IWJ代表の岩上安身です。
ウクライナ情報総局のキリーロ・ブダノフ局長が、昨年8月にウクライナ軍がザポリージャ原発に攻撃をかけたことを、ウクライナメディアのインタビューで認めました。「ロシア軍が、自軍が占拠するザポリージャ原発を攻撃しているというウクライナ側の主張は不合理」と指摘し続けた岩上安身とIWJの報道が正しかったことが証明されました。
ウクライナ国防相情報総局(GUR)のキリーロ・ブダノフ局長が、昨年8月にウクライナ軍がザポリージャ原発(ZNPP)に攻撃をかけた作戦の詳細を明らかにした、とウクライナメディア『ニュー・ヴォイス(NV)』が9日付で報じました。
『NV』は、8日にブダノフ局長にインタビューし、ウクライナ軍が展開してきたいくつかの軍事作戦について話を聞いています。その中で、ブダノフ局長は、ザポリージャ原発攻撃の目的と作戦の概要、そして失敗と成果について語っています。
『NV』は、GURとウクライナ軍事指導部は、昨年、ザポリージャ原発に対して数回の軍事作戦を行い、ロシア軍の占拠から解放しようとした、と記しています。
「ウクライナの諜報機関は、ザポリージャ原子力発電所がロシアの送電網に接続されるのを阻止するため、数回の軍事作戦を実施した。
昨年、ウクライナ軍事指導部は、エネルホダル(※ザポリージャ原発がある市の名称)とザポリージャ原子力発電所(ZNPP)の解放に尽力した」。
『NV』は、以下のようにブダノフ局長の発言を要約しています。ブダノフ局長は、ロシア側が、ザポリージャ原発をクリミアとウクライナ南部への送電網に接続しようとしていたため、それを妨害することと、ザポリージャ原発をロシアから解放することが目的だったが、ロシア軍が優勢で撤退せざる得なかった、と述べています。
「最初の作戦は2022年8月に行われ、GURの特殊部隊が、当時満水だったドニプロ川のカホフカ貯水池をボートで横断し、エネルホダルに接近した。 この作戦に参加したGUR特殊部隊・シャマン部隊のヴォロディミル司令官(仮名、匿名を条件に『NV』の取材に応じた)によると、彼らの目的は、左岸に橋頭堡を築き、その後の同市と隣接する原子力発電所の解放に備えることだった。
ロシアが、クリミアを含むウクライナ南部にエネルギーを供給するために送電網に接続しようとしていたのは、この原発だった。(接続すれば)、モスクワがこの地域で足場を築くのに役立つだろう」。
「2022年8月、数十人の兵士が民間のスピードボートで川を下っていた(当時、GURは特別な軍用ボートを所有していなかった)。
兵士たちはエネルホダール付近に上陸したが、足場を築くことはできなかった。ドニプロ川の左岸で半日を過ごした後、敵の優勢な部隊の圧力で撤退を余儀なくされた」。
ブダノフ局長は、この「エネルホダル作戦」で、3回上陸を試みたと述べ、「管理面でも実行面でも欠点があった」ことを認めている、と『NV』は書いています。
「『(この作戦を遂行するのは)彼らにとって心理的に困難だった』と、ヴォロディミルは言った。
『夜間に波打ち際を航行するため、ボートに水があふれ、それをすくい上げ、他のボートに乗り換えなければならない』
その後、GUR軍はドニプロ川左岸への上陸を2回試み、最後の上陸には数百人が参加した。(略)
『エネルホダール作戦は、指揮官から兵士に至るまで、すべての人に水上作戦の実践的な技術を教えた。たとえば、クリミア上陸作戦のときなどだ』」。
ブダノフ局長は、3回の上陸作戦は失敗だったが、結局、ロシア側はザポリージャ原発を「自国の送電網に接続する勇気はなかった」と述べ、「モスクワがこの地域で足場を築くのに役立つ」であろう送電網への接続を阻止したことで、作戦の目的の一部は達成されたという認識を示しています。
ブダノフ局長が、ウクライナ側がザポリージャ原発を攻撃したことを認めたと発言したことは、他のウクライナメディア『ウクルインフォルム』も9日付で記事を出しました。
『ウクルインフォルム』は、ブダノフ局長は、「エネルホダル作戦は、もう1つの役割を担った。同作戦は、指揮官から戦闘員までの皆に、水上での行動という実践的経験を与えたのだ。その経験は、現在非常に良く運用され、利用されている。例えば、クリミア上陸時にだ」と発言した、と紹介しています。
- ウクライナ情報総局局長、エネルホダル奪還に向けて特殊任務部隊を過去3回派遣したと認める(ウクルインフォルム、2023年10月9日)
これまでずっと、ザポリージャ原発をロシア軍が砲撃している、原発事故を招きかねない凶悪なテロ攻撃だという主張をウクライナ側は繰り返し、西側メディアもそれを鸚鵡返しに繰り返してきました。
西側メディアは、ロシア軍が占拠しているザポリージャ原発を、ロシア軍が攻撃する、そんな不合理な主張を検証せず、ウクライナ側の主張のままに垂れ流し、ロシアが欧州最大のザポリージャ原発を攻撃して、悲惨な核汚染を欧州に招こうとしていると、ロシアを非難する記事を書き続けてきました。
ウクライナメディア発のブダノフ局長の発言に、早速ロシア側も注目しました。
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