「TPPによる農業生産額の減少は都市部にも甚大な影響を与える」 東京都1兆907億円、神奈川県2972億円、大阪府3729億円の損失 ~大学教員の会が第3次影響試算を発表 2013.7.17

記事公開日:2013.7.17 テキスト
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(文字起こし・@sekilalazowie, @KinocoMX)

特集 TPP問題

※全文文字起こしを掲載しました(2013年7月30日)

 全国約900名の大学教員が賛同人として名を連ねる「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」が、7月17日、都道府県別のより詳細な影響試算を発表した。試算によると、TPPの関税撤廃による農業生産の減少が加工・運搬など関連産業に及ぼす影響は、11兆6918億円の減少、全国の所得が1兆7692億円減少とする結果となった。

 試算にあたった土井英二氏(静岡大名誉教授)が、農業生産額の減少と、それがもたらす雇用者所得減少や家計消費減少を最終段階まで算定した結果を発表。また1都道府県だけでなく、経済取引を通じた他の都道府県へ与える影響、他県などからの影響など「跳ね返り効果」も計測した。

 試算では、例えば北海道の農林水産物等(※)の減少額は5241億円で、それに第二次・第三次産業への影響、他都県の生産減少の影響などを加えると、全産業への影響は1兆4390億円となる。東京都に至っては農林水産物等の減少額31億円に対し、全産業への影響は1兆907億円と、生産減少倍率は349.2倍となる。神奈川県も自県の生産減少額は173億円だが、他県の生産減少の影響で関連産業が2972億円減少(17.2倍)、大阪府も自県は93億円減少だが、他県の影響で関連産業3729億円減少(40.1倍)。農業生産減少は地域産業に平均3.7倍の影響を及ぼす。

(※)農林水産物等とは、食料加工品や林業・漁業などを加えたもの

 また関税撤廃の所得への影響試算をみると、農家や企業、従業員の家計の所得は総額で、4兆2627億円減少する。政府がTPPのメリットとして強調する、物価低下による家計の負担軽減2兆4935億円を差し引いても、1兆7692億円となる。

 自県の生産減少額の少ない東京都や神奈川県、大阪府などの「都市部」が、特に他県での減少の影響が大きくなったことについて土井名誉教授は「都市部は加工食品や肥料、農薬、運搬など関連産業が多いため、影響額が膨らんだ」と語り、「この点からも『TPP=地方の問題』というのは誤りで、むしろ『都市部』にも深刻な影響を及ぼす」と警鐘を鳴らした。

■全編動画

  • 出席者
    醍醐聰氏(東京大学名誉教授 財務会計論専攻)
    土居英二氏(静岡大学名誉教授 経済統計学専攻)
    三好ゆう氏(桜美林大学専任講師 財政学専攻)
  • 内容
    産業連関表を用いた都道府県ごとの企業所得、家計所得・消費等への影響試算(完成版)/発表者:土居英二氏
    農業経営統計を用いた畑作農家の所得への影響試算~営農規模別にみた全国レベルと北海道への影響の試算~/発表者:三好ゆう氏
    農業経営統計を用いた畜産農家の所得への影響試算~営農規模別に見た全国レベルと北海道への影響の試算~/発表者:醍醐聰氏
    農業経営統計を用いた稲作農家の所得への影響試算~営農規模別にみた北陸地方の農家への影響の試算~/発表者:醍醐聰氏

―― 以下、全文書き起こし ――

醍醐聰氏「ちょっと開会時刻をすぎてしまいましたけれども、今から、TPP影響試算大学教員作業チームの第三回目の試算結果の発表の記者会見を始めさせて頂きたいと思います。今日はちょっとバタバタしてしまいまして、準備が行き届かなくて、失礼をしておりますが、よろしくお願いいたします。

 それでは、今日、出席しておりますのは、私、醍醐と申します。次が、静岡大学名誉教授で経済統計学専攻の土居英二さん」

土居「土居です。よろしくお願いいたします」

醍醐「それから一番あちらが、桜美林大学の専任講師で財政学、地方財政学専攻の三好ゆうさんです。もう一人のメンバー、関耕平さんがいるわけですが、彼もこの間、第二次から第三次にかけての作業にはおおいに協力をしてくれて、分担してもらったんですが、今日はちょっと大学の現役ということで、公務で今日は残念ながら出席はできておりませんが、彼の担当してくれたところ、三好さんと共通の点がありますので、三好さんにまとめて発表してもらいたいと思います。それでは、座らせて頂きます。

 それでは、今日は第三次ということになるわけですけれども、プレスリリースでお知らせしましたことにほぼ沿っているわけですけれども、作業の途上で、いくつか資料上の制約とか、私たちの時間不足等もございまして、一部残念ながら省略したところも出てまいりましたことは、後ほどご説明をいたします。

 それから、資料がかなり今回、錯綜しております。第二次から第三次までが10日あまりということで、非常に短期間のかなりきつい作業をやったものですから、実は今朝方ぎりぎりまで、私なんかはやっておりまして、ちょっと遅れてしまったんですが、資料につきましては、それぞれ発表者が自分の資料について発表の前に、改めて確認をいたしますので、もしお手元になければ、入り口のところで受け取って頂けたら、と思います。

 それでは、最初に産業連環表を用いたマクロの影響試算ということで、前回につづきまして、土居英二さんが、都道府県単位にまで具体化した、そういう所得、あるいは消費、雇用への影響につきまして、プレゼンテーションをやってもらいたいと思います。それでは土居さん、よろしくお願いします」

●産業連関表を用いた都道府県別試算の結果の総括表(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
TPP 第3回記者発表資料(土居英二@静岡大学).PDF

土居「はい。みなさま、こんにちは。お忙しいところご参集いただきまして、ありがとうございます。

 私の方からは、産業連関表を用いたTPPの都道府県別影響試算。前回、第二回7月5日の時に、一部報告ということで報告させて頂きましたが、今回、全都道府県、47都道府県の計算が終わりましたので、みなさんの前にご披露したいと思っております。

 この都道府県別の影響はどうなのかということは、みなさんご承知のとおり、国会でも質問が出ました。安倍総理は、技術的に難しいと。それから甘利TPP担当大臣は、都道府県別の影響試算というのは、いたずらに国民に不安を煽るような形になりうるので、いかがなものかということで、政府のほうは非常に身近なTPPに関して、どんな影響が出てくるのかということの情報、豊富な情報を、これはメリット、デメリット両方ですね。それについての詳しい情報が開示されないまま、交渉参加に向けて、ここ一両日、非常にTPPに関する新聞記事。あるいはテレビ報道が増えてまいりました。

 その、いかがなものかという都道府県別の試算につきまして、一応、計算結果を発表させて頂きます。この概要のところ。一枚目の概要ですね。これ『3の1』と下に書いてございますが、『2の1』の間違いです。

 それと、さきほど醍醐先生からもございましたが、今回、日本の輸入関税の撤廃ということに限定してメリット、デメリットを計算しております。もう一つのメリットは輸出の増加でございます。しかし、これは対米事前交渉の過程で、かなり譲歩と言いますか、アメリカの、例えば自動車の2.5の関税というのは10年先からスタート、検討すると。

 それもアメリカの企業に、産業界に非常に大きな影響が出てくれば、ストップされるというふうなことですので、早ければ10年、遅ければ20年先ということでございますので、これはちょっと、一応今回の試算からは棚上げして、輸入品が輸入関税撤廃によって、安い輸入品がたくさん出回ることで、家計が助かるじゃないかというところがいったいどのぐらいなのかという計算をしております。

 それからもう一つ、やはり安い農産物をはじめとする輸入品が入ることによって、日本の農林水産業が大きな打撃を受けます。第二回の時に申し上げましたように、あるいは第一回の時にも申し上げましたが、このTPPイコール農林水産業というふうに刷り込みと言いますか、先入観を私どもも最初は持っていたわけですが、実はいろいろ分析している中で、実は農林水産業だけではなくて、第二次、第三次産業に非常に大きな、2倍から4倍の影響を与えうる問題があるということを強調させて頂きました。

 今回、資料上の制約で、就業者数の減少というところを計算完了するまでに至りませんでした。これは、公表してない都道府県もございまして、電話で都道府県に、統計課のほうに産業連関表の付表の、雇用補用就業者数の増減を計算する雇用統計というのを提供して頂きたいということで、申請書を書いたりして、出して頂いたところ、ご協力を頂いたところもありますが、もともと、私どもは108の業種の売り買い、縦横の碁盤のマス目のような、108部門という産業連関を使っておりますが、雇用表は34部門という大雑把なものしか発表してない。作成してないというようなところがあったり、もともと作ってなかったりというようなところがありまして、これは全部揃えるわけにはいきませんでした。しかし、何らかの方法で、またいずれかの機会に、この就業者数のところを取り上げたいと思っております。

