【参院選2013争点解説・総論】真の争点は「一部の特権者の金と権力」か「基本的人権」か(【IWJウィークリー第10号】岩上安身のニュースのトリセツより) 2013.7.15

記事公開日:2013.7.15 テキスト動画
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 参院選が、7月4日に公示されました。

 各紙の世論調査を見ると、自民・公明の政権与党に多くの支持が集まっていることが分かります。大きく水を開けられつつも、それに続くのが民主、みんな、維新の各党です。生活、社民、みどりの風といった、「中道リベラル」政党への支持率は、1%にも満たないというのが現状です。自民・公明の政権与党が、圧倒的勝利をおさめるであろうことは、ほぼ動かしがたい趨勢であるようです。

※参院選序盤世論調査~自民支持率増35%、民主は激減6%(朝日新聞7月8日【URL】http://bit.ly/12v0ZL6

※自公、過半数超え確実…参院選序盤情勢世論調査(読売新聞7月6日【URL】http://bit.ly/16TIBez

※本社世論調査:自民45%、民主8%、維新5%(毎日新聞6月30日【URL】http://bit.ly/1arAASD

※NHK世論調査 自民42.5%、民主8.0%、維新2.7%(NHK 7月8日【URL】http://bit.ly/1d9rxTh

参院選、真の争点は、「一部の特権者の金と権力」か「基本的人権」か

 大手メディアは、一様に「争点が見えにくい選挙」と報じています。

 しかし、選挙である以上、争点が存在することは言うまでもありません。否、今回の選挙ほど、深刻な争点が山盛りな選挙はかつてなかったかもしれません。原発の再稼動、TPP、若年層の雇用、外交・安全保障、歴史認識など、上げれば枚挙にいとまがありません。「争点が見えにくい」などという大手メディアのオトボケを真に受けている場合ではないのです。

 これらの争点に関する各党の公約は、本号の「特集・2013参議院総選挙 IWJ選挙報道プロジェクト」のコーナーで、徹底的に比較・分析を行っています。公約の具体的な文言については、まずはそちらをご覧いただければと思います。

 争点は山盛りで、雑然としているように見えますが、よくよく見ると、これらの争点を貫いているひとつの対立軸が浮かび上がってきます。

 それは、ひと握りの特権層だけが利益を得る社会を作るのか、それとも、それぞれの国民の基本的人権、ひいてはその基幹である「いのち」を大切にする社会を作るのか、という対立軸です。

 エマニュエル・カントという哲学者は、「他者を、単に手段として扱ってはならず、同時に目的として扱わねばならない」という言葉を残しています。

 個々の争点を一つひとつ丁寧に比較していくと、現在、参院選での圧勝が予想されている自民党の公約が、カントが言う「他者を、単に手段として扱う」方向を向いていることが分かります。

 国民一人ひとりが、自由に職業を選択し(自由権)、あらゆる種類の差別を受けず(平等権)、人間らしい最低限の生活を保障される(社会権)、という「基本的人権」の考え方の枠組みを無視し、大多数の国民を、一部の大企業や富裕層が利益を得るための、「手段」や「資源」に過ぎないと見なしている、ということです。

 そもそも、現代の日本に、「基本的人権」という考えは定着しているのでしょうか。

 6月18日、国連拷問禁止委員会の場で、こともあろうに「人道人権大使」の任にある上田秀明氏が、「シャラップ!」などという暴言を吐きました。「黙れ!」とは、他人を見下した「命令」であって、公の場で、同等の立場にある各国の代表や市民に対して、使われるべき言葉ではありません。他国の委員のひとりから、日本の刑事司法が容疑者の基本的人権をいかに踏みにじるものであるか批判され、その弁明の際に自ら場内の失笑を買ったあげく、「逆ギレ」して怒鳴ったのでした。日本の官僚がいかに傲慢で、他者を見下しているかが分かる事例です。

(You Tubeより)

 日本国憲法の基本原理は、「平和主義」「国民主権」、そして「基本的人権の尊重」です。しかし、日本ははたして、基本的人権を尊重してきた国なのでしょうか。実のところ、ともすれば、基本的人権がないがしろにされてきた国ではないでしょうか。

