第27回大阪府市エネルギー戦略会議 2013.4.11

記事公開日:2013.4.11取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

 2013年4月11日(木)9時、大阪市中央区の大阪府庁において、「第27回大阪府市エネルギー戦略会議」が開かれた。今回の会議では、委員4名が出席し、3名がインターネットにより会場外から参加した。会議の冒頭、会議の開催が新年度にまたがったことから、開催規約に基づき、互選による会長職および副会長職の改選が行われ、植田和弘会長(京都大学大学院教授)、古賀茂明副会長(元経済産業省大臣官房付)がそれぞれ再選された。今回の会議では、前回の会議で出された原案に対する各委員からの様々な追加意見を集約し加筆修正を行った内容について、高橋洋委員(富士通総研主任研究員)が説明した。

■全編動画
・1/2(08:59~ 15分間)

・2/2(09:25~ 1時間58分)

  • 出席者
    植田和弘氏(京都大学大学院経済学研究科教授)/大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授)/河合弘之氏(さくら共同法律事務所 弁護士)(※)/古賀茂明氏(元経済産業省大臣官房付)(※)/高橋洋氏(株式会社富士通総研経済研究所主任研究員)/長尾年恭氏(東海大学海洋研究所地震予知研究センター長)(※)/圓尾雅則氏(SMBC日興証券株式会社マネージングディレクター)
    竹柴清二氏(大阪府環境農林水産部理事)/山本仁氏(大阪市環境局長)/※河合委員、古賀委員、長尾委員はインターネットを利用して会議に参加
  • 議題
    大阪府市エネルギー戦略の提言(案)について
  • 日時 2013年4月11日(木)9:00~
  • 場所 大阪府庁(大阪府大阪市)

 1ページ目は、「脱原発を今後どうしていくのか」という内容。長期的ビジョン、放射性廃棄物処理、廃炉処理、安全確保、再稼働時期、原発立地自治体への交付金に代わる制度、電力会社の財務問題、事故賠償の問題について明記した。

 2ページ目には、再生可能エネルギーと電力システム改革について明記した。再生可能エネルギーに関しては、固定価格買取制度の段階的見直しとともに、普及促進を図るための立地規制改革、普及に伴って必要となる系統安定化対策について明記した。電力システム改革については、電気事業法改正による広域系統運用機関の創設や電力小売全面自由化、電力事業の法的分離や所有権分離などについて明記した。

 3ページ目には省エネ、エネルギー効率、化石燃料について明記した。ガスパイプラインの拡充やシェールガス輸入の拡大をにらみつつ、コジェネ設備投資への支援などを明記した。

 4~5ページ目には、大阪府市の果たす役割について明記した。「おおさかスマートエネルギーセンター」の設立や「エネルギー問題ステークホルダー会議」の開催、太陽光発電の導入促進、小水力発電や廃棄物発電の導入、電力需給対策、スマートコミュニティ、ネガワット取引や電力先物取引市場の誘致などを明記した。この中で高橋委員は、「行動計画や施策集は数年間(で区切る)というのが現実的。数年後の環境条件や安全対策などに不確定要因があり、当然、工程表の内容も精緻さも変わっていくだろう」と述べ、現時点で考えられる項目を最大限盛り込みつつも、様々な外的要因によって、実際の工程は変わってくる可能性について言及した。

 これについて、大島堅一委員は、「国民的合意を進めることが脱原発を進める上で重要である」と提言に明記することに関連し、「イギリスで1957年に起こったウィンズケール原発事故では、少なくとも2030年代まで炉心を取り出せない。福島第一原発は、40年ぐらいで何とかしたいという計画となっているが、おそらくもっと長期になるはず。東電の事故処理や賠償について、重大な課題として、どこかに付け加えたほうがいいのではないか」と述べ、事故が起きれば収束まで長期間を要するという前提での国民的合意を促すべきとの見解を示した。

 圓尾(まるお)雅則委員は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度がいつまでも続くというのは健全ではない。自由な競争の中で効率的なものが普及していくのがあるべき姿」と述べた。そして、「コジェネに対する支援で普及を促進するというよりは、普及の障害となっている規制の緩和を徹底的にやっていくことが非常に大事」とし、「1需要地点への電線の引き込みは1本でなくてはダメということになっているが、2本引けるようになると、1本をコジェネでベース電源としてネットワーク(系統電源)に戻し、必要な電源は電力会社から買うというような運用もできる」と具体例を提示した。

 また、家庭用のコジェネシステムには、太陽光発電のように余った電力を買い取る制度がなく、経済的メリットが出にくい点について指摘したほか、「ネットメータリング」という、電力会社から買い入れた電気と戻した電気を相殺するようなメーターの使い方が実現すればコジェネの普及は進むとの見解、さらに、変動型の電力料金で電力需要をコントロールしようとする、北九州市での特区的な取り組みを挙げ、提言や工程に盛り込むことを提案した。

 このほかにも、各委員から様々な提案がなされた。それをもとに、さらなる加筆修正を経て、最終開催となる見込みの次回の会議において、大阪府市エネルギー戦略会議としての集大成となる提言や工程表を発表する予定となっている。

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