 それから、もう一つ、これは計算をしてて、最近、気がついたんですが、私がこれまでマクロの産業連関表を通じた計算を、試算結果を発表しておりましたが、大事な問題を忘れておりました。

 それは、農業、林業、あるいは水産業、そして、小麦粉とか乳製品等の食品製造業。そこの設備投資を含めるのを、意見交換、出発点に加えるのを見落としておりました。農業の生産が例えば3分の1生産量で3分の1。生産額で48%の減少ということになりますと、少なくとも農機具、耕運機とかトラクター、場合によっては軽トラックだとか、そういうものも3分の1以上に生産が減ると。

 ですから、製造業の耕運機等の生産が減るというところの影響を、これが試算から漏れておりました。

 これがどれぐらいになるかというのを調べてみましたら、該当の農林水産業として区分せず、合わせまして約1兆円ですね。ごめんなさい。農林水産業で1兆円。そして、食品製造で1兆円、合計で約2兆円の投資が毎年行われております。農機具、トラクター、ビニールハウス等々ですね。それの波及、2兆円の波及となりますと、おそらく4、5、6兆円以上になると思いますが、それの試算は含めておりません。そのことを予め、お話させて頂きます。

 特徴としまして、北海道あるいは鹿児島等は、それぞれ農林水産物がこれだけ減れば、他の産業にどれだけ波及がいくかという波及効果も合わせて計算している道県がございます。しかし、その計算はあくまで北海道の内部の効果を表す産業連関表を用いて、域内産業連関表というんですが、単独の県内の産業連関表を用いて計算をされておりますけれども、実は、例えば、農作業とかに必要な肥料とかは、決して北海道の道内、あるいは鹿児島県内だけで調達できるものではなくて、それらを製造する工場は、全国に散らばっているわけですね。

 そういうふうな全国に波及が行く。農産物が減ると、そういう肥料とかさまざまな原材料等が全国に波及する。そしてまた、全国のそういう農林水産業、食品製造業が生産が減れば、自分のところに跳ね返ってくると。

 それがどれぐらいかというのを計算するために、そこに図を書いております108部門と108部門業種と書いておりますけども、それを縦横に合計4倍にして、例えば、ここへ東京都だったら、108業種ごとに、東京都の中で使われる中間費用というのは原材料です。原材料がどれぐらい使われているか。そして、他の46道府県にどれだけ売り上げているか。そして、最終消費。消費とか投資なんですが、それが東京都が作ったものが東京都の中に、横を読めば、どこで使われているかという算出の構造が分かります。

 それから、縦に読めば、東京都は自分のところで生産するわけなんですけれども、縦は費用構造。費用構成を表しておりまして、東京都の108業種の中から、それだけの原材料を買うか。そして、全国からどれだけの原材料を買うかということが、連結産業連関表というものを、今回新たに作成しまして、47の、本当言えば、これ全部、47×47のマトリックス、でかいマトリックスを作ったらいいんですけども、とても時間がありませんでしたので、東京都とその他46道府県というふうに、1県対全国というのを46種類作りました。

 産業連関表は必ずしも108部門で揃っているわけではありませんで、総務省統計局は、そこは十分に108部門ということが標準で提示してありますが、各県によっては生産されてないもの。あるいは小さいところは統合というようなことで、統合とか分割とか、非常に、47都道府県の半数以上が108部門ではありません。

 ですから、これを製表して同じ部門に揃えていくというのをお願いします。お願いしますというのは、私の同僚ですね。TPPに私は賛成ですが、手伝いますと言って、手伝ってくれた同僚がおりまして。すいません、ということです。

 また、連結産業連関表の理論モデルは、私といつも共同研究をしてまいりました同僚の浅利一郎。現在、副学長をやっておりますが、この理論的な整合性、そして、統計的な整合性が取れているかどうか。ミスがないかどうか、それらを全部チェックしてくれました。お二人の同僚を加えて、支えられて、今日発表する運びになりました。

 試算の前提のところですね。2枚目ですね。農林水産物等の減少額というのは基本的には内閣府の政府統一試算をベースにしております。独自試算を公表している道県の数字というのは、地元の事情に詳しい担当機関。道庁あるいは県庁の数字として優先的にそちらのほうを用いました。

 独自推計を行なっていない都府県がかなりあります。半分近くありまして、それらは今日はじめて影響が出てくる都府県だろうと思いますが、それをやりました。そしてまた、農産物だけやってるよとか、おコメだけやってるよというふうな場合は、残りは私の独自推計で最初の初発の波及とかの農林水産物等の検証を行ないました。

 そのベースにしましたのは、農林水産省の農業所得統計、品目別、都道府県別の生産額が記入してありますが、その平成23年という一番直近の数字をベースにしておりますので、これが産業連環のさきほどのシステムにインプットされますと、出てくる答えは23年の数字で出てきてます。

 産業連関のシステムは、平成17年表というのがいま最新で、いま23年表というのは総務省はじめ、作っておりますが、まだ公表されてませんので、17年表が一番新しい。17年表は生数字を使ってるんじゃなくて、そこの比率ですね。比率とかを用いていますので、計算のシステムそのものは、産業連関のその比率のシステム体系の中で動いてますけども、インプットするデータとアウトプットされたデータって、いま23年の数字というふうにご理解いただきたいと思っております。

 それから、3番目。試算前提のカッコ3ですね。生乳については、政府統一試算では一部プレミアム乳を除いて、日本の牛乳は、全量北海道産に置き換わるというふうに想定されています。ですから、他の都道府県は全部牛乳を作ってる酪農家のところというのは、全部生産停止というふうに試算されておられますけども、北海道のほうも、牛乳は、それじゃあ全部北海道で引き受けますという計算にはなっておりません。

 したがって、北海道は引き受けない。他が減る分を増やさないという意味では、北海道も減るという計算になってますので、そこは二重計算に。つまり、数字がやや膨らんでおります。その金額はどれぐらいかと言いますと、ちょっと政府の3月15日の統一試算の資料では判然としないんですけども、全乳製品のところから、バターとかチーズとか引きまして、だいたい1千億から1千500億の規模、最大マックスで。1千億ぐらいの市場じゃないかなと思います。牛乳の市場ですね。

 その分だけ、つまり最初のインプットのデータが多めに、マイナス分が多めに、二重計算で出てますので、アウトプットがだいたい3.7倍。3千700億。約3千億から4千億ぐらいアウトプットのデータ、生産減少額が多めに出ているかと思います。その点、お断りしておきます。

 3番目の資料のところ、かなり、もう申し上げましたので、これにつきましては省略をさせて頂きます。計算結果のポイントと解説というのは、パワーポイントおよび口頭で説明と書いてありますが、口頭で説明させて頂きます。

 3枚目、計算結果です。字が非常に小さくて読みにくいんですが、ポイントだけ、読み方だけ申し上げます。一番左は北海道から始まり、まして沖縄県までの都道府県までの名称。その次の欄は、白丸をつけておるところは、独自試算をやりましたというところです。県庁あるいは道庁で。

 黒丸はやってなくて、私が独自に、平成22年の数字、農業生産所得統計で試算した金額で。この推計の方法は政府の2兆9千億。あるいは700億と言われている、あの3兆円近い政府統一試算の前提を都道府県別、品目別の生産額で按分して、都道府県別に機械的に按分しました。それがこの結果で、独自のやり方でということになります。

 それから、三角のところというのは、JA等が試算されているところということです。例えば、北海道、白丸プラス黒丸と書いてるのは、金額によって含めてない品目があるということもあります。新潟のおコメだけです。長野は、長野県庁と同時に、三角。これはJA長野と東大の鈴木先生が計算された両方の数字があります。これ鈴木先生、1千29億円というのは鈴木先生の前提を用いさせて頂きました。

それと、広島県では、JA広島が推計されておりますが、ほぼ数字が似通っておりましたので、私の数字を使わせて頂きました。もしかして、これは非常に、見逃してはいけないと思って丁寧に時間をかけて探した結果なんですが、もしかして、ミスがあるかもしれません。その点をちょっとお知りいただければありがたいです。

 それで、最初の左3分の1ですね。これは、農林水産物等の減少額。経済波及受け皿効果の起点ということで、産業別にどういうものかというのを分類仕分けしてございます。政府統一試算のものをこの産業連関表の分類にしたがって、仕分けしますと、2兆9千700億。約3兆円の減少と言われている金額ですね。それに対して、都道府県の独自試算を優先して、そうでないところは、私が機械的に、この2兆9千700億を按分したという2つの数字の出どころの合体したものの合計が3兆1千232億ですね。

