集団的自衛権行使容認をめぐる安倍総理の「嘘」 米艦による邦人輸送を米国は想定せず ~岩上安身による辻元清美・衆院議員インタビュー 2014.6.20

記事公開日:2014.6.22地域: テキスト 動画 独自
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(佐々木隼也)

 「紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子供たちかもしれない。彼らが乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない」――。

 安倍総理は5月15日の記者会見で、「邦人を輸送する米艦の防護」の重要性を強調し、集団的自衛権の行使容認が必要だと国民に訴えた。しかし6月11日、民主党の辻元清美議員が、米国は邦人輸送を想定しておらず、過去に邦人輸送の規定盛り込みを拒否していたことを国会で明らかにし、政府も「米国の方針はそのとおりだ」とこれを認めた。

 安倍総理は国民に「虚偽」の説明をしたのか――。

 6月20日、岩上安身が辻元議員に単独インタビューを行い、この点について詳しく聞いた。辻元議員は米国の公式文書や過去の国会議事録などの資料を基に、「米艦による邦人輸送」の「非現実性」を解説。さらに、過去にピースボートの船で中東へ航行した際、米艦に「取り残された米国人」の救助要請を受けた経験から、「軍の船に民間人を乗せるなんてことは、常識としてありえないこと」と断じた。

■イントロ

  • 日時 2014年6月20日(金)15:15~
  • 場所 衆議院第2議員会館 辻元清美事務所(東京・永田町)

軍の船に民間人を乗せないのは「常識」

 辻元議員はかつて、湾岸戦争勃発直後にピースボートの客船で紅海からスエズ運河へ向かって航行していた際、付近の米艦から「サウジアラビアのジッタに取り残された米国人を拾っていってくれ」と、命令口調で要請を受けた経験を紹介し、「紛争時には、米国や米軍が付近の客船・タンカーに助けを求めるのが実態です。船で仕事をする人たちににとっては、これが常識」と語った。

 米艦が民間人を乗せない理由として辻元議員は、米艦がそもそも攻撃対象であり、万一攻撃された場合に乗せた民間人が巻き添えになるリスクが高いこと、そして避難民に紛れてテロリストやスパイが乗り込んでくる危険性があることを指摘した。

米国務省と米国防総省の公式文書に書かれた「米国の方針」

 さらに辻元議員は、「米艦が邦人を輸送しない」根拠として、「米国務省と米国防総省の民間人避難に関する合意メモ」をあげた。

 インターネット上で公開されているこの米国の公式文書には、「第三国の市民の避難」について、「国務省は、外国政府と、同国民の退避について正式の協定を結ぶことを控えている」と記載されている。合意メモには「正式の協定」を結ばない理由として、「米国政府の能力が制限されることがある」「全ての米国人が退避した後も、退避作戦を継続することを義務づけられることになりかねない」、さらに「米国政府、特に国務省に対する潜在的費用は、われわれの財政能力をはるかに凌駕する」と書かれているのだ。

 そして米国の各国政府への対応として、「(カナダ及び英国を含む)全ての外国政府に対しては、自国民の退避のための計画を策定し、米国政府の人的・物的資源(resources)に依存しないよう要請する」とある。辻元議員は「つまり米国は、事前に『あなたの国の国民を助けてあげますよ』という協定は結ばない、ということ」と指摘した。

(*)辻元議員が国会質問時に使用した『合意メモ』は、議員のブログから入手可能。

 辻元議員が外務省に対して、日本が米国とこのような「正式の協定」を結んでいるのかを確認したところ、「結んでいません」という答えが返ってきたという。

戦時において「米艦に邦人を助けてもらった事例」はない

 辻元議員はさらに外務省に対して、これまで湾岸戦争やイラク戦争の時に、米軍輸送艦に日本人が助けてもらった事例があるのかを正式に文書で問い合わせた。これに対する外務省の回答は、「そういう事実は一切ありません」というものだった。

