「原発事業の『特別扱い』が国民を苦しめる」~シンポジウム「大阪府市エネルギー戦略の提言」で古賀茂明氏らが激論 2013.12.8

記事公開日:2013.12.8取材地: テキスト動画
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 2013年12月8日、東京・御茶ノ水の明治大学グローバルフロントで行われたシンポジウム「ドリームチームが提言する『日本の脱原発・エネルギー戦略』」は、単行本『大阪府市エネルギー戦略の提言』(冨山房インターナショナル)の出版を記念するもの。

 この本の著者である「大阪府市エネルギー戦略会議」の元委員、植田和弘氏、古賀茂明氏ら6人が登壇し、原発事業の、「国策」故の優遇性が諸悪の根源との共通認識の下、東電の破たん処理の必要性や今後のエネルギー政策の理想的あり方、さらには放射性廃棄物地中処分の危険性などについて熱く語り合った。

 なお、会場には、菅直人元首相や小池晃議員の姿もあり、適宜マイクを握っている。

■ハイライト

  • 主催あいさつ 坂本喜久子氏(冨山房インターナショナル 代表取締役社長)
  • 植田和弘氏(兼司会、大阪府市エネルギー戦略会議 元会長、京都大学大学院経済学研究科教授)「大阪府市エネルギー戦略会議から見た今日的課題」
  • 第1セッション「いま直面する危機への対応」
    古賀茂明氏(大阪府市エネルギー戦略会議 元副会長、元経済産業省経済産業政策課長)/長尾年恭氏(東海大学海洋研究所地震予知研究センター長)
    発言 菅直人氏(元内閣総理大臣、民主党衆議院議員)
  • 第2セッション「原発依存からの脱却」
    大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授)/河合弘之氏(弁護士)
    発言 鈴木悌介氏(エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議代表、鈴廣副社長)
  • 第3セッション「新しいエネルギー社会をいかに作っていくか」
    高橋洋氏(富士通総研主任研究員)/飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
  • 総合討論
    発言 小池晃氏(日本共産党参議院議員)ほか

 3つのセッションに先立ち、大阪府市エネルギー戦略会議で会長を務めた植田和弘氏(京都大教授)がスピーチした。

 「われわれが属していた戦略会議には『事務局』が存在しない。従って、今般出版した本は、私たちが書いたものがダイレクトに活字化されている」。植田氏は強調し、こういった例は希少、と言葉を重ねた。「われわれ元委員は、国策としてのエネルギー政策に対する疑問を共有しており、であれば、『大阪府市』の立場で、エネルギー政策を考えることに意義があると判断した」。

 そして、「われわれはこの本を通じて、日本で初めて、脱原発に向けた『工程表』を発表している。われわれは、この工程表をいかに発展させていくかが、非常に重要と認識している」と表明した植田氏は、倫理と経済の両面から「脱原発」の意義を考えているのもこの本の特徴、とした。「日本の原発事業から、『廃棄を考慮しない生産』との特殊な部分がなくなれば、原発政策のこれ以上の推進は無意味になる」。

「東電延命」で生じた諸問題

 第1セッションは、最初に古賀茂明氏(京都大大学院教授)が、東京電力の破たん処理の問題で議論した。

 古賀氏は「福島で原発事故が起きてすぐ、つまり3月の時点で、東電を破綻させないことが、経産省官僚の意思で決まっていたと理解している」と発言。「経産省と金融機関の間で『東電を破たんさせない代わりに融資する』密約が交わされていた公算が大きい」などと、当時の裏事情をよどみなく話した。

 古賀氏は、東電を破たんさせないことが、1. 被災者への損害賠償金額の縮小、2. 遮水壁の設置の先送り、3. 除染範囲の縮小、4. 柏崎刈羽原発再稼動手続きの強行──といった問題を引き起こしている、と強調する。

 「これから事故処理の全体のコストは、破たん処理しても、しなくても、基本的には同じだが、国民の負担は変わってくる。国民の立場で言えば『事故処理のために、お金がかかるのはしょうがない。東電だけで払えないこともわかっている。被災者のためであれば、われわれにはお金を払う用意はある。が、無駄なお金は使わないでほしい』となる」。 

 破たん処理すれば、東電の株は紙クズになり、銀行の債権は大幅にカットされる。しかし、その分、東電のお金が浮き、国民負担が減ることになる──。古賀氏は「これが逆であれば、国民の税金と(値上げされた)電力料金で、東電が借りたお金を銀行に返していくことになる」とし、東電を破たん処理する必要性を強く訴えた。

「貸し手責任」回避を目論む銀行

 古賀氏は、東電の破たん処理に「不安」はないと言い切る。一般企業の場合、破たん処理すると、それだけで顧客が逃げてしまい、再生できるものもできなくなるが、「(地域独占で事業展開中の)東電の場合は、顧客が逃げようにも逃げられない。つまり、東電は『破たん処理に適した企業』なのだ」。

 こうした議論を受け、客席からステージに歩み寄ったのが、衆院議員の菅直人氏。事故当時、首相として、東電を破たん処理すべきではないと判断した理由などについて発言した。「破綻処理すると、原発の下請け関係者などが逃げてしまう。つまり、破綻処理より事故処理が優先、と考えたのだ。しかし、今なら破たん処理をしていい」。

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