 この中には北海道の生乳のところの全国のやつを引き受けますよというところは含まれておりません。北海道5241億円の減少ということでございます。おそらく引き受けるということになりましたら、さきほど私が申し上げました約1千億円ぐらいの市場が北海道に生まれますので、この食料加工品2兆6千087億円の中から差し引くということになろうかと思います。

 これが、産業連関の中にインプットした数字でございます。アウトプットしました数字が真ん中のちょうど中段に囲んだところがそうです。合計で11兆6千918億円。これは第一回のこの作業チームの発表で10兆5千393億円というふうに申し上げました。

 それと比べて少し増えてることがございます。約1兆円ぐらいは増えている。どうして増えているのかというと、さきほどの北海道の生乳の波及効果、これ倍率で言いますと、北海道で2.7倍。そして全国で3.7倍ということですから、約1千億が、3千億4千億近く、生乳のところが膨らんでいるということが一つ原因でございます。

 それからもう一つは、使った産業連関表がちょっと違うんですね。前回は、47の都道府県の産業連関表の形式を同一に揃えましたもんですから、108部門の計算しましたが、前回は190部門という非常に細かくやりました。

 部門を細かくやればやるほど波及効果は精密に出て、よその部門を巻き込むということの弊害が少なくなります。ですから今回190から108にちょっと部門を荒くした関係で、少し関係ない部門が巻き込まれると。その分が少し膨らんできたかなということがあります。

 全体でみますと、生産波及倍率、合計値のさきほどの11兆6900億の横で、3.7倍です。3.7倍ということは要するに、農林水産物と言われている3兆円の3.7倍ですから、この11兆いくらから、3兆1千億を引けばいいわけなんですけども、これは、要するに農林水産物以外のところ2.7倍。約3倍近くの、それ以外の産業への波及も広がっているということです。

 その第一次、第二次、第三次という産業別に改めて仕分けしましたところ、食品加工業は第二次産業ですから、農林水産業が2兆5千億。第二次産業が3兆8千億。第三次産業が5兆2千億ですから、TPPの問題というのは、決して農業、あるいは農林水産業だけの話ではないということが分かったと思います。

 常識的に考えても、農村部でおコメを作る農家が3分の1あるいは半分になったというときには、それだけの農村の所得が減るわけですから、地元の商店街やスーパーなども売上が落ちて、影響を被るということが常識的に考えてもお分かりかと思います。

 そして、この11兆を、左側を見て、合計Bの左側を見て頂きますと、自県の生産現象による影響は6兆7千億。そして他県の生産現象による影響を外から受けるのが5兆円となってますね。これが普通の産業連関分析では捉えられない。今回、連結させたメリットといえばメリットに当たります。一番外からの影響を受けるのは東京都ですね。

 東京都、前回、私は数字をきちんとしませんでしたけども、55億円というのが東京都の農林水産物の減少額なんですが。ごめんなさい。31億円ですね。

 それに対して、東京都は、全国から1兆円の注文が減ると言いますか、マイナスの影響効果がある。なぜか。これは全国の農林水産物の生産減少とその関連産業。そして、農家の肥料とかいう原材料だけじゃなくて、そういう農村の所得が減る。農家の所得が全国的に減れば、消費も落ち込むと。全国の消費が落ち込む。その消費の落ち込み具合はそれぐらいかというのは、後で申し上げますが、その消費が落ち込んだ跳ね返りというのは大都市に集中します。

 産業集積が非常に分厚い、そしてまた肥料とかさまざまな原材料も、その製造業と、あるいは製造業を監督する中枢昨日を持った東京都に影響が非常に甚大に及んでくるということでございます。

 前回、東京のところをちょっと中間的に発表しましたけども、やはりきちんとやり直してみると、これだけの影響が及ぶんだなと。大阪もすごい大きな影響。つまり、大都市部ほど外からの、他県全国からの影響、農村部からの影響。だから、TPPは決して農村の問題じゃなくて、都市の問題でもあるということもとても明確に示してるかなと思います。

 それから、先ほど申しました生産の11兆6千億も減りますので、生産の減少による家計の消費も3兆4千億マイナスになります。また、その一番右側ですね。一番右側3分の1のところ。所得ベースで見た関税撤廃の影響プラスマイナス。メリットデメリットですね。

 このメリットデメリットを比べるのに、売上高で浮かべるのか、なんで比べるのかというと、所得ベースに置き直して比べるというのが一番フェアなやり方かと思って、そうしました。

 県内総生産の減少額、いわゆる県の中のGDPのFの欄が約5兆9千億。約6兆円、減ります。そのうち、これ減価償却等含んでおりますので、それらをさっぴいて、事業所得。例えば、農家の所得であるとか、商店街の経営されている自営業者の方の所得。企業の所得も入っております。

 そして、家計消費の所得の減少。企業と家計の所得の減少は、約4兆2千億。そして、その中でも家計の減少は2兆9千億。それに対して、物価低下による実質家計所得の増加。所得が変わらないとして、物価は安くなりますと、その安くなった分だけ、家計が助かるわけです。この助かる家計の分を全国でマクロで計算しますと、2兆4千900億。約2兆5千億ですね。

 このGとIを、Gは生産者余剰および消費者余剰の減少、Iは消費者余剰の増加ということで、所得ベースでプラマイを見てみますと、1兆8千億ぐらいの減少だと。特にやはりこれは農村部で大きく減少し、都市部あるいは一部の県で増加。

 増加の県で大きいところは4県ぐらいですね。そういうところがちょっとありますし、これは狭い意味で取って、雇用所得の減少だけのHとIだけを見ても、これは5千億ほどプラマイがマイナスになるということがございます。

 だから、輸入関税の撤廃というのは、消費者家計にとってはプラスじゃないか、という面ももちろんございます。しかし、それを上回るデメリットも家計に及ぶということをこの数字が示しているかと思います。

 あと、詳しいことはあとでみなさんのご質問を通じてお伺いしたいと思います。私の発表は以上です。どうもありがとうございました」

醍醐「それでは、このあとは、農業経営統計を使いました土居さんがマクロの産業連関分析だといたしますと、私と三好さんがミクロ的な農業経営統計を使いました影響試算ということを今回やってみました。それで、発表の順番なんですけれども、いろいろ相談しまして、ミクロの農業経営統計を使った試算として、大きく3つの試算結果を発表させて頂くことにしてます。

 1つは畑作ですね。これは三好さん、関さんに担当してもらいました。その畑作の場合、北海道とそれから都府県というふうな経営統計の作りかたになっているわけですが、この資料では、北海道というタイトルのついた資料と全国(北海道を除く)という見出しをつけております。全国(北海道を除く)ということは、都府県ということですね。

 そういうふうに、北海道とそれ以外を分けた畑作ということを三好さんに発表してもらいます。私の方は、表1から表3まで両面A3サイズのコピーになっているのですが、酪農、北海道とあります。この酪農の個別経営ということは、家族形態ですね。農家です。酪農農家が関税撤廃でどういう影響を受けるかということを、酪農王国北海道を対象に試算をやってみたということですね。

 もう一つ私が今日、発表させて頂きますのが、A4サイズですね。これは一枚ものなんですけれども、しかも片面印刷だけなんですが、表とだけ書きまして、番号が入っておりません。関税撤廃後の水田作。個別経営の作付面積規模別にみた農業所得の減少見込額として、北陸地方というふうに書いております。

 つまり、水田作、中身は殆ど稲作と考えて頂いていいんですが、コメどころの北陸の稲作農家に及ぼす影響の試算結果を発表させて頂くというふうに私は酪農北海道と、北陸の稲作を試算をやらせて頂きました。

 それで、この資料のフォーマットをご覧いただければお分かりになると思うんですが、試算の方法というものは、共通化いたしました。その共通化というのは、前回、第二次の発表の時に、私が全国ベースの稲作を作付面積規模別に試算をしてみた結果を発表いたしましたが、その方法論を概ね踏襲し、一部改善すると言いますか、変更、拡張して、今日、発表させて頂くということですので、共通部分のところの方法論ということを最初に私のほうからお話をさせて頂きます。

 ただ、方法論だけをお話しても抽象的ですので、私が担当しました酪農を、北海道の酪農という資料、A3サイズの両面コピーですけれども、縦長になっておりますが、それを中身を説明しながら、試算の方法について、お話をしたいと思います。