 この点については、「リビアで内戦があった時に民間のチャーター船で救助されたなど、幾つかの前例がある」という反論がある。これに対し辻元議員は、「内紛や政情不安と、戦争の当事者の船に避難民を乗せることを混乱している議論。外務大臣自らが、そういうことを言っている」と指摘した。

政府が認めた米国の方針「邦人輸送は想定せず」

 産経新聞は6月18日のトップ記事で、1997年に改定された日米ガイドラインに関連して、「自衛隊法に(邦人輸送の)規定が整備された。米側の意向で周辺事態法に盛り込まれなかった事実はない」とする防衛省の辰己昌良報道官の発言を紹介。「米艦の邦人輸送は有り得る事態だ」としている。

 これに対し辻元議員は、1999年3月の国会で、この改定ガイドライン(新しい日米防衛協力のための指針)に基づく法案が協議されていた時の議事録を紹介した。議事録を見ると、後に防衛大臣も務めた自民党の中谷元議員(自衛隊のレンジャー部隊出身)が、米艦による邦人救助について、「ガイドラインに盛り込むよう米国に要請したが断られた」と証言している。

(※)外務省サイト「日米防衛協力のための指針」

 そして産経新聞が示す文言について、「それは言い過ぎではないか」と指摘した。

 ガイドラインには、「日米両国政府が各々主体的に行う行動における協力」という項目に、「非戦闘員を退避させるための活動」が含まれている。そこには、「日米両国政府は、自国の国民の退避及び現地との関係について各々責任を有する」とある。辻元議員は、「『相互補完的に協力する』とは書いてあるが、力点は『各々責任』にあるということ」と分析した。

 つまり、あくまで「個々がやること」に対する「協力」であり、「非戦闘員を運ぶ」という約束にはならないことになる。

 辻元議員は資料をもとに、「米国は邦人輸送は想定せず」ということについて国会の外務委員会で質問。加藤勝信内閣官房副長官は、「米国側の方針はその通りだと思います」とあっさりとこれを認めた。

※産経新聞が「米艦による邦人輸送」の根拠とする「日米防衛協力のための指針」については、同日の孫崎享氏へのインタビューにおいて、孫崎氏がその「読み解き方」を詳細に解説。産経新聞の主張を否定した。こちらもぜひご覧いただきたい。

米国務省「米軍の救出を期待するのは、ハリウッドに影響されすぎ」

 また辻元議員は、米国の国務省領事局がパスポート取得に関して、米市民に向けた案内サイトに記載している文言を紹介した。

(*)米国務省領事局のパスポート取得案内サイト

 この案内サイトには、「国務省が、ある国への旅行注意情報を出しているからといって、その国にいるアメリカ市民の救出をアメリカ軍が支援してくれると期待しないで下さい」と書かれている。

 さらに、「米軍のヘリコプターや米国政府の輸送機が護衛付きで救出してくれると期待するのは、ハリウッドのシナリオに影響されすぎていて、現実的ではありません」とまで、自国民向けに書かれているのだ。辻元議員は、「インターネットで公開されているにも関わらず、安倍総理はこうした事実を知らないらしい」と批判した。

必要最小限度の限定的行使も「相手から見たら先制攻撃」

 安倍総理が掲げる、「必要最小限度の限定的な集団的自衛権行使」について、辻元議員は「安倍総理は、あまりに軍事的なことをご存じない。全くのバーチャル・リアリティの世界にいる」と痛烈に批判した。

 「米艦を自衛隊が防護するとします。米艦を狙う潜水艦が遠くにいて、これを日本が撃沈したら、相手国から見れば、『我々は日本に喧嘩を売っていないのに日本が攻撃してきた』となってしまうでしょう。その反撃として原発にミサイルが飛んできたら、日本は壊滅します」。

