「日本全体が米軍の巨大な兵站部隊になる懸念がある」――日米の「調整メカニズム」で自衛隊が米軍化する? 学習院大学教授・青井未帆氏に岩上安身が緊急インタビュー! 2015.7.8

記事公開日:2015.7.11取材地: テキスト 動画 独自
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(IWJ・原佑介)

※7月11日テキストを追加しました!

 「日本全体が米軍の巨大な兵站部隊になる懸念があります」――。

 安倍政権による解釈改憲によって、日本の安全保障法制ががらりと変質しようとしている。

 4月下旬に改定された「日米軍事協力の指針」(新ガイドライン)では、事実上の日米統合司令部「同盟調整メカニズム」を設置し、自衛隊と米軍の「運用面での調整」「共同計画の策定」を行うと規定した。これに合わせ、現在、日米両政府は、米軍幹部を自衛隊の最高司令部である防衛省の中央指揮所に常駐させる方向で検討している。

 こうした米軍と自衛隊の「一体化」で、自衛隊の主体性が失われると懸念するのが学習院大学教授の青井未帆氏である。

 「『制服組』(自衛官)が実際の知識を持っているんです。米国とデータを共有しているので、事実上の指揮権が日本にあるとは考えられない。米軍の制服組を中心に決定されていくことになるのではないか、ということです。専門家である制服組の意見に政治がどう異論を挟めるでしょうか。そう考えると、NSC(国家安全保障会議)での議論が形式的なものになる可能性が高い」

 2015年7月8日、岩上安身のインタビューに答えた青井氏は、自衛隊が米軍の指揮下に組み込まれる懸念を示し、政府提出の安保法制の違憲性を指摘。維新の党が対案として出した独自案の違憲性にも言及した。

■イントロ

  • 日時 2015年7月8日(水) 17:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

維新案は合憲か違憲か「与党案よりマシ」という話ではない

岩上安身(以下、岩上)「維新と民主が対案を共同提出するかで二転三転しました。対案の内容はどういうものでしょう?」

青井未帆教授(以下、青井・敬称略)「“つまびらか”に読んではいないのですが、地理的限界を設け、射程を限定していることは確かです。憲法学者には合憲だという人もいます」。

岩上「なぜ、小林節慶応大名誉教授は維新案に乗ったのでしょう?」

青井「小林先生は個別的自衛権の範囲内である、というご意見を持ちになったようです。私はそれには乗れません」

岩上「維新案では、『武力攻撃危機事態』を設けるとしていますね」

青井「集団的自衛権を行使するか否かは国際法の話。国内法で自衛の措置をどこまでできるかはまた話が別です。これまでは『他国防衛か否か』で個別的自衛権の行使を判断してきたので、他国防衛であれば集団的自衛権になります。となると、個別的自衛権の範囲内とは言いがたいかと思います。

 維新案が『7.1閣議決定』に基づいた案であれば、解釈改憲の閣議決定をも認めてしまうことになります。内閣の解釈がおかしいのであれば、少なくとも自衛隊法などはいじってはいけません。徹底的に指摘して、取下げさせるべきです」

岩上「法をいじらなければ別の内閣が『あの解釈は間違っていました』と出直せる、と」

青井「そういうことです。従来の解釈が他国防衛か自国防衛かで線を引いている以上、維新案も(合憲であると言うことは)難しいと思いますが、人によっては個別的自衛権の拡大範囲内だ、ともいうでしょう。

 今も武力攻撃事態法があります。その上で『武力攻撃危機事態』というものが出ればどういうことになるのかわかりません。大事なのは、先ほども言ったように、7.1閣議決定に基づいている以上、『与党案よりもいい』という話ではない、ということです」

「維新案」提出は与党への助け舟? 

岩上「維新と民主がくっついても、数では与党に敵いません。『60日ルール』の期限が近づいていますが、自民党が世論で追い込まれている時に維新が対案を出したことを『助け舟を出した』と見る人もいます」

青井「私もそう理解しています。今問題になっているのは国会の憲法解釈です。国会の解釈権と内閣の解釈権の問題なので、維新はわざとなのか、そこを曖昧にして出しています」

岩上「松野・維新代表は『個別的自衛権の拡大』であるとし、高村自民党副総裁は『維新案は国際法的には集団的自衛権だ』と言っています」

青井「珍しいことですが、今回、私は高村さんの意見に賛成です」

岩上「領域警備法案を維新と民主が共同提出し、『60日ルール』の適用阻止、来週(15日)の強行採決阻止で一致したそうです」

青井「領域警備法案は民主党もだいぶ前から必要と言っていたので驚きはありません。しかし、『グレーゾーン』といいますが、『治安の維持』は警察の仕事で、警察権ですべきです。自衛隊と警察がシームレスではいけません」

岩上「軍事行動ではなく、治安維持活動は分ける。海自を出せば、相手も軍艦を出してくる」

青井「はい。軍出動の口実を与えるだけですね。私たちの生活の中で自衛隊が出てくる、国民に銃を向ける…といったことがないように、法律は整備されているんです。『切れ目』が悪いことのように言われていますが、切れ目がなければ法は安定しません」

自衛隊の中枢神経が米国の「制服組」に乗っ取られる?