 そのあとに、三好さんから畑作につきまして、北海道とそれ以外、というのを発表して頂いて、そのあとまた私に戻りまして、北陸の水田作、稲作の影響試算というふうに、行きつ戻りつですが、やらせて頂きたいと思います。

 まず、酪農について、資料をお手元、よろしいでしょうか。ちょっとあちこち入り乱れておりますが、A3サイズ。まず、表1というところから、ご覧いただきたいと思います。これは関税撤廃する前の、北海道の酪農農家は、どういう状態であったかということを、これは既存のデータから集約したものです。

 前回の稲作と同じように、規模別にまず検討いたしました。酪農の場合の規模と言いますと、これは搾乳牛の頭数というふうに元データはなっておりますので、それをデータの突き合わせを揃うように、20頭未満から順次、そして100頭以上という区分にいたしました。

 総戸数は、過去の平均をとってもあまり意味がありませんので、直近の平成23年のデータを採っております。ごめんなさい、下に書いておりますが、2012年の2月1日調査による、となっております。

 これは、畜産統計年報という独自のものがございまして、こちらが一番新しいので、これを使いました。トータルの戸数が5,970戸となっております。それぞれの規模別の戸数と、その全体を100とした場合の内訳を表しておりますが、北海道に特有の状況として、100頭以上もいるところが1,410戸ありまして、パーセンテージでいうと20.2%の農家がこれに属しているということになっております。

 以下、農業租収益というものがありますが。それからその下、マル3、畜産収入があります。この場合には酪農と鶏卵とその他の畜産収入というふうに分けましたが、酪農の中でも関税撤廃の影響を受けるものが生乳ですね。これを内訳として示しまして、あとの関税撤廃の影響を受けるときの元データにしておこうというわけです。

 となりますと、酪農の中で生乳以外はなにかということが気になるところなんですが、元データには、その説明がないんですけれども、酪農の場合に固有の収益というものとして、搾乳できるまで、つまり2歳になると、いわゆる成牛という。人間で言うと成人。

 そこから父を絞れるということなんですが、それまで0歳から2歳までの間は、これは成長していく牛だということで、年を経るごとに成長していくということで自然の成長増加。それを価値の増加というものを収益に入れている。これはキャッシュの裏付けがないんですけれども、そういう扱いをしているという固有の状況があります。

 それがかなりのウェイト。生乳以外の酪農収入のかなりの部分を占めていると考えられます。4番目が作物収入と言いますのは、酪農農家であっても、いわゆる畑作とか、そういった農産物を生産していると。その収入です。

 その酪農畜産収入と作物収入。3と4を足しあわせたものをここでは純農業収入と呼びました。そのあとの6が政府からの所得補償金などの補助金等、いわゆる農業雑収入というものです。実は、この前に戻りますが②の農業粗収益というのは、結局これは純農業収入にこの6、所得補償などの補助金を含めたものということになります。

 そこから、次に7の経費ですけれども、前回の稲作の場合と同様に、固定費と変動費にここでは、これは私たちの独自の推計で分解いたしました。

 前回、稲作を発表しましたときには、移動平均法でやりましたけども、これは厳密に言えば、単純移動平均だったんですけれども、いろいろ非常に初歩的ではありますが、統計学の考え方としまして、固定費というのは農業に対する投資、建物とか農機具、こういう過去の投資の履歴が反映してくると考えられますので、その過去の履歴をよりリアルタイムに反映していこうというためには、加重移動平均法というのがございます。つまり、重み付けですね。

 最近の固定資産の変動金額のほうに、緩やかながら重みをつけていくと。これは各5年分をトータルとして、5年前が15分の1。その4年前が15分の2、3年前が15分の3。2年前が15分の4、1年前が15分の5というふうに重み付けをした移動平均法を採ったということです。

 9番目というのは、これは7経営費合計から固定費を引いたものをここでは変動費というふうに、これは差引という計算でやっております。次に、10番目の変動比率ですが、変動費というのは、例えば、農薬とか肥料代とか、概ね作付量、あるいは、収穫、あるいは作物収入に連動していると考えられます。

 そこで、変動費率。つまり一単位あたりの農業収入を得るのに、どれだけの変動費、肥料代とか農薬がかかっているかという割合ですね。それを変動費率として10番目に出しました。

 それから、その次、11番目が農業純所得。この辺りから結論的に言えば、この11番目、それから8となってしまいましたが、これ12のちょっと入力ミスになりましたので、ここは8農業総所得を12というふうに訂正をして頂きたいと思います。

 この辺りが最終的なハイライトかと思っております。それで、11の農業純所得というのは、所得補償等の補助金等を除いた純然たる農業収入からの得た所得ということで、番号で言えば5番目。純農業収入から、7番目、農業経営費を引いたもの、これを農業純所得と呼ぶことにいたしました。これは前回の稲作と同じですね。

 次に一番下の12番と改めました農業総所得と言いますのは、この純所得に、これに6番の補助金などを加えたものです。別の見方をすれば、2番目の農業粗収益から7番の農業経営費を引いたもの、これが農業総所得と。この中には、補助金等の受け取った分も込みになっていると考えていいと思います。

 このような状態が、過去3年の平均の経営の状況だったというふうに考えます。次に、それが関税撤廃の影響を受けた後、どうなるかというのが、その下の表の2です。1番目の農家数、これは同じものを使っております。変わらないと想定して、2ダッシュ以下が変わっていくわけですが、2ダッシュは、これは5プラス6の計算ですので、まず下から先に計算していかなければなりません。

 そこで、影響を受けるのが生乳ということで、3のダッシュの中の生乳ですね。これは産出額の減少率というもの。1マイナス減少率では残存率ということになりますと、それは北海道の場合は、50.2%残る。残りが輸入で置き換えられていく、消えるというふうに想定されておりますので、そのような計算でやってみますと、例えば、20頭未満の農家であれば、294万円というふうに畜産生乳の収入がなるだろうという見積もりです。

 それから、2ダッシュですね。関税撤廃前からの減少額というふうに書いておりますが、30頭未満のところでみれば、291万7千000円の収入が失われるだろうというふうに考えます。これを20頭未満の農家、418戸に掛け合わせていきますと、その縦の規模の合計を取ってみますと、約12億になると。

 それをずっと規模横断的に横を合計していきますと、関税撤廃前からの減少額、これは主に生乳ですけれども、1657億の収入、主に畜産収入がそれによって失われるだろうという試算結果になりました。

 以下、作物収入、純農業収入等は今日、同じことでしたので、これは省略いたしまして、7ダッシュの農業経営費がどう変わるかということですけれども、ここではまず、ちょっと説明が必要です。

 8ダッシュのところで、固定費というふうに書いておりますが、これが先ほど言いました、単純平均じゃなくて、関税撤廃前の5年間の荷重移動平均というものを関税撤廃後の固定費としております。

 固定費というのは、これは規模が動いても基本的に変化しないものという想定をする費用の特性があるものですから、関税撤廃前の直近の状態が引き継がれていくだろうという想定をしております。

 次に、この変動費なんですけれども、変動費は、これは純農業収入に対して、得るのにどれぐらいの費用をかけるかということですので、その変動比率というものは、関税撤廃前と後とで変わらないという想定をして、変わるのは、その関税の撤廃の影響を受けて、農業収入が変わると。

 そうすると、関税撤廃後の農業収入ですね。それが、5ダッシュですね。それに、変動費率をかけ合わせると、関税撤廃後の各規模ごとの変動費の額が出るというふうに、そういう試算の方法を取っております。

 そうすると、その関税撤廃後の8ダッシュ固定費と、10ダッシュ変動費、これを足しあわせて7ダッシュの農業経営費というものを試算したという方法です。ちょっとこの辺り、込み入ってるかもしれません。

 11ダッシュの農業純所得は、これはすでにここで出て来ました5ダッシュの純農業収入。それから、7ダッシュの農業経営費を引いたものですね。それから、12ダッシュというのが、2ダッシュの農業粗収益から、7ダッシュの農業経営費を引いたもの。この算式は、表1と同じです。

 ここまでのところでちょっと見ますと、ハイライトは下から2行のところですね。11ダッシュ農業純所得と、農業総所得ですけれども、それを規模ごとに見てまいりますと、まず、全ての規模を通して、農業純所得は、関税撤廃後は、マイナス赤字になる。かつそれがお大幅な赤字になるという試算結果になりました。

 その農業純所得の減少合計額、横に合計したものが521.5億円というふうになりました。次に、補助金所得補償等も含めた場合の農業総所得はどうなのか、ですけれども、これは、結果的には全ての規模で一応プラスの、つまり黒字という試算結果になりました。

