原発回帰を進める「GX推進法案」の、衆議院・経済産業委員会での採決も予想された2023年3月24日、「オンライン緊急記者会見:問題だらけの『GX推進法案』は廃案にすべき」が開催された。主催は国際環境NGO FoE Japan。
登壇者は、大島堅一氏(龍谷大学政策学部教授、原子力市民委員会 座長)、松久保肇氏(原子力資料情報室事務局長、経産省・原子力小委員会委員)、桃井貴子氏(気候ネットワーク 東京事務所長)、植田亮氏(Fridays For Future Japan)、芹ケ野瑠奈氏(日本若者協議会)、満田夏花氏(国際環境NGO FoE Japan事務局長)。
大島氏は、「GX推進法」が謳う「GX推進移行債」「GX推進機構」「カーボンプライシング」(炭素に価格を付ける政策)が、経産省の裁量で運用される問題等を指摘。「化石燃料賦課金」「排出量取引」の設計が現実の排出量削減効果に乏しいなどと批判した。
松久保氏も、「経産省がGXを牛耳」って、「脱炭素にならない既存政策」を推進すると批判。「低効果、遅すぎ、原発回帰、不透明」と「四拍子揃った」問題法案とした。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新レポートで、原子力やCCS(CO2を地中に貯留する技術)はコストが高く、CO2削減効果が低い一方、太陽光や風力、省エネは安価で削減効果が高いとされ、「原子力に投じる余力はない」とした。
桃井氏は、「GX推進法」は「大規模排出事業者保護法」「グリーンウォッシュ法」だと欺瞞性を批判。CO2削減率の低いアンモニア混焼やCCSを理由に、火力発電、特に石炭発電を延命するなと指摘。また、経産省の担当者が「CO2削減目標ではなく投資が大事」「明確なゴールは設定せず、企業と対話して政策をつくる」と述べており、「経産省に委ねるGXでは真の脱炭素は進まない」と指摘した。
植田氏は、気候変動はすでに「気候危機」と呼ぶべきで、野心的行動が必要だが、GX政策にはそれが見られないと指摘。原発新設やグリーン水素より、技術が確立された太陽光・風力に投資すべきとした。
芹ケ野氏は、GX法案は日本の未来を左右する分岐点だが、気候変動問題の解決にならず、「意味のない法案」を作った政府と、賛成する自民党や維新、後押しした企業に「大きな怒りを感じる」と批判。また、「アジア・ゼロエミッション共同体構想」として「意味のないCO2削減対策」をアジア諸国に輸出しようとするのが「許せない」とした。
満田氏は、「GX推進法案を通してはいけない5つの理由」として、「1. 原子力産業を長期にわたり官民資金で支援 2. 経済産業省への白紙委任 3. 脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在 4. 将来世代を含めた国民が負担し、排出者を利する 5. 資金の流れが不透明、監視、検証ができない」をあげた。
- GX推進法案を通してはならない5つの理由(FoE Japan、2023.3.22)
記者会見と同じ3月24日、立憲民主党は、GX推進法案への反対を決定した。「GX実現に向けた基本方針」で「次世代革新炉の開発・建設に取り組む」とされる点が、党の基本政策「原子力発電所の新設・増設は行わず」と相容れないのが理由である。
- 【コメント】脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案への対応について(立憲民主党、2023年3月24日)
また、GX推進法案の衆議院・経済産業委員会での採決は3月29日に持ちこされた。その前日、FoE Japanは、下記の院内集会を衆議院議員会館で開催予定である。
なお、IWJは、「GX脱炭素電源法案」(束ね法案)をはじめとする原発の問題を、シリーズで取り上げている。
下記記事では、運転期間延長に関する国会での論戦を、詳細に分析している。ぜひ御覧いただきたい!
また、「束ね法案」の問題点については、以下の記事も、ぜひ御覧いただきたい。
※科学・技術の進歩なしに原発政策を大転換する岸田政権! 骨抜きにされる規制委!!「5つの束ね法案を認めれば再び原発過酷事故が起きる!」〜3.17 原発政策の大転換・運転期間延長を許すな!院内集会(学習会+記者会見) 2023.3.17