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特集:TPP問題

 2013年4月10日(水)、東京都千代田区の参議院議員会館で、「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」主催の記者会見が開かれた。会見には、同会の呼びかけ人で東京大学名誉教授の醍醐聰氏ら6名が出席した。醍醐氏は、詰め掛けた多数の記者を前に、同会が発足した経緯を説明した。3月下旬からの呼びかけにもかかわらず17名の大学教員が呼びかけ人に名を連ねていることや、9日に安倍総理あてに提出したTPP交渉参加を撤回するように求める大学教員の署名が、839名に達したことなどを詳細に述べた。

 また、教員から寄せられたTPP問題に関するメッセージについて「私の予想をはるかに超えていた。TPP参加は『アメリカの属国』になるという意見や、TPPとは『日本の国家主権の上にアメリカの大きい外国企業を置く』、そういう本質を持つものだという意見が非常に多かった」と述べた。
※現在公共性に鑑み、記者会見の詳細テキスト要約を非会員向けに公開中です

■出席者
 伊藤誠氏、大西広氏、金子勝氏、鈴木宣弘氏、醍醐聰氏、萩原伸次郎氏

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 醍醐氏は、詰め掛けた多数の記者を前に、同会が発足した経緯を説明した。3月下旬からの呼びかけにもかかわらず17名の大学教員が呼びかけ人に名を連ねていることや、9日に安倍総理あてに提出したTPP交渉参加を撤回するように求める大学教員の署名が、839名に達したことなどを詳細に述べた。また、教員から寄せられたTPP問題に関するメッセージについて「私の予想をはるかに超えていた。TPP参加は『アメリカの属国』になるという意見や、TPPとは『日本の国家主権の上にアメリカの大きい外国企業を置く』、そういう本質を持つものだという意見が非常に多かった」と述べた。

 その後の会見では、記者からの「TPP推進派との公開討論の予定はないのか」という質問に対し、醍醐氏が「反対派だけがこういうふう(反対集会等)になっていることは世の中としても良くないのではないかと思う。むしろ(推進派と)正面からぶつかり合う議論を是非ともやる必要があると思っている」と応じ、さらに「名前を挙げて失礼かもしれないが、私は自分の同僚だった伊藤元重さんとか農業の本間(正義)さんに、ぜひ公開討論会に一度来ていただき、その上でご自身が確信を持っていることを述べていただきたい。例えば、伊藤さんは『TPPに参加することによってGDPの半分ぐらいは押し上げる』と言っているが、私は彼に会ったら、『その根拠はどこから出てきているのか』ということをぜひ聞きたいと思っている」と、記者会見を通じて公開討論への参加を呼びかけた。

 また、横浜国立大学教授の萩原伸次郎氏は、「日本政府は、『聖域』について、どこまで守るのか、どの状況なら撤退するのかということまで具体的にきちんと詰め、TPP交渉に臨むスタンスを明らかにし、展開していくことが非常に重要」と述べたほか、「TPPは、すべての関税を撤廃するというのが基本である。一時的に『この分野で例外を認める』という話をしても、基本的には全部撤廃するという形で進んでいく。交渉に臨む安倍首相は、どういうところ、どこを守るのかということを、抽象的ではなく具体的にきちんと明らかにし追及していかないと、ずるずるとこのまま進んでいく危険性を持っている」と警鐘を鳴らした。

 その後も、TPPの問題点を指摘する様々な意見が出た。会見の要旨は下記の通り。


会見要旨

◆醍醐聰氏(東京大学名誉教授)
・ この会は3月下旬に急遽始まった。短期間にもかかわらず、呼びかけ人には17名が名を連ねている。各自それぞれTPPについて様々な研究をし、社会的発言を繰り返してきたが、全国規模の大学人による取り組みは初めてだと思っている。

・ TPPに関する世論調査を見ると、私たち大学人や研究者が感じている問題点が、国民に本当に十分に理解されているのか、非常に危惧を持っている。医学系・社会科学系を問わず、各分野の教員が不安に感じている。

・ もっと大学人として社会に向かって発言していかなければいけないんじゃないかという思いに駆られた。いろんな方々にお声をかけたら、皆さんがぜひやりましょうと言う意見ばかりで17名の呼びかけ人が広がっていったという状況。

