2014年7月10日、小野寺五典防衛大臣(当時)はワシントン近郊の国防総省で、米新型輸送機オスプレイに試乗した後、同輸送機の購入費を来年度予算の概算要求に計上すると記者団らに言明。それから10日後の20日には、佐賀空港(佐賀市)へのオスプレイ配備を目指す意向を表明した。
政府はすでに、今後5年間の防衛力整備の方針を示す中期防衛力整備計画に、2018年度までにオスプレイ17機を陸上自衛隊に導入すると明記している。米政府も2014年8月末までに価格交渉を妥結させたい考えであることが伝えられたが、オスプレイといえば何度も墜落していることで有名だ。
小野寺防衛大臣は米国での試乗後に、「その安全性に問題はない」としたが、米国からは、1機につき100億円以上の高値がふっかけられる可能性があり、安倍政権は血税から1700億円以上もの大金を捻出して、17機もの「欠陥輸送機」を米国から買うことになるのか──。
2012年9月20日、衆議院第1議員会館で、沖縄在住の建築家で市民活動家の真喜志好一氏を、岩上安身がインタビューした。
主たるテーマはずばり、オスプレイが持つ危険性。真喜志氏は手製の模型を使った落下実験で、それを視覚的に説明。さらにまた、オスプレイには戦闘能力がないことや、米海兵隊は「殴り込み部隊」ではないことも強調し、安倍晋三首相や保守派の評論家らが口にする「抑止効果論」は、オスプレイのみならず、沖縄に駐留中の米海兵隊にも一切当てはまらないと訴えた。
岩上安身は、2012年9月19日に防衛省と外務省が発表した文書「MV-22 オスプレイの沖縄配備について」の欺瞞性を指摘した。
真喜志氏は「文書は『沖縄にオスプレイを配備するにあたり、可能な限り学校や病院を含む人口密集地を避ける』としているが、これは言葉のまやかしだ」と批判。配備先となる普天間飛行場は、米軍が第二次大戦中に沖縄本島中部の人口密集地に強引に作ったものだと強調し、「基地周辺に大勢の住民が住んでいる。普天間飛行場を離陸したオスプレイが人口密集地を避けることは、そもそも無理だ」と断言した。
また、同文書にある、オスプレイの「オートローテーション機能」についても、「実は米軍は、この機能の活用を断念しているのに、日本政府はオスプレイにはオートローテーションが機能するかのごとくと指摘している」とし、自作の模型でのデモンストレーションを披露した。
ひとつはヘリコプターに見立てた、羽根が大きく錘が軽いもの、もうひとつは、オスプレイに見立てた羽根が小さく錘が重いものだ。この2つを同じ高さから落下させると、前者よりも後者の方がはるかに早く床にぶつかることを真喜志氏は実証した。
「前者の乗務員は、2004年に起きた沖縄国際大への米軍ヘリ墜落事故の時のように重傷で済む可能性があるが、後者は、ほぼ間違いなく即死する」。
そもそも構造的に欠陥がある
オスプレイはヘリ(CH46)との比較で、羽根の面積は約6割だが機体の重さは2倍に達すると真喜志氏は解説。「オスプレイの落下速度は時速90キロ。パイロットがオートローテーション・モードで、被害が少なそうな運動場などの落下場所を選ぶことは困難だ」と指摘し、「オスプレイにもオートローテーション機能があると言えなくはないが、有効性はとても期待できない」と強調した。
オスプレイの「危うさ」は、それだけではない。プロペラの角度を変えて離着陸モードから飛行機モードへの切り替えの段階に陥穽がある──と、真喜志氏は訴える。
「飛行機として滑空するには、揚力を得るためのそれ相応のスピードが不可欠であるばかりか、翼も相応の大きさが要る。が、オスプレイの場合、離着陸モードで浮き上がった時点では速度はゼロ。しかも、翼の幅を広げればプロペラの風が当たって離陸が難しくなるため、翼は小ぶりにならざるを得ない。ヘリと飛行機の『いいとこ取り』は、そもそも不可能なのだ」。
これを聞いた岩上安身が、「オスプレイの危険性については、米国内でもさんざん指摘されており、国内配備への反対の声が上がっている。米政府は自国民の不安や心配に対しては配慮を見せている」と述べると、真喜志氏は「ハワイの米軍飛行場からオスプレイが飛び立って、森の中を飛び回る訓練計画が持ち上がったが、森の中にあるハワイ先住民の墓や文化的な遺跡に『風』を当てられては困るという理由で、地元住民らが反対運動を起こした。米軍は、それを聞き入れて訓練中止に踏み切った」と話した。
オスプレイは抑止力にならない
これに岩上安身が「米政府は相手が日本となると、『オスプレイを配備しろ』と強く圧力をかけ、圧力をかけられた日本政府もまた、米国の要求に唯々諾々として従う」と指摘すると、真喜志氏は「沖縄でオスプレイの配備に反対する声が上がっていることは、米軍はよく知っていると思う。10万人規模の県民大会も開催されているから、反対の声が彼らの耳に入らないはずがない。問題なのはむしろ日本政府の出方で、『沖縄県民があれだけ反対の声を上げているから、オスプレイを配備しないでほしい』と、米政府にきちんと要求しているとは、とても思えない」と応じた。
岩上安身は「オスプレイの問題にしても、普天間基地の問題にしても、日本政府は『日本が抑止力を得るために米軍の国内配備は必要』という主張で、反基地派の訴えを退けようとする」とし、「オスプレイについては、尖閣問題に火がついた場合は、中国海軍への恰好の抑止力になるというウソの主張で国民を丸め込もうとしている」と懸念を表明した。
そして、2005年10月に日米両政府が調印した「日米同盟:未来のための変革と再編」からも、尖閣諸島に中国軍が攻め入ってきても、米軍は日本側について反撃する義務を負わないことが明確である、と強調。「オスプレイの配備は、尖閣諸島を守るために必要と主張する政治家や評論家らに対し、私は何度も『有事になってもオスプレイは何の役にも立たない』と論駁を行った」と語った。
岩上安身が「(百歩譲って)オスプイが抑止力を発揮するために普天間基地を飛び立ったとして、尖閣諸島への中国の上陸阻止や、上陸された後の奪還に役立つとは思えないが」と水を向けると、真喜志氏も「まったく役に立たないと思う」と発言。「オスプレイを尖閣諸島に向けて出撃させたところで、ミサイルを搭載できない、輸送機であるオスプレイに攻撃力はない」と説明した。
米軍は中国を敵視していない
「攻撃力ナシに『抑止論』当該せず」オスプレイ、ヘリと飛行機の「いいとこ取り」不可能 ~真喜志好一氏が岩上安身のインタビューで指摘 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/154169 … @iwakamiyasumi
米国では民間地の上空を飛ばないが、沖縄では自由自在に飛んでいる。
https://twitter.com/55kurosuke/status/600428718880739328