【大義なき解散総選挙16】「所得税と法人税の欠陥を直せば、消費税はなくてもよい」――『税金を払わない巨大企業』著者、富岡幸雄・中央大学名誉教授に岩上安身が聞く 2014.12.1

記事公開日:2014.12.2取材地: テキスト動画独自
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特集 総選挙2014|特集 天下の愚策 消費税増税

 「26年間の消費税が、法人税の減税のための財源になっています」

 国際競争力の強化という大義を唱え、法人減税を続ける安倍政権。加えて、首相お手盛りの大企業優遇政策を活用し、一部の大企業は「税逃れ」まがいの手法で負担を回避する。他方、2017年4月に確定した再度の消費増税によって、低所得者への負担は膨らみ、経済格差は増すばかり。

 こうした不公平な税制に異議を唱える富岡幸雄・中央大学名誉教授が書いた新書『税金を払わない巨大企業』(文春新書、2014年9月)が現在、注目を集めている。現在は日本租税理論学会理事をつとめる富岡氏に、12月1日(月)、岩上安身が総選挙前の緊急インタビューを行った。

 19歳で学徒動員され、戦地に赴いた富岡氏。戦後、大蔵官僚として活躍し、「お国のために」という思いを、よりよい税制のあり方へと結実させることに奔走した半生を語る。来年2015年には卒寿を迎えるとは思えぬほどのお元気な様子を見せ、安倍政権で歪められてきた税制を厳しく指摘した。

■イントロ

  • 日時 2014年12月1日(月) 14:00〜

※以下、発言要旨を掲載します

「応能負担ではない消費税そのものが悪」

岩上安身(以下、岩上)「国を思う気持ちを税制に賭けて50年の富岡先生ですが、著書『税金を払わない巨大企業』はネット上において賛否両論です。今日は、必見のインタビューとなります」

富岡幸雄・中央大学名誉教授(以下、富岡・敬称略)「安倍首相が解散時、『税は国家だ』と言っていました。その通りです。税の歪み、ひずみがある場合、国家は立ち行きません。消費税は政治、経済、社会のあらゆる分野に関わりを持ちます。消費税の26年の歴史は、国民騙しの歴史です。

 そもそも、消費税は税金ではありません。税の本質とは何でしょう。応能負担(※)です。それが民主主義国家の原理原則です。消費税は消費者に一律にかかり、応能負担ではありません。悪平等ですね。そもそも消費税は、あること自体が悪です。

(※)所得に応じて租税を負担すること。他方、受けた利益に応じて負担することを応益負担という。

 消費税を一度やめて、欧州のようなきちっとした付加価値税をやってもらいたいですね。第一次大平内閣の時、オイルショックを受けて、一般消費税導入案が浮上しました。

 その時、『悪税だから絶対反対だ』と言おうと思ったのですが、女房から『お父さん、あまり張り切らないほうがいいですよ』と言われ、ショックでしたね。大蔵省など、いろいろなところから電話がかかってきて、圧力がかけられました。

 第3次中曽根内閣の時、売上税が導入され、彼らは『これをやらなければ国が潰れる』と言いました。いつものことです。62年に文藝春秋に『税金を払わない大企業リスト』を掲載させました。

 その中で、外国全額控除という制度を使って税金をゼロにしている企業を挙げ、大騒ぎになりました。そして結局、売上税は廃案になり、中曽根氏は退陣しました。当時の大蔵省は実力部隊を持っていて、泣く子も黙るマルサと呼ばれていました。

 88年の竹下内閣は飴と鞭を使い分けました。飴は抜け穴だらけの税金制度、鞭は消費税成立。全部の役所を使って、消費税に反対した勢力に圧力をかけました。彼らは私の論文を読んで、あら探しをし、少しでも数字にミスがあれば、指摘します。

 金持ちが買う贅沢品への課税、奢侈税(しゃしぜい)であれば、累進課税となり、意味があります。消費税増税をして8%にしたことがすでに間違いです。10%など、とんでもない。消費税はあってはならない現代社会の怪物、人間の心まで荒んでしまうのです。

 国会で消費税の原理的欠陥を指摘し、『新型間接税(=消費税)の導入は低所得者への過酷な税制。高所得者への減税、内需の停滞、物価の上昇、便乗値上げ、インフレを招く。所得税は最も公平な税制』と主張しました」