 「一部の特権者の金と権力」を選ぶのか、それとも「基本的人権」に立ち返るのか。今回の参院選で、私たち有権者に突きつけられているのは、このような選択肢ではないでしょうか。

原発の再稼動により踏みにじられる基本的人権

昨年末の衆院選では、すべての党が「脱原発」を掲げました。野田内閣のもとで、大飯原発3、4号機を再稼動させた民主党も、「2030年代には脱原発」とマニフェストに明記しました。自民党も政権公約に、「原子力に依存しなくても良い経済・社会構造の確立を目指す」と明記し、「脱原発依存」をはっきりと掲げました。

※2012年度衆議院選挙・自民党政権公約 (【URL】http://bit.ly/17kA9pA

※2012年度衆議院選挙・民主党政権公約 (【URL】http://bit.ly/18fBDoW

しかし、自民党は政権の座に返り咲くやいなや、原発政策に対する態度を一変させました。茂木敏充経産相は、昨年12月26日未明に行われた就任会見において、「原子力規制委員会により安全性が確認された原発については、政府の責任で再稼働を決めていきたい」と明言しました。「脱原発依存」という公約を掲げて政権を奪回したはずの自民党は、あっさりとその公約を覆してしまったのです。

今回の参院選で自民党は、「地元の理解を得つつ」という留保を付けつつも、原発の再稼動をうたっています。

「IWJウィークリー第8号」の「ニュースのトリセツ」でも解説しましたが、6月19日に原子力規制委員会が正式に決定した、原発の廃炉と再稼動を選別する「新規性基準」は、「電力会社の事情」に配慮した「甘い基準」になっています。「緊急時制御室」の設置に5年の猶予期間を認めた他、機器の検査を厳格化した「特別点検」を実施すれば、原発の廃炉に最大で20年間の延長を認めるといった例外が盛り込まれているのです。

その「新規性基準」は、7月8日に施行されました。これを受け、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の4事業者が、施行日初日、原発の一日も早い再稼動を目指し、原子力規制委員会に安全審査申請を行いました。

さらに、福島第一原発事故の収束の目処すら立っていない東京電力が、新潟県の柏崎刈羽原発6、7号機の安全審査を申請すると発表しました。新潟県の泉田裕彦知事が、排気設備と原子炉建屋の土台部分が一体化されていないとして、「安全性について大丈夫なのか」と強い懸念を示しているため、再稼動の見通しは今のところたっていません。しかし、東電側は、引き続き、泉田知事に再稼動の理解を求めていく、としています。

2011年3月11日に発生した福島第一原発事故により、多くの被災者が避難を余儀なくされました。しかし、自主避難者に対する東電からの賠償が成立したのは、発災から2年以上が経過した、4月22日のこと。福島第一原発は、現在も大量の汚染水を地下に漏らし続け、高濃度の放射性物質が海洋へ拡散することも懸念されています。

福島第一原発から拡散した放射能による被曝を懸念し、他県へ移住した方々の「避難の権利」や、福島県内で漁業を営む方々の「地元で安全に生きる権利」が守られている状況にあるとは、現状ではとても言えません。

にも関わらず、安倍政権は、原発の再稼動に向けて邁進しています。

竹中平蔵氏、楽天の三木谷浩史会長、ローソンの新浪剛史CEO、武田薬品工業の長谷川閑史社長といった、日本における規制緩和と新自由主義の進展を主張する財界のトップが一堂に会する「産業競争力会議」(議長・安倍総理)は、6月12日、「成長戦略のためには原発の再稼動が不可欠」という最終報告案をまとめました。

※エネルギーは「原発の再稼動」鮮明(msn産経6月12日 【URL】http://on-msn.com/119HJ50

ここに見て取れるのは、政治家、官僚、電力事業者、財界人といった一部の権力者が求めるのは「経済成長率」という「数字」であって、国民はそのために貢献する「資源」に他ならず、個々の国民の健康や生命や安全な暮らしという価値をかえりみようとしていない、という現実です。彼らが利益を確保するために、「避難の権利」や「地元で安全に生きる権利」、「被曝しないで健康に生きる権利」といった、一般市民の基本的人権を蹂躙してでも、原発の再稼動を推し進めようという図式です。