・ 全国の大学教員に、安倍晋三首相宛の「TPP参加交渉からの脱退を求める要望書」の提出について賛同を呼びかけた。9日午後2時に内閣官房大臣の総務課の佐野美博氏という担当者に面会し、賛同署名とメッセージ集を提出した。面会時のやり取りを記したメモを添えて、今日官邸に届けられるとのこと。

・ 要望書およびメッセージ集は林芳正農水相宛にも届けた。農水省の国際経済課WTO交渉担当室の担当者3名に応対いただいた。

・ 要望書の賛同者は、4月8日24時までで822名。呼びかけ人17名を含めて839名。メッセージ集は381名。賛同者は引き続き増えている。

・ 教員各位からの意見は、私の予想をはるかに超えていた。あいまいな言い方ではなくズバリ、TPPとは「アメリカの属国」になる。「日本の国家主権の上にアメリカの大きい外国企業を置く」そういう本質を持つものだという意見が非常に多かった。

・ TPP問題について、国民に対し熟知・理解を呼びかけていく。それによって世論調査が本当の意味の民意に近づいていく努力をする、大学人はそういう社会的使命を負っていることを非常に痛感している。

・ 今回の賛同者の分野が、農業だけということは全くなく、社会科学系でも憲法から民法から行政法、公法にまで及んでいる。理系においても、物理学など全領域を網羅しているのではないかと感じた。

・ それぞれの方のメッセージはご自分の分野の専攻に基づいた意見もあるが、それをはるかに超えて、ひとりの大学人として何かを言わないといけないという非常に切羽詰った思いの方々が非常に多いということを痛切に感じた。


質疑応答

◆ <質問>日本農業新聞
・ 反TPPで孤軍奮闘してきた数少ないメディアのひとつとして、今回の先生方の健闘に援軍を得た。敬意を表したい。先生の教え子である学生も巻き込んで、大きな運動にしていただきたい。

・ 質問。具体的な運動方法や展開戦略。まもなく、会は1000名規模になると思うので、1000名で全国紙に意見広告を打っていただきたい。よりメッセージ性の強いメディア対策を考えていらっしゃるか?推進派の学者を交えたと公開討論。きちんと論点を明確化しながら国民に選択肢を与えていく。そういう公の公開討論会といった仕掛けを考えているのか?他のネットワークとの連携は?反TPP統一ネットワークのような。

【関連記事】2012/04/04 「いまだ知られざる壊国TPP」 日本農業新聞 緒方大造編集局長 インタビュー

◆金子勝氏(慶応大学教授)
・ 公開討論はすでにやっている。個人的には推進派の学者の方と公開で何度も討論しているので、引き続きやっていきたいと思っている。

・ 推進派との公開討論。最後なんかいつも「日本は行き詰まっている。TPPに入ってショックを与えないといけない」というところに落ち着く。いつもオチは決まっていて「小泉さん、散々失敗しているのに、まだやるの」っていうので終わっちゃうのが大体のパターン。

・ 小泉構造改革の時よりも一段と危機感を多くの人が、法律の学者も含めて加わってきているのは、多分メディアの「農業がどうなる」とかいうところに非常に関心があって、これ当然のことだが、ある意味では。

・ TPPの交渉の枠組みに関して、もう少し広く法律の学者も含めてやっていったほうがいいと考えている。

・ 現時点ではアメリカ大統領には包括的な貿易交渉をする権限は全くない。国内法のルールとは矛盾することは一切言えない。だから交渉参加の自民党6項目は全く、一切、何の担保もされていないと考えた方がいい。

・ 最終的には議会が決定するので、2国間の場合の事前協議でほとんどグリグリ詰められて結局アメリカの議会で通りやすい、つまりアメリカの国内法やルールに準拠したものを作っていきたいというのが今のTPPの本質。

・ 「例外がない、非常に限られている、例外以外は基本的に自由」という考え方。他もアメリカの国内法に準拠しやすいようなルールになっている。

・ ISD条項を使ってアメリカの世界的な企業が訴訟を起こしていったときに、我が国が国内の法律を決めてきたり、安全基準を積み上げてきたり、医療制度を作ってきたりというような、根本的なものを我々の積み上げてきた努力や制度が、将来的なある時点で全部水疱に帰すことが起きかねない。