 その合計が、これは減った金額が525.6ですけども、これは減少額のことで、ちょっと横の欄が、高さがずれちゃいました。本当言えば、純所得と総所得が521.5と525.6と、ちょっと約4億円違ってしまったんですね。

 これ本当だったら一致するという想定なんですけれども、ちょっと積み上げでやっていて、どこで狂いが出たのかは、ちょっと突き止めきれておりません。

 そこで、農業総所得が全ての規模で関税撤廃後も黒字を保つだろうという想定をしたわけですが、ただ金額的なスケールでみると、関税撤廃前からの増減で見てみますと、一番少ない規模で言うと、20頭から30頭の規模のところで、42%減。

1番大きい100頭以上のところでは96.2%減ると。これはもう殆ど消えてしまうような、そういう試算結果になりました。

 ここは、私どもも非常にいろいろ注目したところなんですけれども、その結果は、ちょっと申し上げますが、時間が押しておりますので、先へ進ませて頂きます。

 もう一つ裏側に行って頂きまして、表3をご覧いただきたいんですけども、これが今回、7月5日の第二次の発表の時と変更した、あるいは拡張したものです。それはどういうところかといいますと、農業総所得のところで止めないで、農業外所得、年金等収入等もあります。それらを含めた総所得と、そこから租税公課等負担金を引いた。それで各農家ごとの関税撤廃後の可処分所得というものを18番として出しました。

 他方、この農業経営統計というのは、これ全部18番までに載ってるんですけども、19推計家計費というものがあります。つまり、ここでやっている農家というのは家族経営体ですから、農業総所得を、これを可処分所得として、それで家計を、生計を成り立たせていってるというのが実態です。

 とするならば、農業総所得で終わりではなくて、それから租税公課等引いたあとの可処分所得が推計家計費を賄えてるかどうかというところを見る。これが農業も含めたトータルの農家の生活実態というものにもう一歩近づいていってるんじゃないかと考えたわけです。

 その関税撤廃前の家計の収支残と、関税撤廃後を見てみますと、関税撤廃前は、最小規模のところは、この時点でもすでにマイナスでしたが、それ以外は黒字を維持していたのですけれども、20番、関税撤廃後の家計収支残を見てみますと、全て大幅な赤字になると。つまり、トータルの家計がマイナスになってしまうと。そういう試算の結果になったと。

 私は、この部分ですね。今回、非常に注目したいというふうに考えております。ちょっと長くなってしまいましたが、最後に、北海道の酪農について、簡単に感想とコメントをさせて頂きますが、書いておりますが、手短に読み上げさせて頂きます。

 関税の撤廃により、生乳生産が甚大な打撃を被ると予想されることから、各種補助金を除いた農業純所得は全ての規模の農家でマイナスとなり、畜産収入の現象は総額で1657億円に達しました。

 また、農業純所得の減少は総額で522兆円ということになりました。次に2つ目、各種補助金を加えた農業総所得が現在の各種補助金額が据え置かれると仮定した場合、どの規模の農家でも関税撤廃後も黒字を維持すると見込まれますが、頭数100頭以上の農家では、関税撤廃前の農業総所得の96%を失ってしまうというふうに試算の結果が出ました。

 3は、そのような結果になりました私どもなりの原因の検討ですけれども、関税撤廃の打撃が大規模酪農農家ほど大きいのは、これらの農家は、生乳に傾斜し、他の畜産収入とか、作物収入など、これを殆ど手がけていない。規模の小さいところはかなり酪農農家と言いながら、それ以外の収入源もそこそこあって、それが打撃をかろうじて支えているという面があるわけですけれども、大規模農家はもう酪農生乳に集中しているというところがこういう結果になってきているんではないかと、ひとつ考えられます。

 もう一つは、大規模であるがゆえに、固定資産総比率、つまり、労働時間単位あたりの固定資産額、これが農業経営統計にも出てるわけですが、これが非常に大きいと。20頭未満ですと、これが258円ですが、100頭以上になりますと、これが167円というふうに非常に大きい。

 この固定費というものが規模が縮小しても簡単に調整できない。その重荷がこうやって大きくのしかかってきていると考えられます。

 4番目、さらに関税撤廃後の家計収支をみてみますと、どの規模の農家でも大幅な赤字となります。このことは、酪農所得の激減により、農外所得の年金収入等を加えても、大半の農家が家計を維持していくことが非常に、これは困難になるというふうに私は考えました。

 前回、年金農業ということもございました。年金を頼りにしてるから、という議論もありますけれども、こういう結果を見ると、年金収入を加味しても、到底、維持していくことが極めて困難な状況になるというふうに私は試算結果をいたしました。

 まあ、今回の結果から、TPPへの参加によって酪農農家が被る甚大な打撃を規模の集積、拡大で乗り切ろうという、そういう議論がございますけれども、この試算結果を見る限りは、そのような議論というものの信ぴょう性、これは非常に乏しいというふうに、私は感じました。以上です。

 概ね、ちょっと中身はもちろん違いますが、方法論的にはこのような方法で、関さん、三好さんには畑作をやって頂きましたので、独自のところは、プラスコメントして頂きながら、この後、畑作について、三好さんのほうからプレゼンテーションをお願いしたいと思います」

●三好ゆう氏発表資料(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
畑作ワークシート都府県(関税撤廃前).PDF
畑作ワークシート都府県(関税撤廃後).PDF
畑作ワークシート都府県(関税撤廃後の家計収支).PDF
畑作ワークシート北海道(関税撤廃前).PDF
畑作ワークシート北海道(関税撤廃後).PDF
畑作ワークシート北海道(関税撤廃後の家計収支).PDF

三好ゆう氏「桜美林大学の三好です。よろしくお願いいたします。畑作の個別経営の北海道と、北海道を除く全国の影響について説明をさせて頂きます。

 まず、畑作個別経営の北海道のほうから、説明させて頂きますが、A3一枚と、A4が一枚で、ホッチキス止めをしてある資料をお手元にお出しください。

 まず、使用データにおいて、畑作の北海道について、固有の部分となるところですが、規模別の区分が一番小さくて5.0ヘクタール未満、次が5~10、10~20、20ヘクタール以上、と4区分になっております。

 それから作物収入の表の1を見て頂くと、③に作物収入という欄がありますけれども、その中で、イモ類の部分が、その1馬鈴薯について取り上げております。農作工業物については、そのうちのテンサイの部分。これがデータにありましたので、この数字を用いて、全て計算しているということです。

 この点を踏まえまして、結果のポイントについて、簡単に説明させて頂きますので、表の3を御覧ください。表の3の下に北海道の畑作個別経営の影響試算の結果のポイントというのが文章で書かせてもらっておりますので、基本的にはこれについて、読み上げさせて頂きます。

 まず一点目ですけれども、関税の撤廃により主力のイモ類テンサイがほぼ壊滅すると予想されますので、各種補助金を除いた農業純所得の段階では、この結果を以上の規模の農家の平均値はマイナスとなり、作物収入の減少が総額で2084億円に達します。農業純所得の減少は総額で753億円です。

 ポイントの二点目ですけれども、第一次、第二次の試算結果の発表でも指摘させて頂いたんですが、畑作作物については、その生産体系から見ると、品目別ではなく、輪作体系という形をとっておりますので、この輪作という視点から捉えると、ある程度は残るというふうにされている作物も、その他の輪作作物の壊滅にともなって、地力の低下を生じると見込まれます。よって、作物収入と農業総所得の減少は、さらに拡大するというふうに予想されます。

 ポイントの3つ目ですが、各種補助金を加えた農業総所得の段階では、現在の各種補助金額、補償金額は据え置かれると仮定した場合、つまり、TPPの影響によって生産が減少して、減少したぶんを補助金で補填されないと。

 補償されないというふうに仮定した場合、どの規模の農家でも、平均所得はプラスを維持するんですけれども、関税撤廃前と比べると、作付面積が、すいません、次は誤字になっておりまして、5.0ヘクタール未満というふうに、ちょっと書きなおして頂きたいんですが、すいません。お手数をおかけします。

 作付面積5.0ヘクタール未満の農家の関税撤廃後の農業総所得は、平均で60%とも減少します。20ヘクタール以上の農家についても、47.5%減少するということが見込まれます」

三好「最後に、4点目ですが、関税撤廃後の家計収支を見てみますと、どの規模の農家についても大幅な赤字となります。このことは作物収入の激減によって年金収入等を加えても、家系を維持していくことが困難な農家が多数になるということを意味しています。

 畑作については、他の生産部門、生産分野と異なって、規模の経済がちょっと働きにくいということ、それから生産体系によって、輪作という形をとっておりますので、効果の試算結果というのは、かなり控えめな数値であるというふうに言えます。

