「日本で福島第一原発事故の影響が出るのはまさにこれから」チェルノブイリ事故を徹底検証したヤブロコフ博士が講演 ~『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』刊行記念 アレクセイ・ヤブロコフ博士講演会 2013.5.18

記事公開日:2013.5.18取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2013年5月18日(土)18時30分から、東京都千代田区の星陵会館で、アレクセイ・ヤブロコフ氏(ロシアの科学者)が、著書『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』の日本語版刊行を記念して講演を行った。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故に関し、国連、IAEA(国際原子力機関)やWHO(世界保健機関)による報告書とは別に、放射性物質による被曝について独自の調査を続けてきたヤブロコフ博士は、「日本で、福島第一原発事故の影響が出るのはこれから」と警告を発し、「WHOの公式見解を信じるな」と力を込めた。

■ハイライト

  • 講演 アレクセイ・V・ヤブロコフ (Alexey V. Yablokov) 氏
  • 解説 崎山比早子氏(医学博士、元放射線医学総合研究所主任研究官)

 講演会は、司会のおしどりマコ氏の軽妙なトークで幕を開けた。「私は、一昨年の福島原発事故以降、中退した大学の医学部で学んだ、がん発生のメカニズムを思い起こしながら、被災地を取材してきた。その際、ヤブロコフ博士が書いた英語版の報告書(『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』)の存在を知った。私が福島で聞いた『子どもに白内障が増えた』などの不安の声は、そこに書かれてある通りだった」と話し、「この報告書は、私のバイブルとなった。大勢の日本人に読まれるべきものと確信し、日本語版の登場を待ち望んでいた。そしてようやく、岩波書店から発売された」と喜びを表明した。その上で、マコ氏は「ただ、初版が3000部と少なすぎる。そこで、買った人は電車の中や路上でタイトルが目立つように読むなどして、この本の人気に火をつけ、重版を促してほしい。お中元で贈るのも手だ。今の日本に、この本を普及させよう」と、ユーモアを込めて呼びかけた。

 翻訳を担当した星川淳氏は、「日本語への翻訳には、総勢40人余りが従事したが、予想以上に時間がかかった。英語版にはバグ(誤り)が多く、また、途中で基本となるロシア語版に加筆部分が登場し、それを反映させるなどしたためだ。不明な点については、ヤブロコフ氏に直接、質問をした」と説明した。

 崎山比早子氏は「原発事故から2年が経過した今、福島でも放射能に対する恐怖心が、一時期よりは薄らいだ印象がある。その中で、この本が刊行された意義は大きい」と述べて、「書かれている内容は、被災地に暮らす人が、今後の生活を考える上で、判断材料になり得るものだ。放射能に汚染された食物を、体内に採り込んでしまった場合の対処法など、実生活に役立つ情報が掲載されている」と評価した。

 ヤブロコフ氏が登壇すると、客席から拍手が沸き上がった。ヤブロコフ氏は「これから(1986年のチェルブイリ原発事故を体験した)私たちロシア人の恐ろしい経験を話すので、ぜひ、そこから教訓を得てほしい」と、スピーチを始めた。

 ヤブロコフ氏は、福島とチェルノブイリの事故の共通項として、放射性の降下物の落下範囲が、まだら状になっている点を指摘した。「これは、とても良くないことだ。というのも、たった100メートル離れただけで、放射能の濃度が3〜4倍、あるいは3分の1、4分の1という形で変わってしまうからだ。そのため、エリアごとに、毎時のシーベルトで放射線量を示すことに、さほど意味はない」と訴えた。

(…会員ページにつづく)

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