中国のユニクロ下請け工場への潜入取材から明らかになった悲惨な労働環境とは――「ファストファッション―《安さ》の裏側にあるもの」 2015.1.17

記事公開日:2015.1.19取材地: テキスト動画
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 月当たり時間外労働時間、119.5時間。58種類の規則のうち、41は罰金制度を含む。フロアの床に流れる排水により、機械からの漏電で労働者が死亡――。

 「ファストファッション―《安さ》の裏側にあるもの」と題した報告集会が1月17日19時より、文京区男女平等センター研修室Aで行われた。

 アジアの縫製産業に従事する労働者の権利保障や、労働環境の改善を求める国際キャンペーンを共同で開始した日本、香港、中国のNGOが、中国のユニクロ製品の生産工場で潜入調査を行い、そこから明らかになった実態を市民やメディアに広く公開した。

 国際人権NGO、ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子氏と、香港のNGO、SACOM(Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour)のアレックス・チャン氏が報告を行い、低賃金など待遇面での問題、長時間労働や労働安全面での懸念などを表明した。労働者の尊厳、安全・健康な作業環境を求める要請がファーストリテイリング社と下請け会社に提出されている。

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記事目次

■ハイライト

  • 報告 伊藤和子氏(ヒューマンライツ・ナウ)/アレックス氏(SACOM [Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour])
  • 日時 2015年1月17日(土)19:00~21:00
  • 場所 文京区男女平等センター(東京都文京区)

以下、発言要旨を掲載します

SACOMによる潜入取材――過酷な時間外労働と、残業代の支払い不足

アレックス・チャン氏(以下、チャン・敬称略)「SACOMは、ヒューマンライツ・ナウ、中国労働透視との共同調査プロジェクトの一環として、2014年7月から11月に渡り、潜入調査を含む、事実調査を行い、調査報告書を公表しました。

 この調査キャンペーンは、中国の労働状況を明らかにすることで、労働環境の改善と、労働者の権利を確保することを目的としています。

 Pacific Textiles Holding Ltd社(以下、P社)は6500人、Dongguang Luenthai Garment Co.Ltd社(以下、L社)は4000人の労働者を抱え、どちらも人手を必要としており、容易に潜入調査員が入ることができました。P社、およびL社は、ユニクロにニット生地とアパレル製品を供給している下請け企業であり、両工場はそれぞれ南沙区と東莞市に位置しています。

 この2社は、基本給を月額1550人民元(約3万円)としていますが、これは広東市、東莞市の最低賃金です。一方、広東市、東莞市の2013年の労働者の平均的賃金レベルはそれぞれ、月額5808人民元(約11万円)、2505人民元(約5万円)。そのため、時間外労働が月給の中で重要な割合を占めています。

 この時間外労働時間は衝撃的なものでした。P社では月平均134時間、L社で月平均112時間の時間外労働がなされていると推計されています。P社では、労働者の一部が『時間外労働の任意申請書』に署名するよう要求されています。その申請書には、時間外労働時間は119.5時間と記載されており、これは明らかな法律違反です。

 しかも、時間外労働の残業代は、法律で定められた通常賃金の2倍割増ではなく、1.5倍割増でしか払われていません。L社では、休日の時間外労働時間と、100時間を越える時間外労働について、コンピューターではなく、マニュアル(手書き)で記録されているため、社会監査官による監査を免れることとなっています」

危険な労働環境――床にたまった排水が招く、漏電による感電死

チャン「P社とL社の工場は、長い実績のあるものですが、労働環境は依然として過酷なものです。異常な高温、床に溢れる排水、化学物質の使用や臭気、換気設備や事故防止等の対策の欠如、労働者へのプレッシャーなどが、健康と安全に深刻なリスクを与えています。

 P社では、高いところにある作業台からの転落事故を、調査員が頻繁に目撃しました。染料部門では、非常に高温な染料タンクでの作業が余儀なくされ、事故防止対策はありませんでした。

 2014年7月には、フロア全体の床に流れる排水により、機械からの漏電で労働者が死亡したとの証言がありました。異臭が伴う有害な化学物質のPTEG、PT200などが使用されていますが、換気の設備はなく、異常な高温のため、防護措置をとることができていません。上半身裸で作業しています」

雇用契約書には記載されていない違法な罰金制度

(…会員ページにつづく)

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「中国のユニクロ下請け工場への潜入取材から明らかになった悲惨な労働環境とは――「ファストファッション―《安さ》の裏側にあるもの」」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「ファストファッション―《安さ》の裏側にあるもの」 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/225633 … @iwakamiyasumi
    「ファストファッションによって巨万の富を生む先進国の大企業」と「服をいくら作っても、生活は苦しくなる一方の途上国労働者」。この“世界規模での弱いものイジメ”は、グローバル経済を象徴している。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1038187222871076865

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