【沖縄県知事選スペシャル】喜納昌吉氏、出馬の意志固く 8日の「不出馬を示唆」から一転、立候補に踏み切った経緯を岩上安身に語る ~ 岩上安身によるインタビュー 第468回 ゲスト 喜納昌吉氏 2014.10.15

記事公開日:2014.10.16取材地: テキスト動画独自
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(取材:岩上安身、記事構成:藤澤要)

 沖縄県知事選の告示を2週間後に控えた10月15日、元参議院議員でミュージシャンの喜納昌吉氏(66)に岩上安身がインタビューを行った。

 当初、今回の沖縄県知事選には、現職の仲井真弘多氏(75)、那覇市長の翁長雄志氏(63)、元郵政民営化担当相の下地幹郎氏(53)の3人が立候補を表明。それぞれの辺野古移設に対する立場は、仲井真氏が「推進」、翁長氏が「反対」、下地氏が「県民投票に委ねる」と分かれた。

 3者の争いかと思われた後、民主党沖縄県連の代表だった喜納氏も立候補の意志を明かし、仲井真知事による辺野古埋め立て承認を「撤回」する考えを示した。辺野古移設に「反対」の翁長氏に対し、「撤回」とより踏み込んだ発言をした形だ。

 喜納氏と翁長氏との間で票が割れるとの見方も出る中、喜納氏は8日、翁長氏が、仲井真知事による辺野古埋め立て承認の撤回を公約することを条件に、出馬の取りやめを示唆。「県民世論は(承認の)撤回であり、そこが一番の妥協点になる。翁長氏がのめば、私が出る理由はない」と話した。

 この申し入れに翁長陣営が応じなかったため、喜納氏は10日午前、民主党県連代表を辞任し、出馬する意向を示した。

 民主党本部は10日午後の役員会で、出馬に踏み切る考えの喜納氏を除名とする方針を決定。14日の常任幹事会では、除籍処分が正式に決定され、あわせて、特定候補への公認および推薦を出さないとする党の方針を決めた。

 15日のインタビューで岩上安身は、「翁長氏が条件をのめば不出馬」という意向は変わったのか、と質問。喜納氏は次のように答え、あらためて立候補する意志を強調した。

 「その後(8日の記者会見の後)に、翁長さんに会いに行っています。そして、正式に『のめない』という文章をもらいました。文書をもらいましたから、私は正式に立候補するということです」

 このほか、インタビューは喜納氏の描く「グローバルビジョン」へと展開する場面も。喜納氏は、「軍産複合体という病」がはびこる世界の中で、沖縄が果たす役割について大いに語った。

■イントロ

  • 日時 2014年10月15日(水) 14:30~

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※以下、実況ツイートをリライトし再構成したものを掲載します

なぜ立候補の意志を固めたか

岩上「沖縄県の那覇に来ています。本日はミュージシャンで、前民主党沖縄県連代表の喜納昌吉さんにインタビューさせていただきます。喜納さんとはTPP反対集会でお目にかかったことがありますね。

 有力候補と言われる、現職で自民党が応援する仲井真さんと、その他の勢力が推す翁長さんとの一騎打ちという構図に、喜納さんが割って入った、とされています。

 そこで、今回の出馬の経緯を教えていただけますか」

喜納氏「もともと私が出るという考えはありませんでした。しかし、民主党沖縄県連の独自候補を出すことは考えていました。それが、ある日突然、県連の頭越しに、民主党本部から翁長さんを支持するという談話が出た。それはないんじゃないかと思いました。ずっと辺野古埋め立てに反対してきた県連と党本部とでは、政策が合わないでいた」

岩上「『日米合意を尊重するという』という党本部の方針と、県連との間でねじれがあったということですね」

岩上「沖縄の民主党の皆さんは一貫して辺野古反対を貫いてきた。ならば今度の民主党本部の動きは、沖縄に対しての妥協だとは言えないでしょうか」

喜納氏「安全保障問題に関して、民主党でも自民党でも、沖縄が蚊帳の外に置かれてきたと疑念を感じてきました」

 党本部には、日米合意を撤回するかどうか。翁長さんには、辺野古埋め立て承認の撤回をするかどうか、それぞれ確認しました。どちらかをのめば私は納得できた。

 なぜ、私が意固地になってそれを確認したいか。鳩山政権は権力を取ってから約束を反故にしてしまったからです」

岩上「翁長さんは、仲井真さんが県内に基地を作らないという公約を撤回したことに対して半旗を翻した人ではないのですか?」

喜納氏「そこまではいいのですが、私は担保が欲しい」

岩上「鳩山さんや仲井真さんのようなことが起こりえるということでしょうか」

喜納氏「大いにあると思います」

岩上「翁長さんと、お会いして話したのですか」

喜納氏「ご本人の言い方は、『賛成して基地が作られるより、反対して作られたほうが交渉できるでしょう』というもの。彼の頭には基地が作られているのです」

辺野古埋め立て「反対」と「撤回」の違い

岩上「翁長さんは『反対』。喜納さんは『撤回』ですね。この違いは」

喜納氏「『反対』は政治的な力がない場合でもできますね。『撤回』となると行政的責任があり、裁判まで持ち込むことになる。7割8割の県民の世論があるのだから行政的処分として堂々とやるべきです」

