2004年に立ち上げられた非正規雇用フォーラムも今年で10年目を迎えた。国内非正規労働者は2000万人を超える中、安倍政権は「企業が世界で一番活躍できる国」を掲げ、労働法制の規制緩和を進めようとしている。同フォーラムは、宮里邦雄弁護士を新しく共同代表に迎え、「リニューアル・オープン講座」を1月16日、全水道会館で開催した。
(IWJ・鈴木美優)
2004年に立ち上げられた非正規雇用フォーラムも今年で10年目を迎えた。国内非正規労働者は2000万人を超える中、安倍政権は「企業が世界で一番活躍できる国」を掲げ、労働法制の規制緩和を進めようとしている。同フォーラムは、宮里邦雄弁護士を新しく共同代表に迎え、「リニューアル・オープン講座」を1月16日、全水道会館で開催した。
記事目次
■ハイライト
非正規雇用フォーラム共同代表の福島みずほ参院議員は、本講座の開会挨拶として、「今月24日から始まる国会で非正規雇用緩和が提案されるのではないか」と述べ、「今こそ労働法制について力を合わせるべきだ」と強く訴えた。また、昨年12月に可決された特定秘密保護法についても、24日の国会初日に超党派として廃止案を提出することを宣言した。
4月には米国のオバマ大統領の訪日も予定されている。福島議員は、安倍政権がオバマ大統領来日前に集団的自衛権を閣議決定するつもりでないかと懸念を示した。
「非正規雇用、長時間労働の野放しを見直さなければならない」―。
共同代表の宮里弁護士は、現在の企業社会を「砂漠のような企業社会」と例え、現状の見直しが重要だと繰り返し主張した。
また宮里氏は、日本の雇用規制が不十分であると指摘。「我が国の雇用規制は厳し過ぎるとよく言われるが、これはデタラメでインチキだ」と述べ、ヨーロッパ諸国とくらべても日本の労働規制が不十分であると訴えた。
確かに米国では雇用規制が緩和されており、解雇制度も他国と比べて緩やかであるのが現状だ。これについて宮里氏は、「米国と比較すれば日本の雇用規制は厳しいともとれるかもしれない」と語った上で、「だが他の先進国は米国ほど緩くないのが現状だ」と比較相手の見直しを求めた。
昨年9月に東京労働局が実施した、若者の使い捨てが問題となっていると思われる企業に対する調査によると、対象企業9割で労働者への長時間労働が強要されていたことが明らかとなっている。宮里氏は「不十分な規制ですら守れていない」と、現在の労働環境について酷評し、ブラック企業の撲滅を訴えた。
政府・自民党が掲げている、「企業が世界で一番活躍できる国」という戦略について、宮里氏が「もちろん企業は活躍しやすいだろう。しかし、世界一活躍する企業で働く労働者は、世界一不幸な労働者になってしまう」と声を上げると、会場からは賛同の声が上がった。
政府・自民党が進める労働法規制緩和に対し、各労働団体からは反対の声が相次いでいる。しかし現状では、労働者の代表が不在の中で雇用の在り方が議論されており、政府の強引さが目立っている。宮里氏は、「規制緩和論者は反組合主義だ」と批判し、労働法制の規制緩和は労働組合の運動に対する挑発だと怒りを示した。
「アベノミクスという言葉がメディアに登場したときから、この言葉が大嫌いだった」――。
同志社大学大学院教授の浜矩子氏は、「アベノミクスをアホノミクスと呼んでいた」と述たうえで、「よく考えるとアホノミクスでもない。何のミクスでもない」と語った。安倍総理の政策を「何のミクスでもない」とする理由について、浜氏は、安倍政権の政策に「人間が不在」であることを挙げた。
昨年6月、安倍総理は今後の成長戦略を発表し、政策に関するスピーチを行った。浜氏によると、安倍総理のスピーチ内で「人間」という言葉がたった1回しか用いられず、その1回も大阪万博で展示されていた「人間洗濯機」についてだった、と呆れた口調で語った。
浜氏は「経済活動とは人間の営みであること。人間による人間のための、極めて人間的な活動が経済行動だ」と主張し、人間を後景に退かせる行動の在り方を経済活動と呼べないと断言した。
「人間」という言葉が1回しか使われなかった安倍総理の同スピーチでは、「世界」、「成長」の2つの言葉が多用されていた。
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