プロジェクト99% タウンミーティング@名古屋 安部芳裕氏講演 2013.4.21

記事公開日:2013.4.21取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

特集 TPP問題

 2013年4月21日(日)13時30分、名古屋市中区の名古屋女性会館において、「プロジェクト99% タウンミーティング@名古屋 安部芳裕氏講演」が開かれた。安部氏は、「お金の流れで見てみるとよーくわかる社会のしくみ」というテーマで講演を行った。

■全編動画
・1/2(13:26~ 2時間19分)
※動画データ変換不良のため、動画と音声にズレのある箇所がございます。

・2/2(15:50~ 49分間)

  • 13:30~ 講演 安部芳裕氏(プロジェクト99%代表)「おカネの流れで見てみるとよーくわかる社会のしくみ~原発、増税、TPP、憲法~」
  • 15:50~ 質疑応答

 冒頭、安部氏は、自身が主宰する「プロジェクト99%」の由来について説明し、「今の政治は、1%の金持ちや既得権益を持つ人たちのために行われていて、99%である大多数の人間はないがしろにされている。だから、この不公平を是正していきたい」と述べた。そして、「原発、増税、TPPという3つの問題を、日本を崩壊させる大きな問題であると認識している。やはり、1%の人の利益のために99%の人が犠牲になるという問題がある」と述べた。

 続いて、日本において「大変な情報格差が広がっている」と指摘した。その理由として、「マスコミが正しい情報を流さないから」とした。そして、日本人はマスコミ情報を鵜呑みにする傾向が強く、「間違った情報を流すなんてありえない」と思っている人が多いことを指摘した。なぜ、マスコミが正しい情報を流さないかという理由は、「マスコミというのは商業メディア。スポンサーである大企業あるいは政府から莫大な広告料をもらっている。スポンサーにとって都合の悪い情報は流せない」と述べた。そして、マスコミを操作する広告代理店の役割について、「スポンサーのイメージアップと同時に、スポンサーのイメージダウンを防ぐという業務を行っている」とし、「私たちが知らなければいけないような重要な情報がなかなか知ることができない理由である」と語った。

 原発問題については、「政府は、福島第一原発が大津波のせいで壊れたと言っているが、どうもそうではないらしい」と述べ、海外メディアが福島第一原発作業員に取材して執筆した、事故発生直後の原発内部の様子についての記事を紹介した。これによると「地震が2度襲ったように感じられ、最初の衝撃はあまりに強く、建屋が揺れ、配管が曲がるのが見えた。数分間のうちに配管が破裂するのを見た」とし、「やはり、地震から数分後に配管が破裂をしていた。しかし、こういった情報は日本では出てこない」と述べた。その理由として、「地震で原発が壊れたということになると、すべての原発が危ないという話になってくるからだろう」と述べた。

 また、政府が、原発事故を「想定外だ」と言っていることについて、多くの人が「事故が起きるから、危ないから、原発をやめろ」と言ってきたと述べ、その証拠を紹介した。そして、それらの忠告に対し、「日本の原発は、これまで事故を起こしたことはないから安全だと言って、何の対策もしなかったのが、当時の総理の安倍晋三。安倍晋三は、去年の暮れの選挙で総理に返り咲いて、何の反省もなく、また原発を再稼働させようとしている。再稼働だけでなく、新設も検討している」と批判した。

 また、野田佳彦前総理が、「冷温停止状態になったので、事故は収束した」と宣言をしたことについて、「現在も毎日2億4000万ベクレルの放射性物質がまだ出続けている。事故は全く収束していない」と述べた。事故直後に原発から80km離れた場所にある原子力センターにおいて、3月13日9時から、3月14日6時までの24時間にセシウム134が53.5メガベクレル、セシウム137が109メガベクレル、合計162.5メガベクレル(1億6250万ベクレル)ものセシウムを観測したことを紹介したほか、枝野幸男元官房長官が事故直後に「直ちに健康に影響の出るレベルではない」と繰り返し言ったことに関連し、チェルノブイリ原発事故によって国土の9割が汚染されたベラルーシ共和国における甲状腺がん発症の統計データを紹介し、「直ちではなかったが、5年後ぐらいから影響が一気に高まっているのが放射線の怖さだ」と述べた。