「先制攻撃論」の高まり

多くの人々は、震災のダメージ、原発と放射能の脅威といったテーマだけで、もう十二分なストレスを味わっています。問題は、しかし原発の再稼動だけではすみません。

2011年の3月11日から1年1ヶ月後の2012年4月16日、当時、東京都知事だった石原慎太郎氏(現・日本維新の会共同代表)が、「尖閣諸島を東京都が購入する」と発言して以来、一気に日中間の緊張が高まり、昨年末に安倍政権が成立して以来、日本の国際的孤立は日を追うごとに深刻になり、改憲、国防軍の創設、そして戦争の可能性が急激に高まりをみせてきました。

今年の4月14日、自民党の石破茂幹事長は、フジテレビの番組内で、「敵基地攻撃能力について検討すべきだ」と発言しました。7月9日に閣議で報告された「2013年度版防衛白書」にも、「敵基地攻撃能力を自衛隊に持たせる議論を始めるべきだ」という記述があります。

※13年防衛白書、敵基地攻撃能力の議論にも言及(日本経済新聞 7月9日【URL】http://s.nikkei.com/15scnI1

これは大変なことです。敵基地を攻撃することは、従来の「専守防衛」の矩をこえ、日本側が開戦の引き金を引くことをも意味します。石原発言からわずか約1年、あっという間に「先制攻撃」論が最前線に飛び出してくるまでにエスカレートしています。

いざ戦争ということになれば、真っ先に被害をこうむるのは、一般の国民です。戦時下において、国民の基本的人権が守られるはずがありません。

なぜ、戦争のリスクが急に高まってきたのか、という疑問と、なぜ電力は不足もしていないし、原発は後処理コストまで入れたら途方もなく不経済なものであるのに、日本の支配層は原発にかくまでしがみつくのか、という謎は、思いがけないところで交点を結びます。

「核武装」の思惑です。

原発再稼動推進の背景にある「核武装」

「自民党が主張する原発再稼動の背景には、核保有論がある」。

そう断言したのは、生活の党の小沢一郎代表です。

7月12日、私のインタビューに応じて、小沢氏は「我々は原発の再稼動は一切容認しない」と表明しつつ、「自民党や、『日本を軍事国家にする』と語った日本維新の会の石原慎太郎共同代表は、近い将来の核兵器保有のため、核技術を温存しておくために、原発を維持しようとしている」とその意図を喝破しました。

自民党が掲げる原発再稼動方針を批判する、生活の党・小沢一郎代表―7月12日、岩上安身のインタビューに応えて

TPPも、「ブラック企業」も…

TPPも同様です。原発同様、日本人の基本的人権をないがしろにする政策であることは間違いありません。

日本はTPP日米事前協議で、牛肉、自動車、保険の分野で米国に対し大幅に譲歩し、外交力のなさを露呈しました。しかし自民党は公約に、「TPP等の経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します」と記しているのみです。

TPPにより関税が撤廃されて地方が疲弊すれば、内需が落ち込み、一般家庭の家計が冷え込むことは目に見えています。家計の冷え込みは、そのまま消費の落ち込みに直結します。消費が落ち込めば、地域の生産額も連動して落ち込むでしょう。

東京大学名誉教授の醍醐聰氏が呼びかけ人を務める「TPP参加交渉からの即時脱退を求める会」は、TPPにより影響を被る都道府県別の試算を独自に算出しました。それによると、富山県が327億円の減(43.8%)、福井県が212億円の減(41.2%)、北海道が4642億円の減(40.3%)と、TPPにより、各都道府県の農業生産が、致命的な打撃を受けることが明らかとなりました。

このような試算がある一方で、先述した「産業競争力会議」のメンバーは、一様にTPP推進を打ち出しています。例えば、住友商事相談役の岡素之氏は、2月26日の会議のなかで、「貿易立国・投資立国である我が国が、持続的に成長していくためには、経済連携の強化が必要。今回、TPP 交渉参加に向けて大きな前進が見られたことは、大いに歓迎し大いに喜ぶところ。また、高く評価したい」と発言しています。