 次に、全国のほうを見ていきたいので、A4ですね。2枚、ホッチキス止めをされている畑作個別経営の資料をお出しください。

 畑作個別経営の北海道を除く全国。つまり、都府県ということですけれども、使用データについての注意点がございます。まず、北海道と異なりまして、規模別区分というのが大きく違います。

 1番小さい規模で、0.5ヘクタール未満が最も小さい規模という形でデータが始まり、1番大きい規模区分で10ヘクタール以上となっている点にまずご注意ください。

 それから資料制約上、5.0~10.0ヘクタールの、この規模につきましては、資料の制約上、試算できませんでしたので、お手元のレジュメにおいては、ハイフンで全て記されてるかと思います。

 これを踏まえまして、結果のポイントについて、表3の全国(北海道を除く)の表3の下を御覧ください。ここについても簡単に読み上げさせて頂きます。

 まず、ポイントの一点目ですけれども、関税撤廃により各種補助金を除いた農業純所得の段階で、軒並み大幅な減少がもたらされます。その総額、農業純所得の総額2589億円。作物収入の減少でみると、総額が5216億円にも及びます。

 二点目ですが、畑作における輪作体系というものは、北海道だけではなく、全国的にも見られます。そのために、都府県についても作物収入と農業純所得の減少が、本試算結果よりもさらに大きくなるというふうに予想されます。

 それからポイントの3点目ですが、各種補助金を加えた農業総所得の段階では、北海道と同様で、現在の各種補償金額が据え置かれると仮定した場合、どの規模の農家でも、平均所得はプラスを維持するものの、関税撤廃前後の減少率を見てみますと、規模別で見て、もっとも減少率が低い作付面積10ヘクタール以上の農家においても、一経営体あたり平均で約30%の減少をもたらすと見込まれます。

 それから4点目ですが、家計収支については、現在でも平均で少額かもしれませんが、少額と言えども赤字の状態にあります。関税撤廃後は、どの規模の農家でも大幅な赤字になります。このことは、北海道と同様に、作物収入の激減によって、年金収入等を加えても、家計を維持していくことが困難な農家がこれも多数上がるんではないかということを意味しています。

 仮に、家計消費の水準を落とすなどをして、農家の方々が工夫して対応したとしても、それでもカバーできないぐらいの大きなマイナスが予想されるというのが言えます。簡単ではありますが、畑作については以上です」

●醍醐 聰氏発表資料(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
酪農 表1 北海道(関税撤廃前).PDF
酪農 表2 北海道(関税撤廃後)生乳のみ.PDF
酪農 表3 北海道(関税撤廃後)生乳のみ.PDF
水田作 北陸 表(関税撤廃後).PDF

醍醐「はい。それでは3番目になりましたけども、簡単に北陸地方の水田作、稲作について、説明をさせて頂きます。片面印刷の横長のA4サイズの資料です。

 本当言えば、これも畑作とか酪農と同じようなフォーマットにしたかったんですけれども、ちょっと実情を申し上げますと、前回の第二次以降、稲作を全国でやってたんですけれども、やはりコメどころ北陸で大きな影響が出るということが関さん、三好さんの試算結果で出ておりましたので、北陸をやりたいということで、既存の公表データだけでは試算ができないというところが分かりまして、北陸農政局に追加的な資料の提供を要望したんですね。

 大変快諾して頂いたんですけれども、三連休をはさみまして、相当な作業をして頂いたという。先方も膨大な作業になったようでして、実は届いたのが昨日の午前中だったんです。それで、そこからもう、大変ハードな作業をやったということで、ハイライトの部分だけをとにかく仕上げようということでやらせて頂きました。

 北陸も4県ごとにできなかったのかということなんですけども、実はこれはサンプル調査なんですよ。各規模と言いますと。そうすると、県単位までわけますと、そのサンプルが場合によっては3とか4とかというところが出てしまうと。それでは、平均として代表しているということについて確信が持てないというお話がございまして、もっともでした。

 で、4県をトータルにして規模別ごとにくくれば、それなりのサンプル数にはなるということで、北陸トータルでやってもらえないかというお話だったもんですから、こういう格好になりました。

 それからもう1つ、農業総所得以下、家系収支にたどり着くまでのところが、今回ここはないんですけれども、それはこれは元のサンプルの制約です。非常に穴だらけのようなサンプルなんです。一年分しかないとか二年分しかないとか、全くないとか、そういう虫食い状態の資料を使ってやるのは、ちょっとこれは信頼に確信が持てないということで、農業総所得まで一応揃った分だけ、というふうにいたしました。

 結論だけ、ちょっと申し上げますと、データだけのプレゼンテーションになってしまいましたが、まず、9番目の農業純所得で見ますと、これは畑作、酪農と共通ですが、関税撤廃後は全てマイナスになると。

 その影響の意味は、上の3の農業収入のところの稲作がほぼ半減する。麦類はほぼ全滅すると。豆類が約35%ぐらい残るというような、非常に甚大な影響を受けるということの結果なんですけれども。

 それで、この農業純所得が関税撤廃前から、横合計でどれだけ減るか。これちょっと書いておりませんが、トータルいたしましたら、608億円というふうになりました。次に、最後一番下の10番、農業総所得ですけれども、こちらは、一番小さい1ヘクタール未満のところでは、補助金等を含めても、赤字になってしまうんですが、それ以外は、まあ黒字という結果になりました。

 ただ、ここでも関税撤廃前と比べて、どうなのかということを見てみたのが、この増減率というところですね。これは実はマイナスですから三角印をつけるべきだったんですけども、例えば1ヘクタールから2ヘクタールであれば、75.1%減ってしまうと。つまり、4分の3なくなって、4分の1しか残らないという状態です。10ヘクタール以上の1番大きいところでも、42.1%ですから、約58%の所得が失われると、そういうスケールだということをご覧いただきたいと思います。

 簡単ですけれども、北陸につきましては、そのような状況だということを申し上げます。非常に、私ども、長い時間の説明になってしまいましたが、この後は、3人の発表、トータルで誰の発表からでも結構でございますので、ご質問なりをいただければ、ありがたいと思います。

 挙手でお願いいたしまして、所属をお知らせいただければ、ありがたいと思います。手を上げて頂きましたら、マイクを持っていきますので、よろしくお願いいたします」

記者「酪農経済通信社のヨシダと申します。酪農の関連で、下の部分で、これちょっと勉強不足なもので教えて頂きたいんですが、関税撤廃後の負担で、平均実績値に算出額残存率50.2%をかける。この50.2%というのは、どういう数字なのか、ご説明いただけますでしょうか?」

醍醐「これは、農水省の試算で、算出額の減少率というのが出ておりますので、それをそのとおり踏襲した数字というふうにしております。これ全て、畜産であれ、作物であれ、そのまま関税撤廃の影響で掛け合わせている掛け目というのは、基本的には農水省の算出額の減少率というもの、減少率ですから、残存率は1マイナスという形で計算しているということです」

記者「農水省がその全体の算出額の減少率として出した数字を各北海道に当てはめて計算したということですか?」

醍醐「この試算できるところは、例えばおコメの場合もそうだったんですけれども、都道府県ごとに試算できるところは個別にかけ目を使ってるところになりますけど、これは酪農は、失礼しました。

 牛乳、乳製品という品目構成になっているんですけれども、これは農水省と言いましたけれども、正確に言いますと、全国の減少率の平均が44.8%です。

 私ども、関さん、三好さんが都道府県ごとに所得の積み上げ計算をやってくれた時の試算結果からいくと、これは都道府県ごとにデータの取れるところはばらついていると。

 北海道の場合は、減少率が49.8%です。それ以外のところは36.7という数値が比較的多いですが、多少、私どもの計算でばらつきを測っておりまして、先ほど言いましたが、ここは北海道の牛乳乳製品の1マイナス減少率を使っているということです。

 ちょっと試算の方法のところは、駆け足だったものですから、説明不足があったかもしれませんので、大事だと思われるところはお尋ねいただけるとありがたいと思います。あるいは、主に、私どもがコメントとつけましたところのご感想などを伺えれば、ありがたいと思います。

 ちなみに、私と三好さんが発表しました租税公課負担額というところのちょっと説明が十分でなかったかもしれませんが、この租税公課というのを元資料の用語の説明を見ますと、直接税というふうに説明されております。他へ添加する間接税はここには含めないとなっております。

 当初は、この租税公課負担金も関税撤廃前3年平均の数字を使ってやってみたんですけども、おかしなことになって、やはり所得が減れば、直接税でありますから、それに連動して租税公課も減っていくだろうという想定のほうが、現実に非常に近いだろうということで、関税撤廃前の租税負担率、これは、農総所得に対する租税公課負担額の割合ですね。総所得のうちどの程度租税公課と負担金に支払ったかの割合ですね。

