「東京五輪が誘致できなかったら、東京電力に賠償請求する」――東京都が東電を脅迫!? 衝撃の内部告発! 東電社員として声をあげた一井唯史氏に岩上安身がインタビュー<後編> 2016.12.1

記事公開日:2017.1.7地域: テキスト 動画 独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(取材:岩上安身 文:城石エマ 記事構成:岩上安身)

※1月10日テキストを追加しました!

 3.11による福島原発事故は、被災地域の住民を苦しめただけではなかった。歪んだ原子力ムラの利権構造の中にある会社の経営層たちの横暴によって、東京電力の社員や、東電の下請けの作業員たちも過酷な労働環境の中で悲鳴をあげてきたのである。

 福島原発事故の賠償業務を担当し、激務によってうつ病発症にまで追い込まれ、休職を余儀なくされた東電正社員の一井唯史氏は、社内で労災として認められなかったことに強い疑念を感じ、自ら煩瑣な労災申請の手続きを行うと同時に、東電の悪質な経営実態を世間に広く知らしめるべく、実名で労災申請についての記者会見を行い、注目を集めた。

 2016年12月1日に行われた、岩上安身による一井氏へのインタビュー<後編>では、新入女性社員の過労自殺が労災認定され世間の非難が集中している、大手広告代理店の電通をはじめ、日本中で蔓延する「過重労働」の問題にも話が及んだ。

 インタビューの中では、原発事故による汚染地域に住民が有無を言わせず帰還を迫られている裏で、東京五輪の誘致のために東京都が東電に脅迫まがいの圧力をかけていたという、驚きの実態も明らかにされた。

 一井氏が賠償業務に従事する中で、東電の無理な人員配置による過酷な労働で、うつ状態にまで追い込まれていった過程については、インタビュー<前編>で語られているので、ぜひ、あわせてご一読いただきたい。

 また、電通を始めとする大手広告代理店での過労問題については、岩上安身が元博報堂社員で『原発プロパガンダ』(岩波新書)『電通と原発報道』(亜紀書房)著者の本間龍氏にもインタビューを行っている。以下の記事もぜひ御覧いただきたい。

記事目次

■イントロ

  • 日時 2016年12月1日(木) 18:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

成人の4割が睡眠時間6時間以下 自殺・過労死のベースにある睡眠不足が蔓延する日本社会の異常

岩上安身(以下、岩上と略す)「関電でも技術職課長の40代男性が自殺して、過労と認められました」

一井唯史氏(以下、一井氏と略す)「電力会社の体質的なものですよね。200時間の残業は、気が狂うと思います。そこまでしてスケジュールどおり原発を動かさないといけないのか? 日本って必ず目標を達成しないといけないとか、スケジュールどおりやらなければならないというのが、多すぎますよね。そこを見直さないと過労自殺はなくならないと思います」

▲一井唯史氏
▲一井唯史氏

岩上「公益性のために内部告発は必要だと思います。過労自殺は色々な業態で起きています。2010年にはアニメ制作会社の男性が過労自殺。病院のカルテには月600時間労働という記載も」

▲多種に渡る業界での過労自殺の実例(インタビュー時のパワーポイントより)
▲多種に渡る業界での過労自殺の実例(インタビュー時のパワーポイントより)

一井氏「月600時間ということは、単純に30で割っても1日20時間ですよね」

岩上「2010年西濃の24歳女性。月の残業時間は98時間。2012年肥後銀行の男性。残業時間は月100時間超えでうつ病を発症し飛び降り自殺。うつというと、一井さんには他人事ではないように思われるのですが」

一井氏「今の制度の中では、自殺したからうつだ、という結果論的なとらえ方をしている気がします。本来であれば、自殺しないように持っていかないといけないのに、そこがきちんとできていない。予防しないとダメですよね」

岩上「自殺・過労死のベースにあるのが睡眠不足。厚労省の調査によると、成人の4割が『6時間に満たない』と」

▲日本人の平均睡眠時間が短い。また睡眠不足が続くと、うつ症状発症のリスクが高まる(インタビュー時のパワーポイントより)
▲日本人の平均睡眠時間が短い。また睡眠不足が続くと、うつ症状発症のリスクが高まる(インタビュー時のパワーポイントより)

