ポイントの付与と現行の健康保険証廃止の方針という、アメとムチともいえる強引な施策によって、2023年6月には、国民の7割がマイナンバーカードを取得するに至った。しかしその一方で、カードと保険証の紐づけ間違いや、マイナポータル(ウェブ上の窓口)で他人の医療情報が見られる等の重大な情報漏洩事件は頻発している。
安全性への不安や、強引な進め方への不信、そもそも個人の情報を国が一元管理し、カード携帯を強制するデジタル管理社会の問題など、様々な観点から、マイナンバーカード、特にマイナ保険証に反対する意見は根強い。
しかし、政府は現行の保険証を2024年12月2日に廃止することを、2023年12月22日の閣議で正式決定した。なお保険証の廃止そのものは、2023年6月成立の改正マイナンバー法等で、2024年秋とすることがすでに決定されていた。
- 健康保険証 来年12月2日に廃止を正式決定 猶予期間は最長1年間(NHK、2023年12月22日)
上記の閣議決定が行われた12月22日、カードやマイナ保険証強制の現状を多角的に報告し、廃止への方策を検討する集会が、東京都の文京区民センターで行われた。主催は共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(共通番号いらないネット)。
冒頭の報告「転機を迎えた個人番号・マイナカードの現状」では、マイナンバー制度の経緯と現状、トラブルの実態などが詳細に報告された。特に、国の方針であるマイナンバーの3分野(社会保障・税・災害対策)以外への利用拡大と、最高裁判決による利用分野の限定がバッティングする点が指摘された。
- 第283号 いわゆる「マイナンバー制度」最高裁合憲判決に関する一考察(トムソン・ロイター判例コラム、2023年3月24日)
続いて「保険証廃止、マイナ保険証一体化、医療デジタル化の問題点」では、医療現場でのマイナ保険証トラブルの実態や、政府が謳うマイナ保険証のメリットの欺瞞が報告された。特に、健康保険証本来の役割以外の機能がマイナ保険証に追加される目的が、医療情報を営利利用するとともに、「健康自己責任」論によって、慢性疾患などを公的医療保険から外していく点にあることが指摘された。
その他、省庁ヒアリングの報告、共済関係事務におけるマイナンバーカード強制の問題、健康保険証の存続等を求める意見書を提出した地方議会が計105議会に上るとの調査報告等が行われた。
後半の質疑応答では、マイナンバーの紐づけ誤り等に関する国家賠償の集団訴訟の可能性をはじめ、様々な切り口からの質問や提案が行われた。さらに、静岡市議会での自民党を含む全会派による「健康保険証存続」の意見書採択の経緯報告も行われた。
最後に「マイナ保険証の強制を許さない! 集団決議(案)」が決議された。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。