 その割合は、関税撤廃前と基本的に変わらないだろうという前提で、ただ掛け合わせる総所得が変わったら、どう動くかと。そういう試算の方法を採ったということです。厳密に言えば、税率のフラットが、ブラケットが動くじゃないかとかいうことは、厳密に言えばあるかもしれませんけれども、ここでは、そこはちょっともうできませんので、一応、比例的に、所得が減れば、租税公課負担率も減るだろうという前提で試算をしております。

 家計費というのは、ここに下に注を書きましたけども、総務省の家計調査というものの中の2人以上の世帯という累計の家計費というものをここでは元データでは使っておりますので、私どもはそれを参照したということです」

記者「***の小林と申します。酪農の関係で、表の2の細かいところ、1番右下の、マイナス521.5億円というのは、これはまとめのところに出てくる純所得の減少額ということだと思いますが、その下の525.6億円というのは、これはそのまま総所得の減少額という理解でいいですか?」

醍醐「そうです。それは横に合計したものです。私も、これは計算式からいうと、純所得の減少の横の合計と、総所得のとこの合計というのは、基本的に一致するという想定に立つんですけども、それぞれ別々にやってみた結果、ちょっとズレが出てしまったということで、その4億円ぐらい、ちょっとずれました。そこはちょっとまだ原因は突き止めてないので、今日のところはちょっと説明が出来てないということをお断りしておきたいと思います」

記者「増減率マイナス77.2%というのは減少率の平均ということでいいんですか?この規模ベースの」

醍醐「これは、農業総所得の関税撤廃前の合計額ですね。だから、関税撤廃前の合計と、関税撤廃後の合計との変化率ということです」

記者「分かりました。あとすいません。一番初めにご説明頂いた産業連関表とも関係するんですけれども、生乳が関税撤廃された場合、北海道の場合、新しく全国と置き変われば市場ができるということになると思うんですが、こちらの酪農経営のほうの関税撤廃の部分については、そこはまったく加味してないということでしょうか?」

醍醐「これは、前回も質疑があったところでして、北海道の酪農、特に生乳ですね。乳製品等が、私どもが北海道に調査に行った時には、確かにすごい打撃を受けると。ただ、北海道のものは、本州のほうに、かなり輸出していくということがあるんじゃないかという想定をお話を聞いたことは確かなんです。

 ところが、その輸入率というのは、土居さんのようなマクロ的な試算であればできるかと思うんですけども、私どもは積み上げでやっていく場合に、確たることはなんとも言えませんので、それと、仮に北海道の乳製品が本州に来たとすれば、結局、それは日本国内での中での市場の規模が変わらない限りは、日本トータルで見れば、その分だけは食われてしまうということはあるので、それを北海道のレベルで見るか、全国レベルで見るかということですので、日本で見れば、ここで試算したぐらいの減少が起こるという。これは消費量が特に増えない限りは、という意味に、私どもは受け止めております」

記者「すいません。すごい基本的なことで恐縮なんですが、一番初め、産業連関表の試算の段階で、今回は輸出の増加分というのが棚上げされていくというお話がございましたけども、ちょっと改めてお応えいただきたいんですが、輸出を棚上げしている理由というのは、例えば、日米交渉の関係で、先ほど10年先、20年先というお話がございましたけども、その直近での輸出の増加分というのはプラス要因として発生しないという前提で書かれているということですか?」

土居「少なくとも、日米交渉でアメリカの関税を数年で撤廃するとはアメリカは言ってないわけです。10年から議論しましょうということですから、早くて10年から始まる。関税撤廃が、あのアメリカの2.5%の議論が始まって、そこから20年あと10年かけて、アメリカの事情を聞きながら減らしていくと。うまく行けば、ですけどね。

 業界の抵抗にあって、それが叶わない場合もあるかもしれませんが、いずれにしても、早くて10年先ということですので、それは効果が出てくるのはおそらくその10年から20年の間ということですから。その効果が出始めるのは。だから、そこの先10年の話で。以上で」

記者「わかりました」

記者「日本農業新聞の岡部と申します。三好先生にお聞きしたほうがいいと思うんですけれども、酪農の産出額残存率、さきほどもお話に出て、この数字はたぶん前回、関先生が試算した生産額減少率から逆算してこれが残るという形で計算していると思うんですけれども、この北海道の場合は、確か農水省というか、政府統一試算が北海道のものは、加工はなくなるけど、その分、引用が都府県の原因が北海道から行くという試算で、なかなか生産額の減少というのがすごく計算しにくいかと思うんですけども、この前、ご説明されたかもしれないですけど、その減少率49.8%になるという説明をもう一度して頂けないでしょうか」

三好「ありがとうございます。前回の第二次会見の内容になってしまって、他の方、申し訳ないんですけども、そもそも今回、醍醐先生が酪農のほうの計算で使われている生乳の残存率50.2%、逆に言えば、49.8%が減るという計算をしているわけですが、第二次の報告中では、牛乳乳製品という品目のくくりで生産額の減少率という形で発表させて頂いた数字になります。

 牛乳乳製品の農水省試算の方法によると、生乳は残るものとして、生乳の中の生クリームは残るものとして、残りのバター、それから粉乳、チーズ、これがそれぞれの割合で置き換わるという設定になっております。

 ですので、生乳段階で把握した上で、クリームは全部残る。そして、バターと粉乳は、ちょっと今なん%か忘れてしまったんですけれども置き換わる。そしてチーズはなん%置き換わるという計算をした上で、さらにまた積み上げて、生乳全体として、どれだけ減るかという計算をした結果の49.8%、北海道では減少するという計算です」

醍醐「ここは、私も試算するときに、いろいろ考えたところでして、例えば表の2のところで、酪農のうち生乳のみが影響を受けると仮定と書きまして、酪農というものの中身で、どこで影響を捉えるかということ。例えば、おコメだったら、精米の段階で捉えるとか、小麦であれば、どこでとありますよね。

 生の段階で捉えるのか。そういう製粉の段階で捉えるのか。これは、私は今回試算をやった当初から非常に悩んでるところなんですけれども、実はぼくはやるときに、農水省というか、北海道の試算が非常に詳しい。データ諸元というのがあるんですよ。

 それ見ると、北海道は数字はまさにこれ三好さんが北海道を固有に使われたのは、これ実は、北海道が独自に試算しているので、やっぱり地元の試算を使おうということだったんですよ。

 それみると、生乳の段階で50.2というふうにデータ諸元で積み上げてるんですね。私どもも、それを一応前提にここで掛け目を使ったと。だから、生乳の段階で影響を捉えたというふうに、どこかでポイントを決めませんと、計算ができないもんですから、そういう意味だというふうに考えて頂ければ、と思います」

記者「醍醐先生にお聞きしたいんですけど、さっき酪農の成年以外の酪農というところで、これはいわゆるホルスタインのオスの子牛とか、いわゆる廃用牛というか、乳搾り終わった後の古親の牛とかを得る収入とかも含まれるんですかね?そういったものというのは」

醍醐「この生乳以外の酪農牛というのが入ってるかということですかね?それは入ってると思います。ですから、これはちょっと明細は書いてないんですよね。ただ、いろいろ内訳を見ると、先ほど言った生乳になるまでの間の成長増加ですよね。これは結構な金額になるので、かなりの割合を占めてるんじゃないかなと。

 もう農業新聞の方は御存知のとおり、生乳になるまでは、仕掛中ということで、償却はやらない。実は動物は償却はやるんですよね。成牛になった後、償却をやるんですね。そういう農業特有のやり方があるなと思いますね」

土居「ちょっと私のほうから二点ばかり追加させて頂きます。私の表があまり小さくて詳しすぎるもんですから、みなさんもちょっとその数字を読むということにすぐには難しいところがあろうかと思いますので、若干、解説しておきます。

 合計のBのところ、ちょうど総括表の真ん中のところですね。合計のBのところを見ますと、1番大きいのは北海道の2兆4千億。この中からもし生乳の問題、引き算をするとすれば、ですが、それでも1兆を越える。

 それからあと、2番目が東京。北海道、東京という順番で影響を受けるということです。それも1兆円台です。あと3千億4千億の台というのがいくつかありまして、例えば、3千億以上が宮城ですね。4千億近い。それから福島も3千億。それから千葉。東京は飛ばしまして、西のほうにいきますと、静岡。この静岡なんかは独自試算をやらないというふうに言ってますけども、やはり3千億を上回る影響が出てくる。愛知もやってませんけども4千億。これは特に製造業に跳ね返ってくるというところが特徴です。