一井氏「まともに眠れない働き方で無理し続けている。病気になるのは当たり前なんです」

労働者を追い詰める「残業代ゼロ法案」を提言する経団連は「恥ずかしい」

岩上「経団連が残業代ゼロ法案を提言し、過労を推進しています。『年収1075万円以上』の『高度専門職』を対象に、労働時間規制を一切なくすというものですが、今後、職務要件も年収も下げて、労働者の10%に広く適用することを主張しています。

 その上、経営者が労働時間を管理する責任がなくなり、労災も適用できなくなる。さらに、経団連は年収基準を『400万円以上』に引き下げ、ホワイトカラー全般に広げることを提唱しています。まさに、小さく産んで大きく育てる、悪法の典型ですね」

▲残業代ゼロ法案の概要(インタビュー時のパワーポイントより)
▲残業代ゼロ法案の概要(インタビュー時のパワーポイントより)

一井氏「ほぼ全部の労働者が該当しますよね。労働者の人生のバランスを崩し、使い捨てにするようなすような制度をつくろうとしているのが、日本の経済の中心である経団連。恥ずかしいですよね」

岩上「経団連の参加企業には、グローバル企業がたくさん含まれています。こういう企業は、日本よりもずっと安い労賃で海外の労働者を使うことができる。『日本で雇用を確保しろ』というと、『日本人の賃金を下げろ』と言ってくるんですね」

一井氏「東電の社員にも、緊急時に詳しい事情を聞かされずに、原発に行かされたという方もいます。結局(原発関連は)危険な作業なので、日本人では足りず、海外の人の貧しさにつけ込んで連れてくる。日本は何をやっているんだと世界から思われてしまう」

「東京五輪が誘致できなかったら、東京電力に賠償請求する」――東京都が東電を脅迫!? 電通裏金疑惑には東電も無関係ではない!?

岩上「一井さんは『原発は人の手に負えない。爆弾ではないが、原発の前に人は無力だ』とツイートしていますね」

一井氏「今の原発は、何十年も前に作られたものであって、当時の技術が完璧だったかというと、全然完璧ではなかった。そんな中で起こった福島第一原発の件は、事故ではなくて、人災だったと思うんです。

▲(左)岩上安身、(右)一井唯史氏
▲(左)岩上安身、(右)一井唯史氏

 私はその賠償で、人生がおかしくなるくらい働いてきた。私だけではなくて、被災者の方は、ものすごく悲惨な状況なわけで。賠償をやった人間や、福一で作業をしている人間は、『もうこりごりだ』というのが本音だと思うんですよね。

 被災者の方は散り散りになってしまっている。移住先で落ち着いたと思ったら、何もなかったかのように『帰れ』と言われている。『年間20mSvまで被曝しても大丈夫』と政府は言っていますが、20mSvというのは、ドイツの原発関係者の上限ですよ。にもかかわらず、影響が出やすい子供や妊婦も含めて、とにかく帰れと言われている。

 何のためかというと、東京五輪のためですよ。『(放射能の)問題がない』と言って誘致をしてしまって、そのために、問題がなかったかのように被災地に帰らされる。

 内部告発のようになってしまいますが、『東京五輪が誘致できなかったら、東京電力に賠償請求をします』ということを東京都から言われていたんですよ」

▲アルゼンチン・ブエノスアイレスにおけるIOC総会で福島の状況を「アンダーコントロール」と発言した安倍総理(首相官邸ホームページより、2013年9月7日)

岩上「それは無茶苦茶な話じゃないですか。IOCがどこを選ぶかなんてわからないわけですし」

一井氏「だから出来レースみたいに、電通の裏金の件が関わっていると思うんですけど」

岩上「ここで電通と東電が結びついてくるとは」

注:電力会社・広告会社・電力会社に巨額融資を行っている金融機関等432社が「原子力産業協会」に登録し、原子力ムラを構成している。くわしくはこちらを御覧いただきたい。

関連記事


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です