・ 小泉構造改革はアメリカの真似。要するにアメリカの要求のある部分を真似してやっているだけだが、ちょっと次元が違ってきているということに対する非常に深い危惧が広がってきているのだろうと思う。

・ そこのところに対する注意喚起というのがあまり十分でないまま、交渉で異常に表面的に、もともと交渉の6項目も「聖域なき関税撤廃」というのにすりかえている。しかもそれも何の担保もないような状況になっている。

・ この現状を考えると、どんどん本質の一番危ない、ナショナリスト、あえて挑発的な言い方をすれば売国者。非常にこれは、日本の法体系や国のあり方の根本を揺るがしかねないような条項。やはり冷静に国の針路というものを。少なくとも日本の中でこういうものが妥当かどうかということに関してきちんと議論をなされて欲しい。

・ アメリカのルールに従ったほうがいいという、アメリカの裁判所で決めてもらった方がいいという価値観の方がいることは確かだし、一つの意見として存在していいと思うが、別の考え方が存在する。国の針路のあり方をきちんと議論をなされて欲しい。

・ 大規模化する、農業にしても医療にしても、何か改革をすれば済むという次元ではない。ぜひ地方の山間部を歩いて、耕作地を見れば、だいたいみんな段差があってこういうもの50ヘクタールまとめたら1人でやっていくことは無理だし、人雇っても機械を入れても無意味な状況。

・ 意味のないような、一見改革みたいなことを言っても現実的なことではないので、現実的に起きることに関してもう少し検証し、どのくらい本当に日本の利害関係、社会や経済を守っていくのかということに関する冷静な議論をしていくべきだと思う。

・ 僕は「知識の安売王」と呼ばれているが、知識やデータやいろんなものをきちんと備えた人たちがいるので、そういう人たちがきちんと議論の中で何らかの役割を果たしていければいいなと希望している。

【関連記事】2011/10/20 第9回 TPPを慎重に考える会 勉強会 【登壇者】金子勝氏(慶応義塾大学教授)

◆ 大西広氏(慶応大学教授)
・ 呼びかけ人の中に進藤栄一先生(筑波大学名誉教授・国際政治学)は国際アジア共同体学会の会長。この学会はかなり突っ込んだ議論をしている。私も役員をしている。5月12日に専修大学で丸一日、午後にTPPのセッションを行う。私が総合司会をする。そういう形で、大学人の中でも、議論はかなりあるということを補足しておきたい。

◆ 醍醐氏
・ 私は、反対派だけがこういうふう(反対集会等)になっていることは世の中的にも良くないんじゃないかと思う。もっとオープンに、むしろ正面からぶつかり合う議論を是非ともやる必要があると思っている。

・ 先程、公開討論会をやる気はないのかという質問があったが、私は大いにやりたい。しかし、反対派が司会や音頭を取るのは推進側に嫌がられるので、メディアの方などに公正中立に担当をお願いしたい。

・ 名前を挙げて失礼かもしれないが、私は自分の同僚だった伊藤元重さんとか農業の本間(正義)さんとかに、ぜひ公開討論会に一度来ていただき、その上でご自身が確信を持っていることを述べていただきたい。

・ マスコミの方に一方的に独演できる場だけではなくて、反対派に向かってぶつかり合う議論にぜひとも出てきていただいて、その上でご自身の確信を持っていること、例えば伊藤さんが、「TPPに参加することによって、GDPの半分ぐらいは押し上げる」と言っているが、私は彼に会ったらぜひ「その根拠、半分ぐらいは上がると言っている根拠はどこから出てきているのか」ということをぜひ聞きたいなと思っている。個人的に聞いても意味がないので、多くの方が見ている場でそういうやりとりをしたいと思っている。

・ 政府の影響試算について、大学人のチームによる共同研究として、政府試算あるいは各自治体のやっている試算を是非とも検証してみたいと思っている。先日、農水省のWTOチームにその話をした。あの政府試算は、関連産業の部分についてWTOモデルを使っているというが、日本では「川下は影響試算に入れていない、川上だけしか入れていない」という話を農水省のWTO担当から聞いた。