「消費税を5%に戻すことが最大の経済対策」――安倍税制への批判

富岡「安倍政権では、日銀総裁が『物価上げるんだ』というが、下がったほうがいいんです。実質賃金は下がっているのだから、経済は停滞します。GDPが2期連続でマイナスになっています。消費税8%というガンを切除しなければならないのです。

 消費税を5%に戻すことが最大の経済対策なのです。一年半先延ばしして、(経済が)良くなる見込みはまったくありません。10%への増税は、貧血でフラフラの人から検査しないまま、血を抜くというようなものです。今、必要なのは輸血です」

岩上「(今の税制は)吸血税制ですね」

富岡「97年の消費増税の時は経済成長率プラス2.7%から増税後、0.1%に悪化しましたが、今年(2014年)4月の増税は2期連続マイナスです。

 消費税増税が先延ばしせざるを得なかった失策を、マスコミを使って国民のせいにして、福祉を削るということをしています。法人税は毎年のように下げています。26年間の消費税が、法人税の減税のための財源になっています」

自民党と経団連のしがらみのあいだで――企業の社会的存在意義とは?

岩上「本当に日本の法人税は高いのか、ということが著書のなかで問われています」

富岡「日本は企業中心に動いていく企業国家です。企業の社会貢献は、納税です。ただ、世の中は変わりました。昔は『お国のために』で、私はペンを銃に変えて、一生懸命戦場で戦いました。国家意識、公共心や、共同体意識はなくなってしまったのですね。人間は弱いですね。

 日本国内には需要がないのに、東南アジアをはじめ、市場は広がっています。法人税を下げる、というのは、企業の自己満足、というか、経団連と自民党の、変な関係ですね」

岩上「トリクルダウンは起きていないと」

富岡「消費の拡大に結びつかないのですね。従業員の基本給を上げられないのですから。トリクルダウンは30年前の話です。前提が変わっているのです。

 海外に出て行っちゃう企業は出て行っちゃえばどうですか? 満州国が滅びた時、置き去りにされたとき、人々はどうしましたか。経営者に考えてもらいたいです。企業の社会的責任とは何か。企業は何のために存在しているのか」

21世紀の課題――ボーダーレス経済と国民国家の矛盾を超えて

富岡「政府は権力の集団ですから、怪物のようなもの。暴走します。ルール、掟がなければこの世は闇ですよ。『目標は、会社の本社を宇宙船地球号に置くことだよ』と言った米国の経営者がいました。日本にはこういう人がいません。

 経済はグローバルと言ったって、国境、国民国家は存在しています。経済と国家の齟齬が21世紀の問題で、人類の叡智を活かさなければ、滅びます。著書第5章のタイトル『世界税金戦争』をいかに回避するか、が私に残された課題です。

 経済はボーダーレスになり、国境は依然として存在する。それが悲劇です。税金という武器を使って、いかに経済帝国主義を進めるか、ということに、世界の叡智が傾けられています。

 タックスヘイブンを使えば、企業は無国籍化します。私が20代の頃、『節税は合法的な手段で、国民の権利だ』、と言うと批判を受けました。安倍首相は企業性善説を前提に考えています」

節税と脱税のあいだ――大企業による「避税」とのイタチごっこ

富岡「脱税と節税の間にあるグレーな避税(=租税回避)が行われています。新しい税法を作っても作っても、脱法ドラッグのように網の目をかいくぐる手法が出てきます。

 所得税、法人税というのは人間の叡智であり、税としては理想ですが、技術的に難しい。経費かどうか分からないグレーゾーンがあり、ややこしいから、簡単な税金の取りやすい消費税が導入されました。

 税務署が寝ていても、消費税はとれるのです。26年経って、消費税が普通のものになってしまいました。学生は『僕たち、生まれた時から消費税がありました』と言っていて、消費税撤廃、と言ってもぽかんとしてしまう。困ったことだな、と思いました。

 著書の第7章に『消費税は不況を招く』と書きましたが、この予言が当たってしまいました。税金をこぼさないように集め、公平に分配するというのが政府(の本分)です。消費税8%になって、かえって借金が増えました。

 ソフトバンクは単体の持株会社ですから、トンネル会社のようなもの。子会社の株をもつホールディングス会社が認められるようになって、収入のほとんどが子会社からの取り引き。配当は無税なのです。

 連結納税をしていれば、全体の数字が出るが、単体だと実効税率は、実際に会社が納めた税金。裕福な親戚をひとくくりにして、一家は裕福だ、ということはないように、親会社も子会社も法的には他人です。