岩上「行政法的に言うと『撤回』は事後的に違法となった行政処分を将来に向かって無効とするもの。一方で『取り消し』はそもそも誤った行政処分を無効にするものだそうですが」

喜納氏「専門家に聞いて、この違いについて、今では理解しています。これまでの『撤回』は具体的な反対運動の意味で使っていました」

岩上「翁長さんは『承認、取り消しを視野に入れて取り組みたい』という発言をしているようですが」

喜納氏「視野に入れることは、誰でもできますね」

立候補表明から、民主党からの除籍へ

岩上「喜納さんに下された民主党からの除籍というのは重い処分ですね」

喜納氏「民主党は下野したのだから、日米合意についても撤回すべき。そのほうが国民の支持があります。私は除籍され、ある意味で解放された気分ではあります」

 革新野党は『耐える』ことについては免疫があり、たんに頑固に歴史のトラウマを背負い込んでいるところがある。保守系は、節操がないからかもしれないが、トラウマを払拭していく。

 一度、トラウマを取り除く必要がある。今がいいチャンスだと思います」

泡瀬干潟埋め立て事業をめぐる沖縄市長選

岩上「辺野古埋め立て承認に仲井真さんが転んだ。これに沖縄の市町村の首長さんたちが反対の意志を表明した。しかし途中で態度を変えた人もいます。その中の桑江さんが沖縄市長選に出たときに、喜納さんは応援されたということですが」

喜納氏「桑江さんを応援したわけではありません。私は泡瀬干潟埋め立て事業には反対してきた。しかし県連の中では分裂もあった。生物多様性から見ても泡瀬干潟の問題は、辺野古埋め立てと同じ問題。基地運動であろうが環境運動だろうが関係ない」

岩上「島袋氏を支持できないということで、桑江氏を支持したということですか」

喜納氏「支持ではありません。私一人で決められることではないですから。幹事長もいますし、いろいろな形で」

岩上「東門さんの政治姿勢に受け入れ難いものがあった。また、基地反対運動の頑さを突き破りたい思いがあった。しかし、それが泡瀬干潟埋め立てを推進する桑江さんを支持する理由になりますか」

喜納氏「誤解されています。私は当時、下地幹郎と組んで、右左関係なく再編を狙っていた。橋下さんや、みんなの党と連絡を取りながら」

岩上「つまり、桑江さんを担いで、沖縄発で第三極を作れないか、ということだったと」

喜納氏「橋下さんは沖縄や慰安婦問題に関して失言もあったが、話し方を変えれば捨てたものではないと考えています」

岩上「喜納さんは、右派の方にもシンパシーを感じているわけですか」

喜納氏「私は左翼でもなく右翼でもなく『なかよく』です」

岩上「普天間基地の移設問題で、辺野古が駄目ならどこへ?」

喜納氏「辺野古反対を本当に言うならば、仲井真さんを追い込む必要はなかった。彼は裏切ったというより、追い込まれたと、私は見ています」

不出馬はない

岩上「沖縄タイムス10月9日付けに出ているものですが、喜納さんが『喜納氏、不出馬を示唆 翁長氏の『承認撤回』条件」と報じられています。翁長さんとの「承認撤回条件」ということで、8日に(喜納氏が)記者会見をされ、それを報じたものです。

 記事には「条件次第で出馬を取りやめる意向」とあり、「『撤回』を公約に明記することを条件にした」とおっしゃったそうですね。

 そして喜納さんは『県民世論は(承認の)撤回であり、そこが一番の妥協点になる。翁長氏がのめば、私が出る理由はない』とお話になった」

喜納氏「『取り消し』も言ったが、それは書かれていないのです」

岩上「『取り消し』『撤回』が一番の妥協点になるということですね」

喜納氏「この時点では、『取り消し』と『撤回』の違いについて、分かっていましたから」

岩上「お聞きしたいのは、『条件次第で不出馬』という意向は変わったのか、ということです」

喜納氏「その後に、翁長さんに会いに行っています。そして、正式に『のめない』という文章をもらいました。文書をもらいましたから、私は正式に立候補するということです」

「軍産複合体という病」:沖縄を巡る安全保障問題

喜納氏「泡瀬干潟と辺野古埋め立ての問題は本質的に変わらない。辺野古のコンサルティング料を岡本行夫氏が貰うということを鳩山さんの秘書官から聞いた。なぜ彼がシンクタンクを作り、沖縄までくるのか。そういう構図がだんだん見えてくるわけです」