 事故前の14年間と事故後の15年間を比較した甲状腺がんの増加率では、0歳~14歳の子どもは85.9倍、15歳~18歳は10.1倍、19歳~34歳は5.1倍など、全年齢平均でも5.1倍も増えているという結果を紹介した。がんや甲状腺がんのみならず、心臓や脳などの病気が実際に増加していることを数字の面から紹介し、「大した影響なんかないというのはあり得ないということが分かる」と述べた。そして、汚染地図を示しながら、「汚染されているのは福島だけではなく、栃木58%、千葉50%、茨城28%、宮城25%、群馬15%、岩手14%、東京12%が(原発の)放射線管理区域(と同等)」と述べた。また、日本は地震国であり、東海地震や東南海地震、南海地震が懸念されていることや、活断層の上にある浜岡原発や、中央構造線の上にある伊方原発など、地震の影響が懸念されることを述べたほか、原発の耐震基準や過去に原発を襲った地震の強さについても詳しく解説し、「巨大地震が原発の近くで起きたら、日本には耐えられる原発は一つも存在しない」と述べた。このほか、権力やマスコミを巻き込んだ原子力ムラの利権構造や総括原価方式などについても詳しく解説した。

 続いて、消費税増税について、「日本は財政赤字なんだから増税しなきゃいけないとか、社会保障費用を賄うために増税は必要なんだという論調がたくさん流れているが、それは間違っている」と指摘した。「そもそも税率を上げれば、その分だけ税収が増えるというものではない」と述べ、経済のメカニズムについて説明した。「増税をしたことによって税収が減る。さらに財政赤字が拡大していくと、財政破綻する」と述べたほか、「増税すると可処分所得が減る。自由に使えるお金が減るから消費が減る。消費が減れば企業はそれに合わせて生産を減らす。生産を減らせば、そこで働いている人の所得も減っていく」という負のスパイラルを説明した。そして、消費税を導入してから税収が下がっていることをグラフで示したうえで、「消費税は、消費に罰金を科すようなもの」と説明した。さらに、消費税増税による逆進性の問題を述べた。

 大企業や経済団体が消費税増税を要求する一方、法人税の引き下げがなされてきたことについて、「消費税導入から国民が払った消費税は合計264兆円。その裏側で、法人税は246兆円減税されている。本来は法人が払うべき税金を、我々が消費税で肩代わりをしている」とした。そして、消費税増税によって中小零細企業の負担がさらに増え、倒産も増えるのではとの懸念を示した。また、社会保障料の値上げも重なり、家計の負担が年間でおよそ給料1か月分も増えることを説明した。安倍政権下で検討されている労働力自由化、非正規雇用の拡大といった政策にも懸念を示したほか、様々な「悪政」を敷いているにもかかわらず、主要メディアが軒並み安倍政権に好意的な報道姿勢であることについて、報道機関の幹部が安倍総理と会食をしていることを一覧表で示し、「外国では、メディアの人間はトップ(閣僚)と会食をするなんてことはありえない。メディアは権力の監視機関なのに、もう完全に取り込まれている」と批判した。

 TPP問題については、「秘密協定であることが問題である」とし、「当事国であるはずの日本の国会議員や政府関係者はもとより、アメリカ側の議員も中身を分かっていない」と述べた。その一方で、「600社にのぼるアメリカ多国籍企業はこの交渉文書に自由にアクセスして、内容を改定する権限まで持っていると言われている」とした。そして、「多国籍企業、グローバル企業が自分たちに利益の出やすいルールを作ろうと話し合っている。全く民主主義とかけ離れたもので、ある意味『企業による統治』である」と述べた。TPPの問題が、ほとんどが農業の問題というように扱われていることについて、実際は多種多様な分野に深刻なダメージをもたらすということを詳しく説明した。また、交渉参加に「手土産」が必要であるとして、牛肉の輸入制限緩和(生後20ヶ月以下→30ヶ月以下)や郵便貯金における新規商品の凍結といった条件を飲まされたことを詳しく説明した。さらに、保険や医療分野、農業分野への影響、食糧自給体制の崩壊、ISD条項の危険性などについて述べた。

 安部氏は、憲法改正問題や、7月に実施される見込みの参議院選挙についても、その背景や予測、影響などについて多角的な観点から詳細な説明を行った。そして、最後に「原発で国民の生命と健康を脅かし、増税で国民の財産を奪い取り、TPPで国家主権を売り渡し、憲法改正で国民主権を制限しようとする政治家たちを退場させて、日本を主権者である国民の手に取り戻そう」と締めくくった。

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