・ 農業の生産額への影響調査も不十分。財政検証をやらなければいけない。生産額減が農業・流通・販売・それに関連した産業の各事業者の所得にどんな影響が出るのか、その所得がそれぞれの自治体、例えば北海道の、例えば地方税収入の中の最低限、所得割の部分にどんな影響が跳ね返ってくるのかということは、研究者としてきちんと検証する必要がある。かつ、その自治体の地方税収が動けば財政力指数が動くから、地方交付税の基準財政需要が動く。そうなれば国の財政にもじかに関わってくる。このように、研究者は流れの中で農業問題だけではないということも情報提供すべきである。



◆ <質問>朝日新聞
・ TPPは論点が非常に幅広い。皆さんはどのジャンルを重視することになるのか。

◆ 鈴木宣弘氏(東京大学教授)
・ 1点目は聖域の問題。農業で言えば834品目全体の1割の品目が聖域。これが維持できるっていうことは基本的にはありえない状況である。聖域をどのように交渉の中で実現するのか。実現できない場合にどう対処するのか。途中で撤退も辞さないと言っているのは本当なのか。ここを検証しなければならない。これ以上嘘を上塗りすることは許されない。

・ 2点目の問題。すでにアメリカから頭金、入場料としての規制緩和要求が自動車、保険、その他の非関税障壁として食品の安全性についても、さらに緩和を求められているということについて、2年間も国民や国会議員を騙して裏で交渉してきた一部の官僚がいる。先日の共同声明で公然の秘密になったにもかかわらず、最終段階でアメリカから頭金の上乗せを足元見られている状況で、どこまですでに国民の生命や暮らしを守るルールを差し出しているのか。これを言わざるを得ない状況なのに、これが示されないままでいいのか。このことをぜひきちんと検証しなければならない。

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◆ 萩原伸次郎氏(横浜国立大学教授)
・ TPP問題で取り組みが難しいのは秘密交渉で進められているということ。アメリカ政府は議会に対して日本の参加を認めてくれと言い、今度は議会が審議するので時間がかかる。どんどん交渉が進んでいく。

・ 日本政府は「聖域がある」と言って入っていく以上は、どこまで守るのか、どの状況なら撤退するのかということまで具体的にきちんと詰め、TPP交渉に臨むスタンスを明らかにし展開していくことが非常に重要である。

・ TPPは、すべての関税を撤廃するというのが基本。一時的に「この分野で例外を認める」という話をしても基本的には全部撤廃するという形で進んでいく。その辺を交渉に臨む安倍首相は、どういうところ、どこを守るのかということを抽象的ではなく具体的にきちんと明らかにし、追及していかないと、ずるずるとこのまま進んでいくしかないという危険性を持っている。

◆金子氏
・ TPP交渉に関し、すべて議会で決めなければいけないのはアメリカだけ。今やっている事前協議交渉は議会向けでやっている。アメリカの国内法に矛盾することはアメリカ大統領にはできないという状況。

・ 貿易交渉には「ネガティブリスト方式」と「ポジティブリスト方式」がある。ポジティブリスト方式は自由化項目をお互いに話し合って明示されるのでわかる。ところがネガティブリスト方式の場合は、例外を挙げたら後は基本的には自由なので、例外をとにかくたくさん上げない限り、全部それはアメリカ側のルールに従っていってしまう危険性を持っているというところにTPPの本質がある。

・ ISD条項。農薬、食品、自動車、排ガス規制など我々が先進的に取り組んできた安全基準が全部フイになってしまう。巨額の賠償金まで我々がアメリカ企業に払わなければいけない。とんでもないことが起きる。

◆ 醍醐氏
・ TPPによる規制緩和の波及効果が日本の経済界の大きな関心事。産業競争力会議。日本の経済界にとってもウェルカムであるということがすでにテーブルに乗っている可能性が非常に高いと思っている。

・ 薬価制度や医療分野。ドラッグラグ(医療用薬剤の所得格差)を解消するために新薬の値下げを定期的にやっていくやり方では競争力がそがれてしまうと。これはアメリカの製薬資本の言い分であると同時に、国内メーカーもまさにそう。