岩上「そもそも論の話をします。米軍と自衛隊が集団的自衛権の行使を決定し、自衛隊が自動的に、勝手に動く可能性についてです。日米ガイドラインに常設化が盛り込まれる、日米の『調整メカニズム』がヘッドクオーターになるのではないか、という青井先生の指摘です」

青井「日本と米国の間には調整メカニズムという有事のメカニズムがあります。3.11の『トモダチ作戦』が初の調整メカニズムです。何事でも、机上の計算と実態は違う。『トモダチ作戦』で、やはり机上と実態が違ったのでしょう。そこでこの調整メカニズムが常設化されたんです。

 調整メカニズムは有事の対応なので、となると、『制服組』(自衛官)が実際の知識を持っているんです。米国とデータを共有しているので、事実上の指揮権が日本にあるとは考えられない。米軍の制服組を中心に決定されていくことになるのではないか、ということです。

 専門家である制服組の意見に政治がどう異論を挟めるでしょう。そう考えるとNSCでの議論が形式的なものになる可能性が高いと思う。日米軍は現実にもうかなりズブズブで、すでに切れるような状態ではない。防災訓練でも米軍が『関係行政機関』となっていました」

岩上「米軍幹部を、自衛隊の事実上の最高司令部である防衛省内の中央指揮所に常駐させるようです。これが独立国といえるのでしょうか。外資に買収された日本企業になりつつある。これは大変なことです。しかも、集団的自衛権の行使に関する情報は特定秘密になり、我々には開示されないでしょう」

青井「周辺事態もそうですが、誰が『周辺事態かどうか』を認定するのかという手続きが書いていないんですね。誰が決めるかを書けないというのは、おそらく、米軍が事態を認定するから書けないんでしょう」

「日本全体が米軍の巨大な兵站部隊」になる懸念

岩上「青井さんは『日米一体化が進み、米軍と自衛隊が一緒に演習をしている。司令部レベルで自衛隊が米軍と統合する中に特定秘密保護法案がある』と指摘しています」

青井「日本全体が巨大な米軍の兵站部隊になる懸念があります。秘密指定されればアクセスもできない」

岩上「防衛省設置法改正案が成立したことにより、『背広組』(防衛官僚)が『制服組』(自衛官)より優位とする条文が撤廃され、『背広組』の権限が強化されてしまいました」。

青井「昔は『背広組』がふんぞり返っていた。それが是正されてきました。最近は背広組にも話を聞くということにもなっていた。今回の法改正で背広服は運用、制服組が管理をそれぞれ統制するようになります。文民優位が撤廃され、政治家の質が変わらない以上、背広組をしっかりチェックする仕組みが必要ではないでしょうか」

岩上「さらに防衛官僚が主体の『運用企画局』を廃止し、陸、海、空自衛隊の部隊運用は制服幹部主体の『統合幕僚監部』に一元化。これまでは自衛隊の運用を事実上監督する立場にあった運用企画局長の職が、今後は統合幕僚長の部下になってしまった。

 日米ガイドラインは『法の支配』の外にあり、『調整メカニズム』は文民統制、すなわち政治的判断。国会、国民の支配の外に置かれるのではないでしょうか?」

青井「あくまで条約、法の下である、細目について執行する行政協定ですらありません。『単なる指針』です」

法の支配から「人の支配」へ? 憲法を尊重・擁護しない自民党議員

岩上「恐いのは米国の例外主義です。ブッシュ・ドクトリンでは、『ならず者国家』の先制攻撃を許さないが、我々の先制攻撃は例外、としています」

青井「米国はもはや先制攻撃ではなく『予防的な』先制攻撃を行う国になっています。これは、何もしていないのに『危険がある』ということで攻撃するものです」

岩上「稲田朋美議員は、『いざという時に、国の安全を守るのは憲法学者ではなく私たち政治家だ』などと発言していますね。つまり『人の支配』でやると」

青井「国の安全を守るのは憲法学者じゃない、というのは当たり前です。だから政治家がいる。ただし、問題はその中身です。『崇高な目的のために法を無視していいんだ』という意味を含んでいたら問題です。政治家はパッションを持って行うが、それが時に暴走しないように抑制するのが憲法です」

岩上「稲田氏は安保法制合憲の根拠は砂川判決にあると言っています」

青井「まったくの間違いです。憲法解釈権が内閣にあるかのような口ぶりですが、国民の代表である国会にも解釈権がある。最高法規ですから。そもそも政治家には憲法尊重擁護義務があります」

「重要影響事態法」で、世界中どこでも「個別的自衛権発動」が可能に!?