 こうした「戦争リスク」「戦線拡大リスク」についても、安倍総理は国民に詳細に説明してから国民投票にかけるべきと語った辻元議員は、「それを与党の密室協議で閣議決定の紙切れ一枚で戦争の鍵を開けようとしている。戦後最大の愚かな総理です」と語気を強めた。

 さらに安倍総理が「ペルシャ湾での機雷除去による後方支援」を訴えていることについても、「海の掃除をするのではない。武力行使の一環であり、確実に相手から攻撃される行動だ」と批難した。

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20件のコメント “集団的自衛権行使容認をめぐる安倍総理の「嘘」 米艦による邦人輸送を米国は想定せず ~岩上安身による辻元清美・衆院議員インタビュー

  1. 26:43~ 日本の首相はハリウッド映画の観過ぎ。現実とフィクションを混同中!XD

  2. 非常に分かりやすい映像でした。多くの国民は盲目のまま、安倍晋三首相の言葉を鵜呑みにして、集団的自衛権に賛成する方が多くいると思います。この”真実”を多くの人々にも知っていただくよう、無理かとは存じますが、これだけは”永久無料”で配信していただけたらと思います。

  3. 「米国は邦人輸送を想定していない」というのはその通りでしょうが、その他の事例についても、確定的なことは言えないというのが実状ではないでしょうか。そもそも具体的事例を列挙すること自体無理があるのです。具体的なことは、その場にならないとわからないのです。わからないからこそ用心には用心をということになるのではないでしょうか。事実真理というものは永久真理とは違い、普遍化できない、一般化できない、一回限りで繰り返すことのない事実なのです。安倍首相の具体的事例がおかしいからといって、集団的自衛を否定する根拠にはならないのです。辻本さんは集団的自衛行使容認には反対のようですが、反対の理由を明らかにしていません。まさか、共産党のように「外交努力で」とか「話せばわかる」ということではないとおもいますが。中国は、過去も現在も未来も、国際社会は「自力救済社会」であると見抜いているのです。そうでなければ、異常な軍事増強はなかったはずです。辻本さん、私たちは一体どうしたらいいのでしょうか?

  4. 安倍首相の無知・無教養ぶりがよくわかる。まるで、子供だね・・・戦争好きなのだね・・・

  5. 子供には危ないオモチャを持たせてはいけない・・・

  6. 6月20日(金)、衆議院第2議員会館で、辻元清美衆議院議員に岩上安身がインタビューを行った。戦争に最小とかちょっとだけはない、相手から見たら無意味な話だ。

  7. 戦争時に米輸送艦によって邦人が輸送された事例は過去になく、米国政府それを断っている 5・15の安倍総理の米国輸送艦に救出された日本人を自衛隊が守らないといけないという会見はありえない話

  8. 安倍さんばかりの@nhk_newsが一度でも報じてくれればよいのに 
    米国務省は自国民に対し「米軍の救出を期待するのは、ハリウッドに影響されすぎ」

  9. 軍の船に民間人を乗せないのは「常識」

  10. IWJ 佐々木さんもお勧め。6月26日まで非会員のかたにも全編特別公開!

  11. おもしろい。はっきりしていていいなぁ。

  12. 日本を壊滅させることを安倍は考えていると思いますけど

  13. 辻本氏の好き嫌いはあるかもしれんが、これは必聴

  14. 辻元清美議員の経験や、アメリカ軍の公的見解を参考にしながらのインタビューはとても勉強になりました。
    すべてが欺瞞に満ち溢れている日本です。今後さらに、IWJの真摯な報道、取材が貴重な情報源となっていくと思います。
    それから、私が気にしすぎかもしれないのですが、「セウォル号」に関する発言は不適切では。インタビューの内容とは関係ないです。

  15. 日本を守るには日本国憲法の遵守と非武装平和

  16. ★首相、今日の会見でも同じ言い訳使ってたね。

  17. 政治的に対立する仮想敵国扱いの中国の軍艦ですら邦人脱出実績が出来たので上記の議論は根本から崩壊しましたね。

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