岩上「喜納さん自身は、嘉手納案を支持していたということですが」

喜納氏「2012年に、ジョン・マケイン氏などの有力米上院議員が、普天間基地を米軍へ戻すプランを日本政府に提示しました。これは一時的に嘉手納に基地を置いて、その後に米軍に返すものです。

 米国は冷戦終了後、戦略として中国をどうコントロールするかが課題となる。そこで沖縄、フィリピンも含めて、中国包囲網と考えた。沖縄が後方支援基地ではなく、前線基地になるということです。米国は、海兵隊を沖縄から出したいと考えています。

 辺野古に自衛隊が入ってくることを目隠しするために、メガフロートがあると、私は見ています」

岩上「米国にとって都合のいい中国にするために包囲網をつくる。時にはドンパチが起きる。それまで中東での戦争の後方支援基地だった沖縄が前線基地となる。

 米国は海兵隊を退かせた後、日本の自衛隊を後がまに置きたいということですね」

喜納氏「米国は軍産複合体という病にかかっています。中国もロシアも同じ、国家はこの病気に罹る。それを治さないといけないと考えています。

 日米安保の片務性が言われますが、日本は右翼も左翼もしっかりこの現実を見つめてほしいと思います」

「すべての武器を楽器に」:喜納昌吉の「グローバルビジョン」とは

岩上「自衛隊が米国の盾になるということですね。米国を戦争に『巻き込む』などという主張もあります」

喜納氏「米国を『巻き込む』というのは本能的には間違っていないが、人間は理性にも生きている。知性もある。それを越えるようなグローバルビジョンを日本が出せばいい」

岩上「喜納さんのグローバルビジョンとは」

喜納氏「私は『すべての武器を楽器に』と言っています。

 人類が抱えている温暖化問題、気候変動など問題は地球単位。しかし対策は国家単位でやっている。国連は常任理事国という既得権を握る国によりコントロールされ、機能していない」

岩上「自民党は原発推進の一点張りです」

喜納氏「安倍政権は富国強兵で綱渡りをしている感じがしています。沖縄は辺野古問題だけにとらわれないほうがいい。グローバルな網というのは国連にしても、IMFにしても、TPPにしても全てヨーロッパ文明から出されている」

 そろそろ沖縄を使って日本がグローバルな網を出してもいいのでは。尖閣は日中どちらのものでもなく、人間のものでもなく、アホウドリにも権利がある、というくらいの概念革命があってもいい。

 沖縄には軍隊も財産も何もないから『地球規模のホラ』を吹けるのではないでしょうか。そこに真面目に日本が参加すればいい。それくらい大胆な戦略を持った人が出てこなければ、こんなに狭くなった地球の問題を解決できない」

オスプレイが飛ぶ日本の空と「有事体制の完成」

喜納氏「小泉政権で有事法制ができた。オスプレイが日本上空を飛ぶことは、有事体制が完成したという宣言だと私は見ています」

岩上「日本のどこの場所も、米軍が使えるということですね」

喜納氏「私は、自衛隊が沖縄に『入る』ことは問題ないと思う。しかし米国に『入れられる』ことには反対。たんに傭兵となってしまうのか。軍産複合体という病は、中国、台湾、日本で紛争が起きれば儲かる」

岩上「『なかよく』の喜納さんは、田母神さんも認めるという話が出ていますが」

喜納氏「認めるのではなく、田母神さんのような考えに走るのは分かるという意味です」

喜納氏「無用の長物である軍隊をなくしていく、自衛隊にはその先頭に立って欲しい。それは軍隊のありようを全く変容させるということです。自衛隊はPKOの実績がある。地球規模の災害、紛争も含めて、武器も解体し、新しい人類福祉の機関を日本が先頭に立ち、沖縄をステージにして提唱していけばいい」

岩上「田母神さんと組むという話ではないわけですね」

喜納氏「彼のような結論に屈折するようなことは分かるという意味です」

喜納昌吉の沖縄独立論:「国家を持つ独立運動には与しない」

岩上「戦後、沖縄の主権回復の可能性があったことが、忘却させられていったということですが。独立論に関してお考えはありますか」

喜納氏「敗北というトラウマに抑圧されています。民主党であろうが自民党であろうが日米合意に持っていこうとする。

 終戦50周年のとき、沖縄のくり船で、与那国島から鹿児島、広島、長崎まで航海したことがあります。その時に極限状態に置かれ、黄色いチョウチョが見えてきた。下を見たら鮫がいる。上には鳥。そんな中、携帯電話の電波は国境を越えることに気づいた。

 つまり、国家を持つ独立運動には与しないということです」

翁長氏が何を言おうと出馬する

岩上「翁長さんが何を言おうと、出馬しますか?」

喜納氏「私が『オール沖縄』を唱えるならば、私が当選した暁には、副知事を下地さん、顧問を仲井真さん、辺野古担当者を翁長さんにします」

岩上「出るんですね?」

喜納氏「サイレント・マジョリティが、出なさいと言っています」

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