プロジェクト99%タウンミーティング「いまさらきけないTPP ~TPPでかわる!? 私たちの暮らし~」安部芳裕氏講演 2013.5.26

記事公開日:2013.5.26取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年5月26日(日)13時30分より、愛知県犬山市の犬山観光センターフロイデで「プロジェクト99%タウンミーティング『いまさらきけないTPP ~TPPでかわる!? 私たちの暮らし~』安部芳裕氏講演」が開催された。作家で社会活動家の安部芳裕氏が、TPPの歴史と交渉の経緯、その内容と危険性を語った。特に、アメリカが目論むさまざまな戦略や、知謀奸計を指摘し、日本に対してのTPPの必然性の有無、日本の現状、遺伝子組み換え作物や非関税障壁の問題、ISD条項の危険性などを説明した。

■Ustream録画
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・1/3(13:30~ 36分間)

・2/3(14:06~ 1時間15分)

・3/3(15:30~ 1時間3分)

  • 講演 安部芳裕氏(プロジェクト99%代表)

 冒頭、安部芳裕氏は、TPPに関連する言葉の説明から講演を始めた。「TPPは、環太平洋戦略的経済連携協定といい、環太平洋の国家間の自由貿易協定といわれている。FTA(Free Trade Agreement)は、特定の国家間での物やサービスの流通が、自由に行えるようにする協定。EPA(Economie Partership Agreement)は、物流のみならず、人、知的財産権の保護、投資、競争政策など、幅広く連携して親密な関係強化を目指す協定だ」。

 次に、TPPの成立経緯を説明した。「化石燃料が豊富なブルネイ、酪農畜産のニュージーランド、金融のシンガポール、鉱物資源のチリによって、協力して発展しようと、2006年、P4協定として始まった。2010年、当時の菅直人首相が、突如『平成の開国だ』と言い出して、参加表明をした。しかし日本が、TPPで輸出メリットがあると言われるのは、車・家電などの耐久消費財で、GDPの1.652%しかない。日本は貿易立国というが、輸出依存度は2009年に11.5%で、世界170カ国中、164番目。つまり日本の経済は、国内で回っているのだ」と日本の現状を語った。

 「TPPは、インフレで景気がいいと、安く物が入ってくるメリットがあるが、デフレの現状では損をするばかりだ。第二次橋本内閣の時に金融ビックバンで外資が参入、大企業は株主利益ばかりを尊重する傾向になった。日本はすでに、FTA、EPAを13カ国と締結し、アメリカとニュージーランド間だけが、何もない状態。ただし、アメリカとは、1989年から日米構造協議、94年から年次改革要望書が取り交わされている。結果、1999年、労働法改正。2000年、大店法廃止。2003年、商法改正。2004年、司法制度改革。2005年、新会社法、保険業自由化、独禁法強化、郵政民営化など、すべて年次改革要望書通りに進んだ。そして鳩山政権で、年次改革要望書を廃止したら、それがTPPに姿を変えた」と、背景を説明した。

 「日本は関税が高いから、という声も聞くが、平均関税は3.3%で、TPP参加11カ国ではアメリカの次に低い。政府発表は、TPP加入で3.2兆円増えると言うが、よく読めば、『うまくいけば10年で』と但し書きが付いている。この政府発表に疑問をもった全国の大学教員900名が、改めて試算をした。政府の農林水産物3兆円に対し3.5兆円、関連事業の連鎖的損失を含めると、全産業で10.5兆円減るという。また政府は、再雇用がすぐにあるというが、全産業で190万人の雇用が減る。GDPレベルではマイナス4.8兆円と試算した」と、TPPのマイナス要素を示した。

