「脱バビロン塾」 アベノミクスって何だろう?~その正体と影響 2013.5.22

記事公開日:2013.5.22取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・阿部玲)

 2013年5月22日(水)14時より、山口県熊毛郡平生町の、こびとのおうちえんで「『脱バビロン塾』 アベノミクスって何だろう? ~その正体と影響」が行われた。脱バビロン塾は、昨年11月にスタートした不定期のネット放送である。

 今回は、ゲストに安部芳裕氏と冨田貴史氏を迎え、経済を切り口にして、選挙、TPP、メディアの問題点を語り、これからの生き方を提案した。聞き手は堀永周平氏、DON弥五郎氏、東条雅之氏の3人。

■全編動画

  • ゲスト 安部芳裕氏、冨田貴史氏
  • 日時 2013年5月22日(水)14:00~
  • 場所 こびとのおうちえん(山口県熊毛郡)

 安部芳裕氏はプロジェクト99%の代表で、タウンミーティングという対話集会を独自に企画し、全国各地を回っている。冨田貴史氏は京都で茜染め麻工房を営む傍ら、暦やお金、エネルギーについてのワークショップを各地で開催している。

 以下は、安部氏の講義内容の要旨である。

 「アベノミクスは、首相の名前の付いた経済政策という点では、レーガノミクスのもじり。それ以前にはサッチャーの経済政策もあるが、財政赤字が詰み上がり、緊縮財政と規制緩和によって解決しようとしたのは、イギリスもアメリカも同じ。日本では財政出動がメインとなった。3本の矢といわれるのは、金融緩和、財政出動、規制緩和の3つ。 2%のインフレになるまでの金融緩和、お金を造って景気をよくする財政出動、民間の需要喚起のための成長戦略である規制緩和。これだけ聞くと良さそうに思えるが、問題がある」。

 「デフレはお金が少ないから起こるのであり、多くすること自体は悪くない。しかし、20年もデフレが続きながら、金融緩和をしてこなかったのは、『日本の政策は、アメリカの了承がないとできない』という背景があったから。お金の量が少なくなると円高、増えると希少価値がなくなり円安となるが、アメリカは自国の利益のために、円高ドル安に持っていきたかった。それゆえ、今まで了承が得られなかったが、今回は、推測だが、アメリカがOK出した、ということ。『米国債を日本にもっと買わせる』という政策に転換したものと思われる。戦後からずっと、アメリカの思惑に沿った政策をしてきたのが、日本の姿である」。

 「2番目の財政出動の中には、日本強靭化計画という、全国に防波堤を張り巡らせるプロジェクトがあるが、その防波堤の高さは3メートルぐらいなのだ。本来は、宮脇昭氏の提唱するような、森林利用による防波堤が望ましいが、その方法では自民党の支持者にとってお金にならないので採用されていない。麻生セメントや宇部興産といった、ゼネコンが儲かるような内容になっている。本来は、被災地の復興や汚染地域住民の避難、健康検査の充実、子ども・被災者支援法の具体化を先にやるべきだが、そこにはお金を回さない。自分たち、自民党の支援者にばかりお金を流している」。

 「規制緩和の3番目、成長戦略だが、農業改革では農地を集約して生産性を高める、ということになっている。だが、農水省は、TPPにより生産高が7.1兆円から3兆円に減る、という試算を出している。これは農家が4割減る、ということではなく、借金が返せなくなり、ほぼ倒産していくということ。農地は農家から没収され、代わりに企業が増えていく。TPPの労働力の自由化により、雇用も様変わりする。ベトナムはすでに『TPPで、農民の輸出をしたい』と公言している。日本の10分の1の人件費の労働力が流入してくる。作物も、手間のかからない遺伝子組み換えにとって変わるだろう。放射能汚染や遺伝子組み換え作物により、病気の確率が増えても、医者にかかる頃には医療も崩壊している」。

 「今、安倍首相が盛んに進めている原発の輸出についても、相手国に『万一事故が起きたら、日本が責任を持つ』と言っている。売って儲けるのは原子力ムラ。有事の際の責任は国民。非常に卑怯なやり方だ。安倍首相は、大手マスコミ(東京新聞以外)のトップと会食を重ね、自民党に有利な情報しか出さないよう、メディアをコントロールをしている。アベノミクスで確かに株価は上がっているが、株を買っているのは主に外国人投資家。日本の企業を支えたいから買っているのではなく、マネーゲームをしているだけだ」。

 司会の堀永氏は「聞けば聞くほど、どんよりとしてきますね」と、ため息を漏らした。

 富田氏は「3.11以降に目覚めた人と、そうでない人とのギャップは確かにある。一方、変わっていないのは原子力政策。日本を、アジアの原発ショールームにしようとしている。原子力ムラは『3.11は、あくまでトラブルのひとつ』と捉えているに過ぎない。彼らが変わったと思わない方がよい。初めてこのような裏側に触れた人たちは、『信じられない……』とショックを受けるだろうが、昔からそうであったし、『それぐらいのことはするだろう』と思っていた方がよい」と述べた。

 そして、「『誰が悪い』だけでなく、ひとつひとつのコミュニケーションを大切にすること。焦りではなく、俯瞰した世界観を持つこと。自分が新しい世界のモデルになり、落ち着きを取り戻すこと」を提言。「1%対99%と言われるが、1%の人々は、弱いから強がっているようにも見える。世界は明らかに変わり始めている」と、前向きな姿勢を見せた。

 最後に、安部氏は「ほとんどのことは政治で決まる。しかし、多くの人は、わざわざ自分が苦しくなるような政治家を支持し、なぜか、負の選択をしてしまう。日頃から知識を積み重ね、政治に関心を持つこと。そして自分自身で判断できることが重要である」と説いた。

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