2周年を迎えた第22回ロックの会~IWJ NIGHT~ 2013.6.9

記事公開日:2013.6.9取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月9日(日)20時から、東京都港区で「第22回ロックの会~IWJ NIGHT~」が開かれた。ロックの会は、松田美由紀氏、マエキタミヤコ氏、小林武史氏、岩井俊二氏、岩上安身を発起人として、2年前の2011年6月9日、第1回目が開かれた。記念すべきこの日は、IWJが幹事役となり、4つのテーマについて多彩なゲストを招き、クロストークを展開した。

■ハイライト

    <テーマとゲスト>

  • TPP:郭洋春氏(立教大学経済学部教授)、内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)、安部芳裕氏(作家、社会活動家)
  • 日米関係とメディア:堀潤氏(元NHKアナウンサー、NPO 8bitNews主宰)、想田和弘氏(映画監督)
    憲法 ~橋下市長の発言と慰安婦問題について~:梓澤和幸氏(弁護士)、澤藤統一郎氏(弁護士)、想田和弘氏
  • 被災者支援法:川田龍平氏(参議院議員)、後藤政志氏(工学博士、NPO APAST理事長)
  • 日時 2013年6月9日(日)20:00~
  • 場所 東京都港区

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 冒頭、IWJの安斎さやか記者が取材した、第17回TPPリマ交渉会合の映像を流しながら、内田聖子氏が解説をした。内田氏は「安倍首相は、TPPへの参加表明を3月15日に行なった。しかし、前回のシンガポール交渉会合(3月4日~13日)の際、すでに、アメリカの交渉官は『日本は参加する。TPPの条件にも合意している』と話していた」と明かした。

 続いて岩上安身が、TPPの先行形といわれる米韓FTAの実情を、郭洋春氏に訊いた。郭氏は「韓国は、2012年3月15日に米韓FTAを批准。4月、外国人医師が自由に働けるように、自由混合診療が始まった。6月には、アメリカのがん保険を売るために、韓国企業の新たな事業参入が禁止された。FTAで韓国に起きたことは、必ず、遅れて日本でも起きる。また、アメリカの高官は米韓FTAについて、『アメリカ企業が稼げるように、韓国の法律、習慣などすべて変える』とも言った。TPPも同様である」と述べた。岩上も「5月1日の米連邦議会の報告書にも、『TPPは米日FTA』だと書いている」と応じた。

 安倍芳裕氏は「1989年の日米構造協議、1993年の日米包括経済協議、1994年の年次改革要望書。鳩山政権がそれを止めたのだが、2011年に日米経済調和対話で復活した」と述べた。また、ISD条項について説明した。

 郭氏は「TPPの目的とは、大企業のための自由な経済活動と市場を作ること。そのためには、企業が人を殺せるような国であろうと、環境破壊をしようと許される、ということだ。すでに、ドイツでは原発を止めたため、ISD条項でスウェーデンの原発会社に訴えられ、賠償金を払っている。同様に、TPP参加後に日本が原発廃止を決めたなら、アメリカがISD条項で訴えるのは火を見るより明らかだ。最近、TPP推進派は『TPPに経済効果はない、安全保障だ』と言い始めたが、これは言ってはいけない言葉。安全保障とは、誰が日本を守るのか。つまり、アメリカだ。アメリカの言いなりになることと同じである」と警鐘を鳴らした。

 続いて、次のテーマ「日米関係とメディア」に移り、堀潤氏、想田和弘氏が登場した。想田氏は「20年前、アメリカに住み始めて感じたのは、資本至上主義で、あらゆることにお金が絡むこと。たとえば大学では、休講はもちろん、授業が短くなっても生徒が怒る。なぜなら、授業というサービスに対して対価(授業料)を払っている、と考えるからだ。そのような、お金中心のアメリカ的価値観が、日本にもじわじわと浸透して、今、アメリカが経済侵略しやすい状況になっているのではないか」と話した。

 堀氏は「なぜ、カリフォルニアのサンオノフレ原発を廃炉にできたかというと(6月7日に廃炉決定)、民主主義が機能したためだ。アメリカでは、情報公開が日本より進んでいる」と説明した。そして、アメリカ原子力規制委員会(NRC)が、放射能漏れ事故の原因になった水蒸気発生装置を手がけた三菱重工を抜き打ち検査し、コンプライアンス違反を発見した経緯と、その情報公開の実例を示した。堀氏が「日本では、反対を表明する時、その拳の振り上げ先がわからない。それは、情報が少ないからだ。まず、政府に対して情報公開のあり方を改善させなければならない」と語ると、岩上は「憲法改正となれば、さらに表現言論の自由がなくなり、情報公開がますます閉ざされる」と危惧した。

 続けて岩上は、堀氏にNHKを辞めた理由を訊いた。掘氏は「今のNHKは、残念ながら、以前のようなNHKではなくなった。トップは元JR東海社長の松本正之氏で、受信料を管理している経営委員会の半分は産業界の人々。産業界の傘下に入ると、自己規制が始まる。社内には(不都合なことに対して暗黙の了解を求める)『わかってるよね?』という空気が流れ、何事も無言のうちで決まっていく」と、NHKの変化や現場の同調圧力について語った。会場から、「わかってるだろうね、という空気を、どうやって改善していくのか」との質問があり、掘氏は「『わかりません!』と、大きな声を上げていくしかない」と答えた。
 
