、避難所での一人当たりのスペースがわずか2平方メートルと想定されているなど、避難不可能な避難所を計画していたり、避難時間を最長28時間と見積もっているものの、どの地域を想定しているのかが非公開であるなど、あらゆる問題点を指摘した。

 加えて、避難先の受け入れ体制についても、受け入れ地域自体が避難対象となる可能性が考慮されていないことや、スクリーニング・除染場所も未設定であることも大きな問題であるとした。

 今回の報告で最も強調したい点として、満田氏は、要援護者の避難計画を挙げた。

 国の原子力対策指針によれば、要援護者は優先的に避難できるような対応がとられるべきだが、鹿児島県の避難計画では、入所者・入院者は、各施設が作成した避難計画に基づいて避難し、通所者・通院者は、自宅に帰すという内容になっている。さらに、この避難計画は、川内原発から10km圏内の施設でしか立てることができないという。

 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、10km圏外の施設の計画は「非現実的」だとの考えを示し、原子力規制庁もそれを追認する方針だ。福島原発事故では、20km圏で避難指示が出て、バスによる長時間移動の中で死亡した例や、避難所から追い出されるなどの事例があったにもかかわらず、川内原発避難計画には、これらの教訓がほとんど反映されていない。満田氏は、「計画策定が非現実的ならば、再稼働しないと判断するべきだろう」と訴えた。

「地元同意の範囲を広げよう」

 川内原発は今後、「地元の同意」を経て再稼働されるとみられているが、何を根拠として「地元の同意」とするかは法定根拠がないという。現在は、鹿児島県とさつま川内市の議会と首長の同意をもって、「地元の同意」だとされているが、「立地自治体と県では、明らかに不足だ」と満田氏は主張した。

 直近の南日本新聞による世論調査でも、鹿児島県民の59%が再稼働に反対という結果となっている。

 「議会と住民との意思の食い違いが、国政レベルも含めて日本全国に見られる」と満田氏は指摘した上で、川内原発も含め、「地元同意の範囲を広げようという運動を、全国各地で起こしませんか」と、今後の活動を提案した。

 最後に、8月21日に行われる原発の避難問題に関する政府交渉、および8月24日の鹿児島市での集いへの参加を呼びかけ、報告を締めくくった。

「トルコの脱原発首長ネットワーク組成に協力したい」

(…会員ページにつづく)

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