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6件のコメント “「日本全体が米軍の巨大な兵站部隊になる懸念がある」――日米の「調整メカニズム」で自衛隊が米軍化する? 学習院大学教授・青井未帆氏に岩上安身が緊急インタビュー!

  1. 政府案に対する維新対案というロジック。個別的自衛権の範囲内というのであれば、現行法案で十分に対応できる。ならば、何故、今、安保法案を審議しなければいけないのか、その理由が明確では無い。他国攻撃を支援するという行動は個別的自衛権では説明できない。そもそも他国攻撃を支援するという、また支援しなければ国際的信頼が得られないという考え方は、政府の主張に取り込まれることとなる。現政府の主張の上に立って議論するのか?政府の解釈そのものが違憲であるとするのか?という時点に返って議論しなければ、反対する意味が無いこととなる。この青木教授のいうこととは真っ当な意見だと思います。維新対案は政府案に取り込まれた議論だと思う。政府の議論に乗る自体が問題です。

  2. もうとっくの昔から下請けですよね。自衛隊が、いや、警察予備隊が出来た時から配下だった訳ですから。
    では今と何処が違うのか?暴力装置としての行き残リの為に部下を差し出してもイイ、と大きく舵を切ったところでしょう。
    その切った舵の中には国民全てが含まれているんだという事を肝に銘じなければいけないんだと思いますよ。
    まぁ、民主国家だと習ってきたのに本当は軍事国家だったことが白日の下に晒されてきた2015年梅雨の晴れ間って事ですね。

  3. 自衛権の行使を簡単にやれるようにするための法案だから、国民が、彼ら不正資格議員の議論に乗る必要はない。

  4. 自衛隊は神経抜かれて米軍の手足に?予行練習のために防災訓練に米軍が?いつが存立危機事態なのかは米が決める?眠れなくなるインタビュー

    維新案は「合憲」か「違憲」か 憲法学者・青井未帆氏インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/252124 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/ingigo33/status/619775351808352256

  5. 「日本全体が米軍の巨大な兵站部隊になる懸念がある」――日米の「調整メカニズム」で自衛隊が米軍化する? 学習院大学教授・青井未帆氏に岩上安身が緊急インタビュー! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/252124 … @iwakamiyasumi
    そして、日本全土が戦場になる可能性も高い。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/619989997022674944

  6.  日本全体が米軍の巨大な兵站部隊になったことが有った。それが朝鮮戦争でありベトナム戦争であった。日本は米国の戦争で大いに儲かったのである。特に朝鮮戦争は日本の高度成長のきっかけになったと記憶している高齢者も多い。磁石に紐をつけて道路の上を滑らせてくっついた鉄くずを売って子供が小遣い稼ぎしたアレだ。戦争法案を進めるのは自民党のスポンサーである財界の“強い要請”もあると思う。夢よもう一度ということだろうか。一般公開されている南ベトナムの大統領宮殿に行けば判るが、映画室の映写機は日本製であり、調理室のプロパンガスのボンベは日本製であり、調理の機械も日本製だ。
     維新と自民党の安倍政権は最初から話が出来ていると思う。それは6月14日に東京で安倍首相と橋下徹が会談したことからも明らかだ。2015年6月14日配信の産経ニュースによると《都内のホテルで維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長と約3時間にわたり会談した。菅義偉官房長官、維新顧問の松井一郎大阪府知事も同席し》《維新が賛同する憲法改正や国会運営についても意見交換した》そうだ。この時に自民党の改憲に協力する同意がなされたのではないのか。
     《維新は与党と足並みをそろえて労働者派遣法改正案の早期採決に賛同している》そうだが、元々維新の最高顧問は竹中平蔵だ。同根な連中だと思う。《橋下、松井両氏は会談に先立ち、維新の松野頼久代表、柿沢未途幹事長とも会談した》そうだし、《橋下氏は、維新が与党と歩調をあわせる現在の国会運営について異論を挟まなかった》そうだ。どこまでも自民党と同じ政策で看板が千賀だけの自民党別働隊だというのが私の印象です。こういう順を踏んだ合意をするのは放送作家であった百田氏の役目ではないのか。元々放送作家なので“自然な流れ”で視聴者を納得させるのが彼の本来の仕事だ。
     朝鮮戦争やベトナム戦争で日本全体が米軍の巨大な兵站部隊になって大儲けしたのは事実だが、トナム戦争では米国自身が集団的自衛権のプレーヤーになって国が目茶苦茶になったことを忘れては成らない。第一次大戦や第二次大戦では米国本土は殆ど攻撃を受けずに特需で儲かった。しかし、ベトナムではゲリラのテロ攻撃に散々やられて最後は裸足で逃げ出したのである。

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