2025年12月3日、東京都新宿区の早稲田大学大隈記念講堂にて、早稲田大学の政治サークル「鵬志会(ほうしかい)」の主催により、「早稲田政治祭2025」が開催された。
午後2時30分より、そのプログラムのひとつとして、石破茂前総理による「激動の一年間と日本の進むべき道」と題した特別講演が行われた。
石破氏は、講演の冒頭、自身が政治家になる1年前に聞いた、故・渡辺美智雄氏(※)の講演会の内容を紹介しつつ、石破氏自身が考える「政治家の仕事」について、以下のように語った。
渡辺美智雄:
日本の政治家。1923年千葉県習志野市生まれ、栃木県那須郡川西町育ち。旧制東京商科大学(現・一橋大学)附属商学専門部卒業。読売新聞東京本社記者出身。
自由民主党政務調査会長(第33代)。衆議院議員(11期)、厚生大臣(第54代)、農林水産大臣(第2代)、大蔵大臣(第81代)、通商産業大臣(第45代)、副総理兼外務大臣(第114代)を歴任。中曽根派を継承して渡辺派を率いた。
「ミッチー」の愛称で親しまれた。
- 渡辺美智雄(Wikipedia)
石破氏「(前略)渡辺美智雄先生の講演を、私は議員になる1年前に聞いた。昭和61年の8月のことです。
あの時に、現職の政治家、政治家志望の青年・中年50人ぐらいが話を聞いたですかね。箱根で。その時に渡辺先生が、こういうことを言われたですよ。
『お前らは、何のために政治家であるのか』と。『何のために政治家になりたいのか』と。
『金が欲しいのか。「先生、先生」と呼ばれたいのか。いい勲章がもらいたいのか。女にモテたいのか。
そんな奴は、今すぐ辞めろ。そんな奴は、絶対政治家になってはならん。
よく聞け。政治家の仕事というのは、たった一つなのだ。それは、勇気と真心をもって、真実を語る。それしかないのだ』。
1時間半ぐらいの長い講演でしたが、随分いいお話もなさいましたがね。
『日本は、世界のシンガポールを目指すべきだ』と言われたのをよく覚えていますが、その中で『政治家の仕事というのは、勇気と真心を持って真実を語ること』って言われたことが、すごく印象に残っていて…。(中略)
私は、次の年の7月に、初めて衆議院議員になったのだけれど、(中略)その言葉は、今でも真実だなというふうに思ってます。
当たり前のことのように思えるけれど、私も政治家を40年やっていて、いろんな役職もやって、総理大臣までやったけれども、そのことって、どんなに難しいことなのか。
何で難しいことを、渡辺先生は言われたのかということで、己を顧みて、恥じることばかりであります。(中略)
真実は、自分で一生懸命努力して見つけなければいけない、ということだと思います。
で、見つけた真実というのは、大体ウケない。ウケが悪い。
このあと、いろんな経済政策の話があるんでしょうけれど、私はやはり、財政は持続可能性がなければいけないし、財政は健全でなければならないと思っています。
憲法改正は必要であり、自衛隊は軍隊であると正直に認めないと、安全保障政策は成り立たないと思っています。
だけど、どっちもウケないです。財政は健全であるべきだ(と言うと)、『お前は財務省の回し者か』みたいな話になるわけですね。ウケが悪いです。
『自衛隊は軍隊であると、ちゃんと認めよう』(と言うと)、『軍国主義者か』みたいな話になります。ウケけないです。
だけど、もうウケなくても、それを語る勇気は持たねばならないと思っています。どんなに真実を、勇気をもって語っても、『ああ、そうだね』と言ってもらわなければ、どうにもなりません。渡辺美智雄先生風に言えば、それが『真心』ということなんだろうと思っています」
石破氏は、講演の後段、明治維新から日清・日露戦争、そして第1次・第2次世界大戦と、日本の近代史を振り返りつつ、今を生きる我々日本人が求めるべき価値観について、以下のように自説を述べた。
石破氏「敗戦後、焼け野原となった国家。もう一度、経済を再興させねばならぬ。もっと、東京1極集中が加速をされた。1968年には、日本の、当時はGNPと言っていた、世界第2位になった。
昭和39年に東京オリンピック、45年に大阪万博、47年に札幌オリンピック。日本は、あっという間に経済成長の坂を駆け上がった。
それが終わったのが、平成という時代だろう。強さでもない、豊かさでもない。じゃあ、我々が求めるべき価値観とは何なのだということであります。時代が変わるってことは、価値観が変わるってことでしょう。
大阪万博を成功に導き、そして関西万博の発案者であったのは、堺屋太一さんという方でした。『油断!』という小説を書き、経済企画庁長官も務めた立派な方でした。
この方が、言っておられた。『強さでもない。豊かさでもない。楽しい日本を作ろうじゃないか』ということ。『ウェルビーイング(well-being=身体的・精神的・社会的に満たされ、良好な状態が持続すること)』ということかもしれません。
『楽しい日本』って、私が施政方針演説で言ったら、無茶苦茶叩かれたけどね。『何が楽しいだ。バカヤロー』みたいな話になったんだけど、その言い方が、私の言い方が悪かったのでしょう。
一人一人が幸せを実感できる日本って何なんだ、と。『首都一極集中』というのは、東京とソウルだけにある現象であり、『パリ一極集中』とか、『ロンドン一極集中』って、聞いたことがない。
じゃあ、これから先、シェアリングエコノミー(※)の世の中になって、(中略)どうやって、人口が伸びない、経済が伸びない中にあって、この国を持ちこたえていくかということを、我々は考えていかねばならないし、この厳しい時代にあって、どうやって我が国の独立と平和を維持するか、ということを、考えていかねばなりません」
シェアリングエコノミーとは、インターネットを介して、個人と個人・企業等との間で活用可能な資産(場所・モノ・スキル等)をシェア(売買・貸し借り等)することで生まれる新しい経済の形のこと(消費者庁)。
- シェアリングエコノミー 利用ガイドブック(消費者庁)
講演内容の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。






