・ 内外一体で規制緩和を要求してきている。一つの大きなターゲットが医療分野、薬価分野、ジェネリック医薬品。その普及を止めたいということ。この分野についてもっと研究者は発言していく必要がある。

◆ 鈴木氏
・ TPPのような、ごく一部の人々の利益を拡大する方向性を進め、規制緩和を徹底や一部の人に都合のいいルールを作っていくことが、社会の均衡ある発展や幸せな社会に繋がるのか、研究者として検証せねばならない。

・ 小泉改革から始まった「規制緩和をすればすべてうまくいく」というような流れで、様々な格差社会の問題も出てきている。これ以上進めたら国民が苦しむ。世界にこれが波及したら、世界の将来は非常に厳しくなる。TPPのようなものを進めて、アジア太平洋地域に広がっていくということが、本当にアジア太平洋地域の今後の将来の経済や社会を壊していくのだということを、きちんと検証するのも研究者の大きな役割だ。

・ その点について、そういうふうな流れを絶対視する皆さんに対して「そうじゃないよ」と「これからの社会の、世界の将来像というのはうまくいかないんだよ」ときちんと検証し論証し示していくということを我々は総力を挙げてやらなきゃいけない。

・ TPPではなく、アジアの国々を中心とした、もっと柔軟で互恵的なルールを作ることの方がTTPに比べて、よほど日本国民やアジアの人々の均衡ある発展と幸せに繋がるということをきちんと示すかが問われている。

◆ 金子氏
・ 大学教員が果たすべき役割ということで言えば、例えばTPPになったら安い薬が入ってくるというような報道が一部あったりだとか、その不正確な情報を正すということが役割である。

・ 製薬業界。巨大な企業を維持するには次々と創薬をしないと利益が出ない。他方、インドの製薬会社がエイズの安い薬を作るというような形で、利益が落ちてきている。そこで知的所有権の期限を長くして薬の値段を高くする。

・ 医療や医薬品関係でグローバル化しているといわれるが、製薬業界として競争力が高まっているのではなく、2010年に日本の医薬品の特許がどんどん切れたことが関係。

・ 薬の値段を上げて薬の開発が進むのか。進むことはない。むしろ、今まで新薬がしばらくすると価格を落としていくことでもっていた保険財政が圧迫されるようになる。韓国でもそういう問題が起きている。

・ アメリカの認可ルールをそのまま日本に当てはめた場合。ネットで薬を販売する際、アメリカは保険がないので、成分比率が高い薬がたくさんある。規制緩和して麻酔事故と同じようなことが起きる可能性がある。

・ 私たちは、特定の業界や特定の国の利害ということに縛られることなくフェアに効果を検証することができる立場。だから大学教員というポジションがあるはず。そういう役割を果たなければいけないと思う。

・ 例えば生命保険会社系のエコノミスト、一般論だけども、すべての人がそうだと言っているわけではないではないが、医療や介護の規制緩和をしょっちゅう言う。そういう保険外診療や混合診療を増えてきたときに、アメリカの保険会社の方がはるかに上手。日本の生命保険会社だっていわゆる入院や健康保険関係外のところでいわゆる医療、民間の医療保険市場が拡大するという目先の利害へ行ってしまえばそういうことに賛成してしまう。だけど我々は、保険はどうなるのかとか医療がすべての人に行き渡るのかとかシステム全体の合理性を考える立場にある。そこのところをできるだけフェアな情報として、立場を生かしてやっていくということが私たちに課せられている役割なんじゃないかなと私は考えている。



◆人権NGO「言論表現の自由保護の会」
・ 昨年、国連の経済社会理事会特別協議会資格を取得した。これはTPPの問題は極めて人権の問題だということを当初から私は問題だと思ったけれども、今回このような会を立ち上げていただいたことに大変励ましを受けている。

・ 私たちはもっとこういう経済的な問題よりも、言論表現の自由、特にイラク戦争のあと、言論弾圧事件が次々と続く中でとにかく戦前の状態になっているということで国民に対してロビーを始めた。

