約1億3200万円の所得税を脱税したとされ、東京国税局に告発され、東京地検特捜部に起訴されたものの、一審で無罪判決、検察の控訴が棄却されたことで無罪が確定した元クレディ・スイス証券の八田隆氏が、5月16日(金)に記者会見し、検察庁と国税局を相手取り、損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
(IWJ・松井信篤)
約1億3200万円の所得税を脱税したとされ、東京国税局に告発され、東京地検特捜部に起訴されたものの、一審で無罪判決、検察の控訴が棄却されたことで無罪が確定した元クレディ・スイス証券の八田隆氏が、5月16日(金)に記者会見し、検察庁と国税局を相手取り、損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
■ハイライト
会見で八田氏は、16日付で国家賠償請求の訴状を提出したと報告。強制捜査以来5年が経過していることから、逸失利益は1年あたり1億円、あわせて5億円を請求すると八田氏は明かした。
八田氏は国賠審のハードルは高いとしながらも、たとえ反則を犯しても、ペナルティーを払わなくてもいいという行為を改めるよう注意喚起をしたいとの思いからす国賠審を決意したという。
また八田氏は、賠償金の原資は税金であることから、社会へ還元するため、裁判経費を差し引いたお金で基金を作って、刑事司法改革のための活動をやりたいと語った。そして、現在の刑事司法には冤罪を生み出す仕組み存在し、システムを変える必要性を訴えた。
八田氏は、捜査に関しては初動の捜査に誤りがあっても仕方がないとしながらも、「引き返す勇気がなかったのではないか?」と推察した。
喜田村洋一弁護士は国の違法行為の内容として、以下の4つを上げた。 ・東京国税局による告発 ・東京地方検察庁検察官による公判請求 ・東京地方検察庁検察官による控訴提起 ・東京国税局によるリーク
喜田村弁護士は、ある日一斉にメディアに八田氏が告発されるという記事が出たのは、東京国税局しか出どころがなく、「これは明らかに国家公務員法違反だ」と語った。くわえて、八田氏の名誉を傷つけたという点でも、違法にあたるという。
会見に同席した郷原信郎弁護士は、検察の「違法の程度は極めて大きい」と述べた。脱税犯として一市民を摘発するならば、有罪の確証をもって告発、起訴しなければならず、一審で前提としなかった新証拠がなければ控訴してはいけないという不文律を無視した検察の行為に対して、「この事件は異常な経過であった。判決は当然である」と語った。郷原氏は、検察の違法行為がなぜ行なわれたかを明らかにするべきで、この訴訟の社会的な意味合いは強いと語った。
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