日本・トルコの「復古主義の仮面を被った新自由主義」体制を批判 ~日本女子大学教授・臼杵陽氏インタビュー 2013.6.21

記事公開日:2013.6.21取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・安斎さや香)

特集 中東
※サポート会員ページに全文文字起こしを掲載しました(2013年8月9日)

 トルコは反政府デモの盛り上がりを見せ、シリアは内戦が長期化、米国の直接介入による泥沼化が懸念され、イランは核開発問題で揺れ動いている。中東諸国の緊迫した情勢について、21日、その専門家である日本女子大学教授の臼杵陽氏に、岩上安身がインタビューを行った。

 現在の中東情勢の背景について、エルドアン政権の「新オスマン主義」、トルコのアラブ民族主義運動、トルコ・イラン関係、「アラブの春」とトルコ・シリア関係、シリア内戦をめぐる米・露、周辺諸国の思惑など、話は多岐に渡った。

■イントロ

 臼杵氏は、トルコがイスラム化をしながら経済的には新自由主義路線を採り、その意外性が注目されていると語る。エルドアン首相が独裁体制へ向かおうとしていた時に、今回の騒乱が起きた。ここ数十年の歴史を振り返ると、周辺のアラブ諸国がイスラム化していく中で、トルコはアタテュルクの世俗主義を採ったため、トルコ人は嫌われてきたという背景を持つが、エルドアン政権になって、アラブのイスラム諸国における期待が高まってきたという。

 エルドアン政権は、貧困層のイスラム化を求める声に応じ、社会福祉政策を進めてきたが、一方で、その政策に恩恵を受けられていない、ある程度所得があり、高学歴な人々の不満が爆発、アタテュルク主義への回帰を主張したところにあることを示唆した。

 しかし、エルドアン政権の「新オスマン主義」は、超民族的なものとしてイスラムは歓迎したが、経済は新自由主義路線であった。これについて岩上は「復古主義の仮面を被った新自由主義」であると指摘。安倍政権が憲法改正において立憲主義を否定し、歴史認識の見直しをするなどの復古的な側面を見せながら、アベノミクスといった新自由主義的な経済政策を敷いていることと酷似する構図であると解説した。

 これについて臼杵氏は「グローバル化と国家のナショナリズム化は必ずしも矛盾しない。しかし、国内的な面で見ると、国民に対して抑圧的になっていく。イスラム化が悪いのではなく、国家がイスラム化を標榜して利用することが問題である」と宗教を政治利用する姿勢を批判した。

 「アラブの春」と呼ばれる中東諸国の民主化の動きに関しては、エジプトを例に挙げ、米国の介入を避けるためにイスラム過激派の母体であるムスリム同胞団が、党派性を出さず、背後で様子をうかがいながら親米従属的なムバラク政権を打倒することに成功したと解説。革命の波が周辺国に拡散していった理由として、若者のSNSを利用したデモがきっかけであったとしながらも、こうしたムスリム同胞団の賢い動き方が功を奏したと語った。

 シリア情勢については、アサド政権対反体制派、また、反体制派とクルドの武装勢力も地域的に対立しているという「三つ巴の状況」であることを示し、「結果的に宗派紛争ということになっているが、外国の介入によって、そのようなことになっている。シーア派、スンニ派、クルド人など、それぞれの宗派にアサド忠誠派がおり、一岩となっていない。それぞれが分断されてしまっている。どのぐらい権力との関係が近かったか、利益を享受したかで(アサド)忠誠派になるかが決まる」と解説した。さらに臼杵氏は、現シリア大統領のアサド氏が、その父であるハーフィズ・アル=アサド氏のようなカリスマ性がなかったことに言及。盤石な政治体制が崩れてしまった要因であるとした。

 続いてイラン情勢において、米国・イスラエルは、イランを大きな脅威と捉えており、その脅威をどう排除していくかを考えているという。その意味で、イランの大統領選で欧米との関係改善を唱えるロウハニ師が勝利したことは、イランを潰しにいくことができない都合の悪い状況であると解説した。

 今後の中東情勢の見通しとして、臼杵氏は、「大きな政治的な変化の中で、イラン・トルコ・エジプト・サウジアラビアといった国々の動きが帰趨を決めていく」と予測。欧米諸国がシリア内戦における反体制派を支援する中、「イランはロシアと手を結び、中国もロシアと共同歩調をとることで、内戦がさらに長期化するだろう」と懸念を示した。

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