国立競技場の建替えにさまざまな業界や市民から疑問の声が上がる中、2013年10月から新国立競技場建設計画に異議を唱えてきた「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は9月26日(金)、国立競技場の解体に着手しようとする日本スポーツ振興センター(以下、JSC)に抗議するシンポジウムを日本青年館で開催した。
(IWJ・松井信篤)
特集 新国立競技場問題
国立競技場の建替えにさまざまな業界や市民から疑問の声が上がる中、2013年10月から新国立競技場建設計画に異議を唱えてきた「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は9月26日(金)、国立競技場の解体に着手しようとする日本スポーツ振興センター(以下、JSC)に抗議するシンポジウムを日本青年館で開催した。
記事目次
■ハイライト
国立競技場の解体工事に関し、落札できなかった業者が8月28日に内閣府の政府調達苦情検討委員会に「談合の疑いがある」と苦情を申し立ていた。その結果、8月30日に検討委員会は入札書や工事費内訳書の提出期限7月16日より前にJSCが内訳書を開封しており、「入札手続きの秘密性保証の観点から看過しがたい」と指摘した。
これにより、政府調達のルールを定めた世界貿易機関(WTO)の協定違反と認定した。
検討委員会は入札のやり直しを提案し、JSCは同日、解体工事を落札した業者との契約を破棄して提案を受け入れると表明している。3度目の入札を経て、解体開始は12月中旬になる見通しだという。JSCは解体と並行して建設工事をすることで予定通りの2019年3月の工事完了を見込んでいる。
国立競技場を解体しない改修案は、これまでさまざまな建築家が発表している。一方、2011年にJSCは、久米設計に改修の調査と改修案を依頼していた。
これについて、「東京にオリンピックはいらないネット」の渥美昌純氏は、2013年11月26日にJSCへ久米設計に委託した調査の結果がわかる文書の情報公開請求を行なっている。開示請求のあった法人文書の開示・不開示の決定は、原則として開示請求があった日から30日以内となっているが、事務処理上の困難やその他の正当な理由により、30日以内に決定することが困難な場合は、30日以内に限り決定の期限を延長するとなっており、2014年4月1日に開示決定された。
しかし、開示されたのは概要版(下記リンクのPDF)のみであったため、概要版の請求費用を払った上で、再度4月4日に詳細版を請求し8月29日までに開示決定されるはずが、いまだ開示されていない状況だ。
渥美氏は「情報公開という法律に則ってやっているのに、(JSCは)こういうことを平気でやる」とJSCの対応を批判した。
千葉商科大学政策研究科博士課程の桑原洋一氏は、「誰がコストを負担するのか」をテーマに登壇した。
桑原氏は、天然芝と音楽イベントを両立させる新国立競技場の運用には無理があると指摘する。天然芝を育てるためには、人工照明や送風機などで品質を上げる必要があり、良好な音響特性の最適化のために、可動式遮音天蓋も必要であることから、コストが増えて投資効率が悪いという。 加えて、JSC収支計算を公益中心事業(オリンピックや競技イベントなど)と民業的事業(音楽コンサートやプレミアム会員事業など)で仕分けし、規模のコストを割り出した。それによると、収益50年分の現在価値から工事費、大規模改修費を引くと、公益、民間合わせて2233億円の赤字だという。 桑原氏は、天然芝の場と室内複合イベントの場を分けて、持続可能性とコストパフォーマンスを追究する必要性を語った。
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