・ 質問したいのは、TPPが日本の法律、日本が批准している国際人権条約の何に、どの条項に違反しているのかということの指摘が見受けられない。大変たくさんの国際法学者や憲法学者の方が名を連ねていらっしゃるけれども、日本がまだ国際人権条約を批准して世界人権宣言に基づいて国連の審査を受けているにもかかわらず、個人通報制度を批准していないがために全く法的に、持たせていないというか、裁判所がみんな却下している。やはり今政府がやるべきことは経済のグローバル化の中で国際人権規約、個人通報制度を批准することが待ったなしだと考えているわけである。それをしないがためにこれは個人通報制度が子どもの権利が備わっているので、個人通報制度を批准して日本の法の独立、司法の独立をすることがとにかく大事だと思うが、それがなされていない中でこういう運動する上では、どういう法律に違反しているのかということをきちんと国民にも明示することが大事ではないかと思う。なので、現在の段階でTPPは日本のどの法律に違反しているのかどういうふうにお考えか?

・ 私の考えでは、国際人権規約、世界人権宣言、社会規約、人権規約A規約、B規約・・・明確に違反すると思う。やはりこのことをきちんと運動の中で固めていくことが必要じゃないかと思うが?

◆醍醐氏
・ 主催は私たちの会だが、せっかくご専門の岩月先生という弁護士がいらっしゃるので、ここでは私たちからの要望でコメントをいただくという形にさせていただきたい。

◆ 岩月浩二氏(弁護士・TPPを考える国民会議世話人)
・ 国際人権規約を持ち出すまでもない。

・ 韓国法務省が米韓FTAを締結する際に、どのような国政に対する影響があるかということで、NAFTAで提訴されたISDの規定を集めた。勝った負けたはともかくとして、韓国法務省が出した結論は、あらゆる政府、地方政府、政府が投資している例えば独立行政法人の作為・無作為が提訴の対象になるという結論。どんな政策を採ろうとも、その際には外国投資家から訴えられるリスクがあるのかないのかまず考える。訴えられた場合に負けるかどうかをもう一度考える。負けた場合にはそのリスクを取ってでもその規制を広めていくべきか考える。こういうふうになってしまう。韓国の法務省の見解。

・ 国権の最高機関は国会。憲法41条に書いてある。ところがその国会が外国投資家の利益を害するかどうかを考えなければならなくなる。それは国会がなぜ国権の最高機関か、国民主権の原理に基づく。国民主権に基づいて国会が最高機関としてあるにもかかわらず、その国会は「投資家裁判所」のもとに置かれることになる。これは明らかに国権の最高機関という憲法41条の規定を害することになる。

・ あらゆるものが「投資家利益を害さないかどうか」になる。例えば表現の自由であれば、投資家の利益を害さないかどうか、特に知的財産権の強化が言われて、著作権、言論の中で著作権違反は、今は著作権者が告訴しないと罰せらないが、監視していて著作権違反があると思えば直ちに逮捕できるという制度にしていくわけだから、憲法21条の表現の自由と真正面からぶつかると私は考えている。

・ TPP下の憲法。『投資家対国家紛争機関』に従う限りにおいて我々は自由である。『投資家対国家紛争機関』に従う限りにおいて司法は独立している、というような馬鹿げた状態になるというのが私が持っている結論である。

【関連記事】2013/04/11 「ISD条項はクーデターに近い」~TPPの危険性について、その本質を議論する―岩月浩二氏インタビュー

◆醍醐氏
・ 今の話を突き詰めて考えれば、TPP協定を日本が締結となったら憲法改正をしとかないといけないというような議論にすらなるというふうに私は理解している。

◆金子氏
・平成の不平等条約・・・

◆人権NGO
・ 一つお願いがある。そちら様からもご発言があったが、4月30日には、ジュネーブにおいて、国連の社会権規約の問題で第三回社会権規約日本政府報告審査が行われる。これは12年ぶり。今日本で法学部でも必修とされていない。79年に批准している。これを全く、大学も憲法学者の先生も、遵守義務を謳っている、日本が批准している条約をきちんと理解されていないということ。人類普遍の基本的な人権を保障しているもの。それを裁判所の中でも活用されない、弁護士の先生も司法試験の中にもない、修習生もたったひとコマ2時間しか講義を受けていない。だから、この状態を一気に打開すること、そのためには言葉の壁があるということ。このTPPも英語。この英語で日本人、国民にちゃんと説明していないものを何で加盟しているかということを、やっぱりそのことも大変大きな問題だと思うので、やはり国連での審査の時も必ず同時通訳で日本語の通訳がつく。日本の審査をやる時には。ドイツでは国連・・・