 やはり、工業都市は工業都市の製造業に跳ね返ってくる。それから、東京や大阪なんかは第三次産業、そういうところに跳ね返る。消費関連のところですね。それから、あと兵庫県も4千億超えてますし、最後に九州の南三県、宮崎、鹿児島、沖縄は、3千億、4千億というラインになってます。

 そこを見ますと、やはり東北、北海道から、それから北陸信越、九州、そういうところは3千億から2千億台の影響を受けるということです。これが一点。だから、影響試算してないところも、やはりかなりの影響を受けるところが出てくると、決して、軽いものではないということが一つ。

 もう一つは、震災を受けた東北3県です。それを見ますと、宮城県で合計の生産減少額が3千933、福島で3千120、それから岩手で2千439。合わせますと、約9千500億円。震災3県で約1兆円の生産減です。それから所得のほうF欄、GDPのところのF欄を見ますと、この東北3県で4千700億ぐらいの減ということです。

 復興の足を引っ張ると言いますか、この農林水産業やこのさまざまな地元の産業について、農業だけではなくて、第二次、第三次の産業の、町おこしをやろうというところに対しても、やはり甚大な影響を及ぼすなということを見て取れるかと思います。以上です」

記者「日本農業新聞の***でございます。土居先生へ。大変この産業連関表の読み方が素人で分かりにくいので教えてもらいたいんですけども、政府はTPPの推進というか、入ることのメリット効果を消費者メリットで還元されるとか、安い食料品が買えるとか、家計が潤うというようなことを言うようですけども。

 この読み方なんですけども、そうしますと、例えばこれは生産が減少する。その3.7倍ぐらい関連産業が影響を受けてくる。雇用に影響する。そこで、最後のところで実施的に物価低下による若干の家計の潤いはあるにしても、トータルにしてみたら、要するにTPP参加メリットはないという、消費者サイド、目線で見ても、というふうに読んでよろしいんでしょうか?」

土居「そうです。少なくとも輸出を別にすればという条件付きですけどね。もう一つのメリットは、輸入関税で安いものが入ってきて、消費者家計が潤うというのと、輸出が増えるという2つありますが、その2番目は非常に長いスパンの時差ですので、やはりこちらのほうが先に出てくるだろうというふうに思いますので。

 政府は、徹底して抵抗すると、交渉するということで宣言はされてますけども、やはり、これトータルとして見ると、少なくとも日本の輸入関税を撤廃して、プラスマイナスありますけども、トータルとしてみれば、失うもののほうが大きいというのが私の結論です」

記者「すいません、あと一点。醍醐先生に。試算では農業総所得が現行の補助金制度なり、そういうものを織り込んでも、減少率がかなり大きいですよね。畑作にしても酪農にしても。稲作にしても。

 これを要するに、全面的に国策として過多率を全部国費で埋めようとすると、いったいトータルとしてどれぐらいお金が、具体的に必要なのかというような、粗々でも結構なんですけど、そのへんのところをお伺い出来ますか?」

醍醐「おっしゃるとおり、私どもは稲作だとか、水田とか、酪農とかをやってるものですから、全国のトータルでというところを本当だったら出せたら良かったんですけどね。まだ、ちょっとそのトータルまではなかなか辿りつけてないんですけども、結局、そういう議論は私たちの中でも、三好さん、関さんなんかともやりながら議論したんですね。

 それを、例えば、財政負担がどれぐらい、じゃあ発生するのかということを考えるときに、この農業総所得の減少額ですよね。それを私の酪農で見れば、520億強、というかたちになりますし、それから、いわゆる所得補償というのは、生産表下回った場合では、ですから、これは所得レベルというか、収入レベルという考え方も取れるのかなと思うんですけれども、両方出してみたわけです。結局のところは。

 それで、酪農でいえば1657と出したんですけども、そのトータルのところはまだ積み上げができておりませんので、どういう形かは別に、やってみるということはあるんですけど、この積み上げ計算をやるとなると、そう簡単ではないんですよ。すごい、これはおそらくは1カ月ぐらいはかかるかなというぐらいの作業じゃないかなと思いますので、ちょっと影響の大きいところからハイライト的にやってみたと。

 それともう一つ、ぜひともこれは世の中みんな農業所得というところをよく言いますけども、今回、私どもは改めてやってみて、特に家族経営体なんですよね。農家。そうすると、所得がいくらあったで終わりじゃなくて、そこから生計を立てていくのに十分な所得かどうか、というところをもっと先まで降りていかないと、本当は、これからの農業を考えていくとなったら、いけないんじゃないかということで、家計収支というところまで今回、拡張してみたわけです。

 その結果、関さん、三好さん、私のほうも、改めて、日本の農家というのは、これほど、関税撤廃の前から、私から言えば、関税撤廃の前から、これほど悪かったのかなというのを改めて感じて、それが関税撤廃でこれだけ激減してしまうと、これがもうちょっと農業を続けていくということは、もう決定的に、これはまず無理だろうなというふうに私は感じてしまいましたですね。

 ですから、それぐらいのつもりで、本当に今の日本のTPPに参加するとかしないとかということを、それは農業だけの問題じゃないということは、まったくそのとおりなんですけども、しかし他方で、足元の農業はどうなのかということですね。

 それを見るときに、TPPに参加することをショックとして、日本も改革のきっかけにするべきだとかということをよく聞きますけれども、私ども、こういう試算をやってみて、そういう議論自体が、非常に安直じゃないのかと。はっきり言えば。

 私はそういうふうな感想を持ちました。もっと足元の現実の姿をデータにもとづいて、直視する必要があるんじゃないか。そういう、軽々しく言うだけでは済まないんじゃないかなという現実があるというふうに感じました。まあ、そんな感想です」

記者「さきほども説明があったので、ちょっと確認にはなるんですけども、産業連関分析の中で、輸出の累計で1番、自動車の関税撤廃が10年から長くて20年というお話があったので、それを除くというお話でしたが、これは、輸出全体を除いてなのか、車の関税による効果だけを除いてるのか、というところの確認と、あともう一つ生乳の部分で、北海道、都府県の需要が北海道に置き換わるということは、一応今回の試算では反映していないというふうな前提でいいのか、確認させてください」

土居「最初の質問にお答えします。私も貿易統計、この3年間、TPP参加国11カ国の品目別、国別輸出の実績を見て、関税率も見ておりましたけれども、大半がアメリカ、カナダ、そして一部豪州によりますし、品目別には、よく言われますが、自動車、これが自動車が半分ぐらいですね。そして、機械、それから電気機械と。その3業種で8割9割近いウェイトを占めてます。

 ですので、しかもアメリカは、そのうち半数以上の金額を占めておりますので、やはりそこは、アメリカが変わらないと、日本の輸出は増えないだろうと。もちろん他の途上国等の発展もございますから、そちらのほうの東南アジアと東アジアとのメリットもあるかもしれませんけれども、そこはまだ市場規模が小さいということでございます。

 ですので、そういう量的な面から見ても、あるいは期間的なものから見ても、ここに同時に含めるというのは時期尚早。当面、輸入関税の撤廃のメリットデメリットに集中して計算するということに、今回、限らせて頂きました。よろしいですか?はい」

醍醐「その他、どうでしょうか?別に他、なければ同じ方、二度目でも結構でございますので、どうぞよろしくお願いいたします」

土居「私からひとこと。私の資料、表が非常に細かくて、情報量がちょっと多いもんですから、もしみなさんUSB等を持参されておられましたら、ファイルをお分けしますし、ここでコピーしますし、それからそうでなければ、ご名刺を頂きますと、私ちょっと帰ってからだと出稿に間に合わないかもしれないですけど、このエクセルのファイルを全部送りますので、お名刺いただければ、と思います。よろしくお願いいたします」

醍醐「その他、ございませんでしょうか?個別にこのあと、いろいろご質問等されることもあるかと思いますので、全体はこのあたりでよろしいでしょうか?今日は、ちょっと始まりがバタバタして、資料も不揃いなところがあったりいたしまして、大変ご迷惑をおかけしたかと思いますが。

 あと、今、土居さんがお話しましたけど、今日ここに出しましたバックデータ。これはかなり大量にございますので、ある程度絞って、バックデータもちょっと見たいというご要望がございましたら、メールでファイルベースのものをデータを遅らせて頂くことはいくらでもできますので、お申し入れいただければ、ありがたいと思います。

 それじゃあ、第三次の試算結果の発表の記者会見をこの辺りで終わらせて頂きたいと思います。お忙しいところ、今日は本当にありがとうございました」

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