 大企業の社長さんにも、少しは経済のことを考えて欲しい。たくさん払ってくれとは言いません。金の卵を育てる鶏は大切にして、敬ってあげなければ。せめて、2割を払っていただければ。(内部留保として)300億も貯めこんでも仕方ないでしょう。

 企業の実名を挙げて本を書いたことは禁じ手だと自分でも思っていますが、ここまでしないと、この国は変わらないんです。これは日本国に対する最後のご奉公です。この本を書いたことで、テロに遭うことも覚悟しています。

 法人実在説は世界の通説、日本は法人擬制説で、受取配当金の益金不算入となっています。ここに大企業、経団連の既得権によるしがらみがあります。シャウプ税制という時代遅れの制度に欠陥があると言えます。

 日本の97%は中小企業。それをいじめてどうするのでしょう。大企業に務めている人はごく一握り。年金だけで生活しているお年寄りは大変だと思いますよ。

 Googleのゼロ・タックス・スキームなど、国際的スケールで税逃れをしているグローバル会社があります」

岩上「節税と言える範囲と、言えない範囲には、線引きはないのでしょうか」

富岡「果てしなく税制(の分量)は増えていくが、イタチごっこで新手の税逃れ手法が編み出されていきます。タックスヘイブンが諸悪の根源です。タックスヘイブンを活用した暴力的なマネーゲームが地球規模で行われています」

経済帝国主義を超えて――グローバル・ガバメントによる国際協調へ

岩上「(そうした状況を乗り越える)新しい理論はあるのでしょうか?」

富岡「海外に資産を持ち出したら、知らせてくれる条約を作る、国際的に税務情報を共有する、というような国際協調が必要でしょうね。

 一国だけではできないことなので、国際条約によって、国と国との話し合いで、ネットワークを作っていくことが重要です。タックスヘイブンをなくす方向で前向きに積み上げていくことを、私は期待したいですね。

 世界政府ができない限り、難しいが、それをやる努力が必要です。世界中の学者が政府を動かして、ということになると、これはもう、実質的なグローバル・ガバメントと言えます。

 中には、諦めてしまう人もいます。偉い先生の中には、法人税終焉論を唱える人もいます。金融資産に税をかけると金持ちは海外に逃げてしまうから、やめておこう、という弱腰。政府の税制調査会の幹部がそんなことを言っています。

 法人税を徴税しようとする国家が企業の叡智に負けてしまい、それは国家の変質、崩壊を意味します」

「日本の法人税が高いと言って、逃げたいのなら逃げればいいのでは」

富岡「日本の所得税は、まだ低いのです。所得税と法人税の欠陥を直せば、消費税はなくてもよいのです。(日本の法人税が高いからと言うのなら)逃げたいなら逃げればいいのではないでしょうか。

 でも、その人は戦争になったらどこの国に守られるのでしょうか。自分の国が立派だからこそ、海外に行って、日本人らしく振る舞えるのでしょう。満州(国)のことを思い出してみるといいと思います」

岩上「消費増税は、この国から逃げ出せないドメスティックな人間への負担になります」

富岡「大企業は消費税増税に賛成しています。円安が裏目に出て、日銀が物価を上げるのは良くないのです。自分の国の貨幣が安くなって喜ぶ国は他にはないのです。

 財務省の役人の力は、政治家よりも強い。役所が作った法律を国会に持ち込んでも、一字一句変えずに可決されます。自民党時代と民主党時代に出てきた法律は、書き方まで同じ。政治家は官僚が作ったペーパーを読むだけ。

 政治を動かす学者になろうと思いました。政治権力のアカウンタビリティを継承する学問です。私は理想を言っています。でも、学者が理想を言わなかったら、この世は闇ですよ」

各党の公約のなかの税制――衆議院解散総選挙に臨んで

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  1. 宝くじ当選者になったら より:

    もし宝くじに当たっても、莫大な資産を「トリクルダウン」はしないと思う。
    得たお金は「内部留保」して、税金天国があるんだったら利用もしたい。
    献金や寄付はあんまりしない(IWJには多分します)と思います。
    大企業は儲けても、けちになる一方ですよ。
    税金逃れは脱税じゃなのだから、仕方ないとも思います。
    だたし政府による優遇は必要ない、と思います。

  2. あのねあのね より:

     シベリア等抑留や、満州や朝鮮半島やからの引揚者の方々が引き上げ体験を綴った本が平和祈念事業特別基金から発行されています。平和の礎という題名の単行本で水色のハードカバーの単行本です。全18巻で、ネットで全ての内容が公開されているようです。

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