【大義なき解散総選挙3】「アベノミクス解散」に憲法上の疑義! 衆議院の解散を、総理の「専権事項」と言って済ましてよいのか 郷原信郎弁護士に、岩上安身が聞く〜 岩上安身によるインタビュー 第484回 ゲスト 郷原信郎弁護士 2014.11.21

記事公開日:2014.11.22取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・平山茂樹)

 11月21日(金)、衆議院が解散された。安倍総理はこの日の夕方、記者会見し、「この解散は、アベノミクス解散だ」と述べ、今回の選挙の争点がアベノミクスの是非であることを強調した。

 衆議院の解散は、一般的に、総理大臣の専権事項であると理解されている。実際、「解散風」が吹き始めた11月上旬以降、報道陣から解散の時期について聞かれた安倍内閣の閣僚たちは、「解散は、首相の専権事項だ」という回答を繰り返した。

 しかし、今回の安倍総理による衆議院の解散には、憲法上、重大な疑義があるのではないか――。そう疑問を呈するのが、弁護士の郷原信郎氏である。郷原氏は、11月17日付けの自身のブログで、「今回の解散は憲法が内閣に与えている衆議院解散権という点からも、問題がある」と記している。

 なぜ、今回の解散について、憲法上の疑義があると言えるのか。そして、解散総選挙でアベノミクスの是非を問うことに、どのような問題があるのか。11月21日(金)、岩上安身が郷原氏に緊急インタビューを行った。

■イントロ

  • 郷原信郎氏(弁護士、元東京高等検察庁検事)
  • 日時 2014年11月21日(金)16:00~
  • 場所 郷原総合コンプライアンス法律事務所(東京・六本木)

日本国憲法7条と69条~内閣不信任案可決への拒否権としての衆議院解散

岩上安身(以下、岩上)「本日、衆議院が解散されました。しかし、今回の解散が本当に許される解散なのか。憲法に反しており、解散権の乱用なのではないか。こうした疑義が呈されています。本日は、そういった疑義を呈された郷原信郎弁護士に、お話をおうかがいしたいと思います」

郷原信郎弁護士(以下、郷原・敬称略)「ほとんどの人は、衆議院の解散権というものは、総理大臣に帰属していると、総理大臣が好きな時に解散していいのだと、そう理解していると思います。しかし、憲法の規定を素直に読むと、そうとは言えないんですね。

 憲法69条に、内閣不信任案が可決された際、そのことへの対抗手段として、総理大臣が解散をできる、とされています。

 また、それとは別に、天皇の国事行為を定めた7条に、衆議院を解散することが書いてあります。これまで、憲法7条にもとづく解散が慣例化してきました。しかし、国事行為は、政治的判断がはさまれないものです。衆議院の解散は、憲法に明記してある場合に行う、というのが、素直な解釈ではないでしょうか」

岩上「確かに今回は、野党から不信任案が出されたわけでもなく、追いつめられての解散というわけではありませんね。そもそも、なぜ、野党の内閣不信任案への対抗手段として、首相の解散というものが憲法で認められているのでしょうか」

郷原「そもそも、議院内閣制のもとでは、国民が国会議員を選び、国会議員が内閣を信任する、という仕組みになっています。

 その場合、国会により信任されていたはずの内閣が、不信任をつきつけられたとなると、国会と内閣のどちらを信任するのか、国民に信を問おうじゃないか、ということになります。これが、憲法69条における衆議院解散です。これは、議院内閣制のもとでは、自然なやり方ですね。

 しかし、日本の場合、内閣不信任案が可決をされて解散、というケースのほうが少ないんですね。ほとんど、憲法7条にもとづいて、内閣の判断だけで行われてきました。

 その後、解散権の帰属についてあまり議論されないまま、政治的な妥協の産物として、憲法7条による解散というものが慣例化してきました。一方、解散によって議席を失った苫米地議員という方が、解散は違憲であると主張して議員歳費を請求する訴訟を求めました。しかし、最高裁は、統治行為論を採用し、上告を棄却しました。

 重大な政策課題について、国民に直接信を問う場合、憲法7条による解散もあると、私も思っています。しかし、今回の解散がそれにあてはまるかどうか」

「実質的に見て、憲法が認めている解散ではないのではないか」

岩上「本来、選挙というものは、多くの争点があるものだと思うのですが、今回の解散は、政府としては、アベノミクスの可否、あるいは、消費税再増税の可否、そのあたりだけを争点にしたいのだと、そう報じられています。しかし、安倍総理は消費税増税を延期したわけですが、景気を悪化させた責任は、安倍総理自身にあるのではないでしょうか」

郷原「憲法69条による解散ではなく、憲法7条による解散が許されるのだとしたら、選択肢というものを、明確に提示しなければいけませんよね。どういう政策に関して、国民が何を判断すべきか、はっきりさせないといけないと思います。

 しかし、今度の解散はなんのための解散なのか、ぼやかされている感じがします。任期4年のうち、まだ2年しか経っていませんよね。実質的に見て、憲法が認めている解散ではないのではないでしょうか。こんな、GDPがマイナスの状況で、再増税をやれという意見は少数ですよね。与党も野党も、この点について、意見の相違はありません。ですので、再増税を選択するための選挙とは思えません」

岩上「GDPが2期連続のマイナスですし、円安誘導をしたことで、輸入価格が非常に高くなり、貿易赤字が史上最高になりました。脱デフレと言いますが、悪性のインフレである可能性があります。経済自体はパイが縮小して、物価だけが上がっていく。これが、アベノミクスと消費税増税の結果であるように思えます。総理は、このアベノミクスについて信を問うと言っていますが、そういうことが成り立つのでしょうか」

郷原「その場合でも、アベノミクスについて、国民がどう判断すればよいか、もう少し選択肢がはっきりと示されるべきでしょう」

アベノミクスによる円安と株高は、日本のほとんどの企業のためになっていない

岩上「郷原さんは、今回のブログの中で、まるでエコノミストのように、株高の理由について書いていらっしゃいますね。この点について、説明していただけますでしょうか」

郷原「ドルベースで見ると、円安になれば、日本株は割安になります。当然、そのぶんだけ、日本円で計算した時には、日本の株は上がります。ある意味、当然ですよね。

 これまでの常識からすると、円高だと企業業績が悪化し、円安だと輸出企業の輸出が拡大する、と言われてきましたね。しかし今、貿易赤字が拡大しています。海外に生産拠点が移っているから、輸出は拡大しないわけです」

岩上「すべての企業が、海外展開をしているわけではありません。日本の大多数の中小企業は、国内で回っているわけですから、アベノミクスの恩恵を受けているわけではないですね」

郷原「企業業績が向上したぶんが、賃金の上昇につながれば、働いている人に、株高と円安のメリットが行き渡っていると言えるのですが、全然そうではありませんね。数字上、雇用が拡大しているのは、公共投資を増やした関係で、建設労働者の雇用が増えているだけですね」

岩上「しかも、非正規社員の比率が拡大しています」

郷原「第三の矢というのは、ベンチャー企業がどんどん伸びるように、色んな規制を緩和しようというものですね。しかしそれは、大きな負担と犠牲が伴いますよね。そのことを、国民に、選択肢として提示すべきですよね」

日経平均株価のトリック ~異様に高い2つの銘柄

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  1. この人に国の防衛が任せられるか より:

    「大義なき解散総選挙」その法的問題について、さらに経済の動向について興味深く拝聴しました。
    このような不可解な解散をして政策の信認を得ようとする政治家に、まともに国を守る仕事を任せられないと思います。

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