◆醍醐氏
・ すみません。ちょっとこれ記者会見なので、お考えはまた聞かせていただくとして、一応、質問という形であれば。意見表明は控えていただきたい。

◆金子氏
・ 今おっしゃっていることって3つあると思う。アメリカの様々な要求の中にあるアメリカの国内法に準拠したようなルールの強制みたいな面がひとつ。すでに日本が行っている様々な規制やルール法律的に決まったものとの関係が問題。

・ 例えば遺伝子組み換え食品の表示ルールなんかでも国際的な基準、法律ではなくても、国際的な基準やそれを受け入れている先が今までとの関係でやはり問題になってくる。というふうにいわゆる、アメリカンスタンダードとずれている国際ルールもある。世界的に承認しているルールは複数ある。

・ 国連レベルでしっかりと合意されているけれども批准していないもの、ILOから何からあるわけだが、3者の関係を整理していくということはおっしゃる通り大事だと思う。

・ 自動車、農薬の安全基準、政府調達、各種共済、医薬品の取り決めのルール、保険制度など各国ごとに独自のルールを持ち各国ごとに独自の国会承認を得てできてきた法律のプロセスがTPPによって簡単に飛んでしまうというようなことを我々は憂いている。

・ 農業の関税の問題も政府には本当に毎年3兆円、4兆円出す覚悟もないのに空手形を打って農業が壊滅的な打撃を受けるというような産業や関税っていう問題も非常に重要な問題。

・ ことほど左様にあらゆる領域にわたって、24の領域に渡ってそこで決められたルールが、国際的に承認されたものと、日本の国内の法律とその3者の関係が一体どういう形でズレていて、それがどういう形で影響を与えるのかということについてきちんとこれから、情報が限られているが、たくさんの情報を発信していければいいなと考えている。

◆ 大西氏
・ 選挙の時に「TPPに参加しない」と言って勝った政党がTPPに参加するのは、具合が悪いのではないか。仮に利益を得る側にとっても、私は選挙の時に自民党が何を言ったかというのは大変大事な論点だと考えている。

・ おっしゃった論点は私にとっては、情報がゆがんでいるということもかなり大きな問題。なぜ情報がゆがんでいるのかというと、ある者たちが情報を握っているから。日本に流れている情報を。そのあるものというのは、結局これで利益を得る連中。

・ TPPによってすべての人が不利益を得るというのも確かに大事な点、例えば安全基準で「たまらんもの」を食べさせられるわ、我々全員が消費者だから不利益が出る。これも大事な点だが、ある者たちが自分の利益のために推進しているという側面もある。

・ 不利益を得る人と利益を得る人がいるというこの構造も一方の事実であって、その利益を得る者がいるということ、だからそれも一方の事実だと思う。しかし、いかに利益を得たとしてもこれが一つの論点だと思う。

・ もう一つは、その利益を得る者たちというのはアメリカの大企業、日本の輸出企業だと思うが、その者たちがその者の利益のためにこの情報を握って日本国全部を動かしても良いのかどうかということ。

◆ 伊藤誠氏(東京大学名誉教授)
・ お願いがある。短目にお願いしたい。こんなにたくさんのメディアの方がいらっしゃっていただいている。ありがたいと思うので。情報は国民の判断の基になる大変重要なもの。民主主義の要。TPPへの大学教員の憂慮、情報が非常に欠けている、秘密主義の交渉は心配だという意見が多いということをバランスよく皆さんにお伝えいただきたい。

◆醍醐氏
・ この後どうしていくんだという質問がよく出るが、たいてい取材される側が具体的なことをお答えできる用意がないというのが一般的だが、私達もそうかなと思う。

・ ただ、あえて申し上げればこの要望書の最後の2行に書いてあることをお読みいただきたいと思う。「私たちは今後、国民各層、各団体と連帯して、日本政府にTPP交渉から脱退することを求める運動を続ける意思を共有していることをお伝えします」。この言葉で私たちの意思をお汲み取りいただければありがたいなと思う。

【IWJテキストスタッフ・久保元】

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