※2月26日 第3回産業競争力会議議事録【URL】http://bit.ly/17boybD

しかし、日本は実は輸出を主体とした貿易立国ではありません。2011年における国内総生産の内訳を見てみると、家計の消費支出が294.9兆円と全体の57.9%を占めるのに対し、輸出額は12.9兆円と全体の2.5%でしかありません。

※資料(醍醐聰氏作成)【URL】http://bit.ly/1ajBOg9

このような客観的なデータを参照すると、TPP推進派の言い分が、根拠薄弱なものであることがよくわかります。アベノミクスによって、一時的なバブルを引き起こし、参院選に圧勝して「ねじれ国会」を解消し、「景気条項」をクリアしたら消費税増税というシナリオも、透けて見えてきます。

その増税分は、法人税減税の穴埋めに充てられ、大企業は今ですら260兆円もあるといわれる内部留保をさらに膨らませるでしょうが、雇用規制のさらなる緩和によって、労働分配率はまた一段と低下し、経営トップの報酬の高騰に反して、一般の労働者の所得は減少し、雇用条件はさらに不安定化していくでしょう。

このままでは、大企業が蓄えた利益が、大多数の国民の懐に自然に滴り落ちてゆくこと(トリクルダウン)など、起こり得ないのです。

「24時間、365日、休まず働け」などの発言から、先般、「ブラック企業」として名前を上げられるようになったワタミの前会長・渡邊美樹氏が自民党から出馬し、「TPP推進」を掲げていることは、まさに象徴的な事例だと言えます。

「ブラック企業」は、社員を「人」として見なさないことに特徴があります。社員はあくまで、企業が成長するための「資源」でしかなく、過労で鬱病となったら、「資源として利用価値がない」として、容赦なく解雇する。そこに、社員の基本的人権を尊重するという姿勢は感じられません。

▲街頭演説を行う、自民党の渡邉美樹候補――7月12日、福岡県博多駅前

「立憲主義」を離脱し、「基本的人権」の制約を公言した安倍首相

国民の基本的人権を否定する最たるものが、自民党の憲法改正草案です。自民党改憲案の第12条には、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」とあります。「立憲主義」を否定し、「公の秩序」のもとに基本的人権を制約する自民党改憲案の問題点を、私は、梓澤和幸弁護士、澤藤統一郎弁護士と13回、計20時間にわたり、逐条で検討してきました。

安倍首相は、7月3日に行われた日本記者クラブでの党首討論で、自民党憲法改正草案から、第97条の規定がまるまる削除されていると小沢一郎代表から指摘され、「逐条的なことを聞かれても分からない。他の規定に盛り込まれているのでは」と、驚くべき回答をしました。

憲法97条とは、基本的人権の尊重の規定そのものです。

「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」。

この重要な条文が自民党の改憲案からまるまる削除されている、という事実を、私たち有権者は知っておかなければなりません。自民党が改憲を唱えるのは、「憲法9条」の改正のことだけであると我々は思い込みがちですが、そうではなく、「基本的人権の削除」という、最も根本的な規定を全文削除してしまおう、と自民党は公言しているのです。

歴史認識においても「人権途上国」の国、日本

「日本は、人権先進国ではありません。人権途上国です」――。

これは、6月24日、私がインタビューを行なった、戸塚悦朗氏が口にした言葉です。元弁護士で、龍谷大学の元教授である戸塚氏は、今年で御年71歳。国際人権法政策研究所事務局長で、国連人権NGO「日本融和会」代表も務めるなど、国際社会で長年にわたり日本の人権問題に取り組んでこられた、法律家です。

岩上安身のインタビューに応える戸塚悦朗氏―6月23日

 戸塚氏は、1992年、国連人権委員会で、戦時中の従軍慰安婦は「性奴隷(sex slave)」であったと、その実態を告発しました。この発言は、世界中に非常に大きな波紋を広げました。日本国内の、いわゆる「保守派」からは、相当なバッシングにさらされたといいます。

 橋下徹大阪市長の発言に端を発した一連の従軍慰安婦問題については、「IWJウィークリー」第5号の「ニュースのトリセツ」で詳しく解説しました。

 その内容を、簡単に振り返っておきましょう。

 戦前、「公娼制度」は、「娼妓取締規則」により、日本国内において厳格に管理されていました。女性を騙して連れ去り、意に添わず、売春を強要する略取・誘拐は、「公娼制度」のもとでも、当然、違法とされました。

