「アジア諸国と連携しTPP交渉を行き詰まらせるのも手だ」 ~TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会 記者会見 2013.8.20

記事公開日:2013.8.20取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

特集 TPP問題

 2013年8月20日(火)10時30分から、東京都千代田区の参議院議員会館で「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会 記者会見」が開かれた。主たる内容は、同会が衆参両院の農林水産委員会委員長と安倍晋三首相に提出した要望書に関する報告。両委員長への要望書提出は直接の手渡しだったため、森山裕氏(衆院)と野村哲郎氏(参院)が、本音の部分で「TPP交渉」をどう見ているかを探ることに成功している。

■全編動画

  • 出席者
     大西広氏(慶應義塾大学教授/理論経済学)
     楜沢能生氏(早稲田大学教授/法社会学・農業法学)
     鈴木宣弘氏(東京大学教授/農業経済学)
     醍醐聰氏(東京大学名誉教授/財務会計論)
  • 日時 2013年8月20日(火)10:30~
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)

 会見に臨んだのは大西広氏(慶應義塾大教授)、楜沢能生氏(早稲田大教授)、鈴木宣弘氏(東京大教授)、醍醐聰氏(東京大名誉教授)の4人。まず大西氏が、衆参両院の農林水産委員会委員長には8月19日に、安倍首相にはこの記者会見当日の会見前に、それぞれ要望書を提出したと伝えた。

 安倍首相宛の要望書の中身については醍醐氏が説明。「日本は、この7月にマレーシアで開催された第18回参加交渉会合の中途から、TPP交渉に加わったが、これまでに得られた情報から状況を分析し、政府に対する申し入れを行っている」とし、「日本政府がこのままTPP交渉に参加し続ければ、内外の多国籍企業に、日本の国民益を渡してしまう結果にしかならないだろうとの、私たちの判断がベースだ」と語った。

 要望書では、日本郵政とアメリカンファミリー生命保険(アフラック)の提携が問題視されている、とも述べ、「全国の郵便局約20000カ所と、かんぽ生命の直営店80カ所が、アフラックのがん保険の販売を引き受けるわけだが、これは日本郵政がアフラックの下請けになることを意味しており、実に屈辱的だ。進行中のTPP交渉や、それと並行して行われる日米2国間交渉の結末を暗示している」とした。

 さらに醍醐氏は、知的財産権の分野で、米国が医薬品の特許期間の延長を要求していることにも触れ、「先発薬の特許期間を伸ばすと、安価な後発薬の普及率を現在の21%から、2017年を目処に60%以上にまで引き上げるという、厚労省が掲げる目標の実現が難しくなり、日本の医療財政の建て直しの障害となる」といった主張が、要望書でなされていると伝えた。

 また、農産物を巡っては「『まだまだ交渉の余地がある』といった楽観論が流布されているが、米国通商代表のフロマン氏は、米国での公聴会で『日本の農産品で、穀物や肉類などの重要5品目を例外扱いすることに、同意した覚えはない』と明言している」と指摘。要望書には「交渉参加国の中には、重要5品目の自給率が100パーセントを優に超える国がひしめいている。こうした国を相手に、日本が重要5品目の聖域を守るのは至難の業だ」との記述もあるとした。

 その上で醍醐氏は、要望書は安倍首相に対し、「日本はTPP交渉に参加し続けても得るものはほとんどないのに、失うものは極めて大きくなる。交渉から脱退することこそ、日本の国民益を守る最善の道だ、と要請している」と強調した。

 衆参両院の農林水産委員と面会した折の様子については、「『アジア諸国も(米国から)ゴリ押しされているのであれば、日本は彼らと連携して、TPP交渉を行き詰まらせるのも手ではないか』などとぶつけてみた」と報告。「参院の野村氏は、『交渉が暗礁に乗り上げて、行き詰まってしまうのがベストだと考えている』と答えた」という。

 面会の様子に関しては、大西氏が「(衆院の)森山委員長は『米国政府は政治献金の多さという点で、保険と医薬品が大事なのだろう』と述べていた」と補足を加え、次のような見方を示した。「森山氏には『農業は大丈夫』との目算があるのだろうが、いささか甘いのではないか」。

 「TPPを推進している人たちには、国益を重視する意識が最初から欠落している」とのひと言で、政府批判を始めたのは鈴木氏。自身が入手した、TPP推進派の本音発言をいくつか紹介した上で、「強いて言えば、農林水産省の人たちは別だが」としながら、「対米従属に根ざした、目先の保身を図り、日本など売り渡してもいいという価値観の人たちが、TPPを推進している」と憤った。そして、TPP関連情報を隠す政府の体質を、「ことあるごとにTPPの秘匿性を楯にして情報を出さないが、彼らには、もともと公開する気などない」と断じた。そして、「アフラックという、米国の1民間企業の私利私欲のために、日本の公益の象徴である郵便局の窓口が差し出されてしまった。日本国民は、なぜ怒らないのか」と不満をあらわにした。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です