 次は、「憲法 ~橋下市長の発言と慰安婦問題について~」。梓澤和幸氏と澤藤統一郎氏の両弁護士が登場した。まず、澤藤氏が「私は、靖国問題を20年、最近では、2003年に石原都知事が決めた、教育現場での日の丸・君が代問題に関する裁判を手がけて来た」と自己紹介をした。続けて、「自由と民主主義、人権などを獲得するために憲法がある。しかし、自民党の改憲草案の前文には『日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。』とある。よき伝統とは何か。これは天皇を戴く国家、と読める。国民は、これを尊重しなければならない、と言っている。だから私は、これを『君が代憲法』と命名した」と懸念を表明した。

 岩上が「自民党改憲案は、戦前に戻ったような復古憲法。この狙いはどこにあるのか」と問うと、澤藤氏は「企業に万全の自由を与えること。それで貧富の格差が拡大し、明日への希望がなくなり、国民は分断する。すると自民党は、このバラバラになった世の中をまとめる手段として、天皇的なものを中心とした国家、権威主義的な国家を見せつける。そういう天皇制的な秩序を推し進めなければ、新自由主義的な国家が作れないからだ」と説明した。

 次に、梓澤氏が『蟹工船』を書いた小説家、小林多喜二の公権による虐殺について熱く語り、「現行憲法36条には拷問を『絶対に』禁止する、とあるが、自民党の改憲案では『絶対に』を削除した。また、表現の自由を保証する第21条について、第2項を新設し『前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。』と書いている。現行憲法では、随所に『公共の福祉』という言葉が使われている。福祉と秩序の違いは何か。福祉とは幸福、秩序とは全体のこと」と説明し、自民党改憲案には全体主義が色濃く表れていることを指摘した。

 想田氏が「マスコミは憲法9条ばかり話題にして、人権や表現の自由については隠している。一人ひとり、とにかく声を上げ、発言していくこと」と話し、新作映画『選挙2』の撮影中に起きた自民党の候補者とのトラブルを語った。「相手からは、その映像を使うな、という圧力があったが、それに屈したら、表現の自由を保障している憲法を、自分が形骸化することになる。それはできない」と力を込めると、会場から拍手が起こった。また、想田氏は自民党改憲案に新設された「第9章 緊急事態」の項目について、「総理大臣が緊急事態を宣言すれば、法律と同一の効力を持つ政令を出して、やりたい放題ができる。とても危険だ」と問題視した。

 「被災者支援法」のテーマに移り、川田龍平氏と後藤政志氏が登場。行き詰まっている、子ども・被災者支援法の現状について、川田議員は「全国を講演して回るが、支援法のことは、ほとんど知られていない。超党派で提出し、そこには自民党議員もいたのだが、今、大臣になってしまい、枷がはめられた。政府与党とマスコミは、ひた隠す。この構造は、薬害エイズとまったく同じである」と語った。そして、「世論には、本当に力がある。今度の参院選は、子どもたちの命がかかった大事な選挙だと知ってもらいたい。この法律を、皆さんの声で機能させてもらいたい」と訴えた。「国民は、どうしたらいいのか」という質問に対して、川田氏は「ひとりでも多く、声を上げてほしい。政府が、国民の声を無視できないようにしてほしい」と応じた。

 東芝の原子力格納容器の開発者であった後藤氏は、3.11以前は匿名で、福島第一原発の事故以降は実名を明かして、原発の危機を訴え続けている。「最近も、福島第一原発の汚染水漏洩があったが、そこで、東電が今まで線量計測の方法を間違えていたことが判明した。原子炉を扱う当事者が、放射線の計測をまともにできないなど、国際的には完全にアウトだ。われわれは、放射線を永遠に計測しながら生きていく社会にしてしまった。原発は生存権を脅かす。これはある意味、生存権の侵害問題だ」と述べた。

 岩井俊二氏が「今、日本が国粋主義的な方向に進む理由がわからない。どこと戦うというのか。アメリカと中国は、すでに仲が良い。そのうち、日本は彼らの仮想敵国にされそうだ」と話すと、岩上が「今の日本は、ピエロ役をやらされている。一方でグローバリズム、他方で国粋主義。どうやって成り立つのか。これからは国民が分断され、国際資本家だけが儲かる社会になる。そして、格差社会の中で貧困層の不満の矛先を、中国や、在日韓国人・朝鮮人に向けさせて、大きな問題を隠そうとしている」と語った。

 最後に、川田氏が「国は、広域がれき処理の予算から39億円をマスコミ対策に当てた。あるラジオ番組で、がれき問題に取り組む弁護士を呼ぼうとした途端、環境省が、すぐにスポット広告をつけて圧力をかけてきた。そういう検閲じみたことが実際にある」と明かした。その上で、「企業の利益や効率優先のあまり、この国では、命をつなぐことが危うくされている。自然界を含めて、命が最優先される社会を」と訴えた。

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