福島原発事故「ALPS処理汚染水」海洋放出の2023年8月内実施が懸念される18日、首相官邸前での中止要請行動と参議院議員会館での院内集会が行われた。主催は「これ以上海を汚すな!市民会議」(以下「これ海」)と「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」(以下「さようなら原発」)。
院内集会では、岸田総理と小早川東電社長宛の要請書が、経済産業省と東京電力の担当者に手渡された。
午前10時半から猛暑の中で実施された官邸前行動では、同日米国での日米韓首脳会談に臨む岸田総理への批判をはじめ、福島など各地で活動する人々が海洋放出中止を求めてスピーチを行った。
11時過ぎからの院内集会では、「さようなら原発」呼びかけ人の鎌田慧氏、「これ海」共同代表の織田千代氏、福島県三春町在住の武藤類子氏が登壇。続いて、内閣総理大臣・原子力対策本部本部長の岸田文雄氏宛、「これ海」「さようなら原発」名義の「理解なき汚染水の海洋放出をやめ、代替案の検討を求める要請書」が読み上げられた。
要請書は、海洋放出が「『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という政府と東京電力の福島県漁連や全漁連に対する2015年の文書約束を破る」と批判。
また、政府が放出強行の「盾」とするIAEA(国際原子力機関)の報告書にある「処理水の放出は、日本政府による国家的決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも支持するものでもない」の記述(※)を引いて、同報告書は「海洋放出の科学的根拠とはならず、海洋放出を正当化できない」と指摘した。
(「……推奨するものでも支持するものでもない」の文言は、「Director General’s Foreword(事務局長まえがき)」内に、「国際安全基準に合致」等の文言と共に記載されている)
- REPORT ON THE SAFETY REVIEW OF THE ALPS-TREATED WATER AT THE FUKUSHIMA DAIICHI NUCLEAR POWER STATION(福島第一原子力発電所のALPS処理水に関する安全審査報告書)(IAEA、2023年7月4日、英文)(pdf)
要請書はさらに、海洋汚染と「風評対策」の問題、漁業者をはじめとする様々な関係者や海外からの懸念や反対の声を指摘。その上で、具体的項目として、「汚染水の海洋放出をやめること」「地下水の止水と代替案(大型タンク長期保存やモルタル固化補完案等)の検討」「情報公開と放射能影響評価の見直し」「説明会・公聴会の開催」の4項目を要請して、8月31日までの回答を求めた。
この4項目は、起立した経産省と東京電力の担当者を前にして読み上げられ、岸田総理宛と、東京電力ホールディングス代表執行役社長・小早川智明氏宛の同内容の要請書が各担当者に手渡された。ここで経産省と東京電力の担当者は退場、拍手で見送られた。
その後、議員挨拶で、立憲民主党の山崎誠衆議院議員、同じく阿部知子衆議院議員、日本共産党の岩淵友参議院議員、社民党の大椿ゆうこ参議院議員が登壇。
続いて「福島県県民の声」として、いわき市、会津若松市、浪江町の各住民が登壇。「市民の発言」として、原子力規制を監視する市民の会、原子力資料情報室、福島原発震災情報連絡センター、脱原発弁護団、日本有機農業研究会、国際環境NGO・FOEJapan、放射能汚染水の放出に反対する北区の会、子ども脱被ばく裁判の会の各メンバーがスピーチした。
参加者によるプラカードのアピールとシュプレヒコールの後、「これ海」共同代表の佐藤和良氏が「政府が8月31日から放出すると決めても、私たちは反対運動を進めていく」「関係者とは我々一人一人だ」と閉会の挨拶を行った。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。