福島第一原発事故以来、ブログおよび講演会活動において、積極的に自民党批判、事故収束の政策批判、東電救済策批判を行っている自民党の河野太郎衆議院議員に、2011年5月11日、岩上安身がインタビューを行った。自民党内部にあって、プルサーマルを推進してきた党の電力政策を、なぜ変えさせることができなかったか、その背景を尋ねた。
河野氏は、「石油に替わるエネルギーとして、完成させれば電力が2000年は大丈夫という話でスタートした核燃料サイクルだったが、いまだにうまくいかない。それでも方針転換の議論さえ進まないのは、原子力に関わる利権で、すべてがんじがらめだから」と語る。
福島原発事故で若手議員の意識は変わってきたと話す河野氏は、今までの体制を作ってきた自民党の責任を認め、謝罪し、新たな方向性を打ち出さなければならないとの認識を示した。
福島原発事故で日本の原子力産業には能力がないことが露見
岩上安身は、「福島の原発事故のことが毎日報じられるようになり、情報は出づらいものの、未曽有の事態だとわかるようになってきた」と述べ、河野氏に対して、「今の福島第一原発の状況を、どのようにとらえているか」と投げかけた。
政府が何を言っても国内外で信頼されないという酷い状況、との認識を示した河野氏は、「情報公開や対応の仕方が間違っていた。このままでは、もうひとつ情報隠しみたいな話が出たら、日本の信頼は地に落ちる」との危機感を表した。
岩上安身の「情報の見せ方も大事だが、東電に働きかけてデータを出させることができない。これは、政府が東電に対して弱腰だからか」との問いに、河野氏は、これだけの事故が起きたことから、少なくとも政府が前に出るべきだとして、次のような見解を示した。
「政府が東電を使って事故処理する形にすべき。これだけ隣国に迷惑をかけて、一事業者が処理するのでは、政府として何を考えているのかわからない。東電は、自分が事故を起こしたので情報公開はなるべくしたくない。だから、政府が情報を公開することを担保しないといけない」
これについて、「自民党政権ならできる」と主張する河野氏だが、日本の原子力産業にはまったく能力がないことが露わになり、民も官も学も右往左往してるだけで、適切な対応ができていない点に関しては、不安の表情を見せた。
核燃料サイクルの議論は「河野は変わってる」のレッテル貼りにすり替わる
日本の原子力産業を中心とした利権構造の事実はあるのか、と問われた河野氏は、「石油依存度が極めて高い日本経済で、何かの代替策がほしいと原子力をスタートしたことは間違っていなかった。核燃料サイクルを完成させれば、電力が2000年は大丈夫という話だったが、その核燃料サイクルがうまくいかない。そして、うまくいかないことを認めず、最初はなかったプルサーマルが『本命』みたいな、インチキになっている」と語る。
その結果、原子力発電が利権化してきたとして、「電力会社から政治献金をもらい、労働組合から票をもらい、天下り先をあてがってもらい、広告宣伝費をもらい、みんながんじがらめ。合理的に『核燃料サイクルはうまくいっているか』という議論をしようとしても、返ってくる答えは『あいつ(河野氏)は共産党ではないのか、あいつはちょっと変わってるから』だから、とにかく議論しようという雰囲気はなく、とにかく、この体制についてこない奴は黙らせろという感じ」と続けた。
核燃料サイクルがダメな理由について岩上安身が問うと、河野氏は次のように答えた。
「1970年当時、30年後に高速増殖炉は商業的に運転されるという話だった。30年たったが影も形もない。2000年頃には、2050年まではできないという話になった。
したがって、高速増殖炉ができるかどうか、まずはわからない。高速増殖炉が仮にできたとしても、理論通りに爆発的なプルトニウムの増殖が起きないという話もある。また、プルトニウムを燃やしたものを取り出して再処理するが、その効率はよくない。結局、日本の金利ぐらいしか増えないのではないかという人もいて、それだと増殖とは言えない」
さらに河野氏は、高速増殖炉が実用化されていないにもかかわらず、プルトニウムだけ再処理して取り出そうとしていることに疑問を呈し、現状を厳しく批判した。
「六ヶ所村の再処理は、どこかで止めて、使用済み核燃料の段階で中間貯蔵して、本当に高速増殖炉ができてからプルトニウムを取り出すべき。とにかく、まったくの無責任体制。高速増殖炉は、できるかどうかわからない。プルトニウム、核のゴミはどんどん出す。でも、地層処分をどうするかは決まらない。
こういう話をして、自民党の議員に説明を求めると、科学技術担当大臣という役職の人が、『ウランを燃やすのも、プルトニウムを燃やすのも同じだろ、四の五の言うな』と言ってくる。それは違うだろう。その程度の認識でやっているなら、止めないとおかしい」
新規立地は政治の意思で「やらない」と決めるべき
福島原発事故により、若い世代の認識が変わったことについて、「経産省出身の若い議員は『新規立地はできない』とはっきり言った」と河野氏は言う。岩上安身が、「新規立地をしないことも、ほとぼりが冷めるまでというのと、向こう何十年にわたってしないというのでは、意味合いがまったく違う。どちらでしょうか」と尋ねると、河野氏は、自身が考えるビジョンを語った。