 次に、安部氏は、アメリカのブッシュ前大統領の「食糧自給はナショナル・セキュリティの問題だ」との発言や、アール・バック元国務長官の「日本に脅威を与えたいのなら、穀物の輸出を止めればいい」というの発言を紹介した。「TPPは秘密交渉だ。政治家でも知ることはできない。そして締結後、4年間は秘匿義務がある。アメリカでも交渉文書は12名の政治家しかアクセスできないが、600社に及ぶ多国籍企業はそれを閲覧できて、修正も加えられる。いわゆる企業統治だ。昨年、自民党議員が訪米し、TPPの詳細を訊ねて回った。その訪米報告書には、トム・ドナフィー全米商工会議所会長が、『細かいことに議論が及べば、反対が増える。今はわからないから賛成が多い』と報告している、とある」と語った。

 「特に問題になるのが、投資と金融。これは、アメリカが参加した時に加えられた。投資の自由化は、危険なのでWTOなどでは禁止している。農地、水源などが外国に買い占められたら、生殺与奪権を与えてしまうからだ。それで、TPPは2013年までに決着、ということになった。TPPの真の問題は、非関税障壁の撤廃で、関税以外で貿易の邪魔になるものはなくそう、ということ。これは、法律・制度・慣習すら撤廃しようとすることで、国民を法律で守ることはできなくなる」。

 「日本が、TPP参加を希望した時、アメリカから『参加したいなら、手みやげを持ってこい』と指示があった。それが、牛肉輸入規制(検査、肉骨粉などの規制撤廃)、郵政資金(かんぽ資金)、途中から加わった自動車(排ガスと軽自動車の規制撤廃)の、3つ。これらのの手みやげを持参したので、TPP参加を認められた。それ以外にも、共済の規制、遺伝子組替作物の表示義務の撤廃、ポストハーベストの使用許可、残留農薬の規制緩和、禁止添加物や医薬品の使用認可、労働力の自由化、混合診療解禁、薬価制限の緩和などがある。つまりアメリカ型医療制度に変えろ、ということだ」と説明した。

 安部氏は、モンサントのGMO種子などの問題について、「遺伝子組み換えは未完の技術。今できるのは、目的の遺伝子セットを目的の宿主生物の細胞に組み込むだけ。それからは偶然に頼っているのが実態だ。遺伝子組替事故は、すでに起こっていて、1988~89年、L-トリプトファンという必須アミノ酸を食べた1600人が、好酸球増加筋肉癌症候群を発症し、38人が死亡した」などと述べた。

 また、安部氏は、2012年9月12日、ル・モンド紙が掲載した奇形マウスの写真を紹介した。「遺伝子組み換えのトウモロコシと除草剤ラウンドアップを少量与えたマウスは、4ヶ月後から腫瘍が発生して死んでいった。それまでアメリカは、モンサント社の3ヶ月間の実験データで、安全というお墨付きを与えていた。日本の大手マスコミは、これをまったく報じなかった」。

 続けて、遺伝子組み換え作物の普及と、糖尿病、甲状腺がん、肝臓がん、自閉症、腸炎などとの関係性を示し、「傾向は合致している。しかし、アメリカでは、確実に危険だとを証明できない限り、販売や差し止めができないという、モンサント保護法案を成立させている」と話した。

 次にISD条項の説明に移った。「Investor State Dispute Settlementといい、投資家対国家の紛争解決で、投資家が、相手国の規制などによって利益が得られない時に訴えられる規定。国際投資紛争センターで、非公開、上訴不可、条約に違反していないかという1点のみを審議する。国家よりも企業が上位にある規定だ」と解説し、メタルクラッド社とメキシコ政府のNAFTAにおけるISD紛争や、カナダの紛争例を紹介した。

 そして、昨年の衆院選での自民党の公約、つまりJA全農から支援を得るために掲げたTPP6品目の聖域の話や、今年2月の日米首脳会談の内容を語った。さらに、これからのTPP交渉の現実と、安倍政権が国民に公言しているTPP交渉の矛盾を示して、「7月の参院選の結果次第では、日本が破滅するか、しないかの瀬戸際になる」と訴えた。

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