 戦時下において、そうした違法な略取・誘拐が横行していたという事実については、保守派の代表的な歴史家である秦郁彦氏の著書『慰安婦と戦場の性』にも、証言が掲載されています。略取・誘拐は「娼妓取締規則」に照らしても違法なのですから、日本軍や官憲には取り締まる義務や被害女性を保護する責任が生じるはずです。

 にも関わらず、従軍慰安婦を、戦地における「必要悪」だとして略取・誘拐の横行する現状を、官憲や日本軍は見て見ぬふりをしていたわけですから、どのように言いつくろうとも、犯罪を見過ごしてきた「不作為」の責任をまぬがれません。

 戸塚氏は、インタビューのなかで、「日本には、違法を黙認する伝統があります」と語りました。

 「たとえば、いじめる側や体罰する側は、『教育してるんだ!』『強くしてるんだ!』『訓練してるんだ!』『お前のためだ!』と言います。しかし、いじめや体罰は暴力であり、れっきとした犯罪です。ところが、日本人は伝統的に、そういった犯罪を見てみぬふりをしてきました。これは、慰安婦の問題と同じだと思います」。

 「そして」と戸塚氏は続けます。

 「精神病院では、例えば虐待や不法監禁が横行しています。しかし、これらも処罰されていません。いじめも体罰も家庭内のDVも恋人への強姦も、すべて根っこは同じです」。

 その「根っこ」とは何か、という問いに対し、戸塚氏は、こう答えました。

 「日本には、処罰すべき者を処罰しないという、『不処罰』の慣行が、ずっとあると思うのです」――。

 処罰されてしかるべき明白な違法行為に対し、その時々の権力側の都合により、「必要悪だから」などと見て見ぬふりをし、処罰せぬまま放置してきた結果、個人の基本的人権がないがしろにされてきたのだ、と戸塚氏は指摘します。残念ながら、日本は、いまだに「人権途上国」であり、世界の先進国で唯一、奴隷制を禁止する「奴隷条約」を批准していない国である、というのです。

 原発の再稼動、核武装論、TPP、「ブラック企業」の横行、憲法の改悪。これらはいずれも、大多数の国民の基本的人権をないがしろにするものです。人権を認められていない人間とは、突き詰めていけば、何者かの「奴隷」である、ということです。誰も他人を「奴隷」にしてはいけないし、「奴隷」になってもいけない。そして、苦しさのあまり、「奴隷」状態から「解放」されたくて、「自死」を選ぶような悲劇はなくさなければいけない。

 原発を54基も海岸線に並べて、戦争に突入しようなどというのは、民族まるごとの自殺行為です。

 そんな愚かしい破局を避けるためにも、戸塚氏が指摘するように、これまでの歴史において、「処罰すべきものを処罰する」ことなく、明白な違法行為を「必要悪」として見て見ぬふりをしてきた「不作為」の責任について、正直に認める必要があるだろうと思います。

 現在、IWJは、「参議院選挙総力取材プロジェクト2013」と題し、各党のキーパーソンにインタビューをするとともに、各争点ごとに独自の取材を進めています。また、全国の中継市民の皆さんに呼びかけ、各候補の街頭演説を可能な限り中継し、可視化しています。

 今週の「IWJウィークリー第10号」では、7月4日の公示日以降、選挙戦第1週目の取材の成果として、私が行なった各党キーパーソンへのインタビュー、各党の政権公約比較、各党党首の第一声、全候補者と中継した動画のリスト、さらには選挙関連のニュースクリップを、特集というかたちで一挙掲載しました。

 ほんのひと握りの人間だけが権力と富を占有する社会を作るのか、それとも、国民一人ひとりの人権が認められる社会を作るのか。少なくとも、現段階では、その選択をする権利は、まだ今のところ我々の手に、「投票権」というかたちで与えられています。

 今週号の「IWJウィークリー」を参考にしていただき、その権利を行使するお役に立てれば、と思い、本号を編集しました。どうか、お役立てください。

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