「神宮外苑の再開発事業は文化遺産の不可逆的な破壊!!」国連ユネスコの諮問機関が事業者と東京都に中止を要請!~9.15 日本記者クラブ主催「イコモス 記者会見」―内容:神宮外苑再開発事業撤回に向けた緊急要請 2023.9.15

記事公開日:2023.9.18取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2023年9月15日午前11時より、東京都千代田区の日本記者クラブにて、神宮外苑再開発事業撤回に向けた緊急要請についての「イコモス 記者会見」が開催された。

 ユネスコの世界遺産に関する諮問機関である「国際記念物遺跡会議イコモス(ICOMOS/ International Council on Monuments and Sites)」は、9月に予定されている3000本以上の樹木の伐採や、その後の3棟の高層ビルの建設、そして、既存の野球場とラグビー場の新球場への建て替えなどを含む「神宮外苑再開発計画」により、東京都の「文化的資産が危機に直面している」として、9月7日、緊急要請ヘリテージ・アラートを発出し、事業者や認可した東京都に計画の撤回などを求めた。

 会見では、リモートでゲスト参加したエリザベス・ブラベック氏(緊急要請発出元の「世界イコモス」国際学術委員会文化的景観委員会会長)、岡田保良氏(日本イコモス国内委員会委員長)、石川幹子氏(同理事)、そして、篠原孝衆議院議員、および、阿部知子衆議院議員(ともに、「神宮外苑の自然と歴史文化を守る国会議員連盟」のメンバー)が登壇し、「神宮外苑再開発計画」に反対する立場から、現状の認識、そして、取り組みなどについて発言をした。

 会見冒頭のエリザベス・ブラベック氏の発言は、以下の通りである。

 「神宮外苑の再開発事業についての、イコモスの懸念について、お伝えしたいと思っております。

 私どもが大きな懸念を有しているのは、3.4ヘクタールの公園としての土地が失われてしまうかもしれないということ。

 そして、3000本ほどの、いわゆる『ヘリテージ樹木』。これらの樹木が、東京の都市型公園の主な部分をなしているにもかかわらず、これは『ヘリテージ』、すなわち『遺産』という観点からも、あるいは、環境の『生態系』という観点からも失われてしまいかねない、ということを懸念しております。

 今回、発出しましたこの『ヘリテージ・アラート』、これは全世界向けの『ヘリテージ・アラート』でありますけれども、国際的にも、この不可逆的な形で、しかも、喫緊に遺産が失われてしまいかねないということに対する、最大限の懸念を表明するものであります。(中略)

 東京は、最大級の都市の一つであり、1400万の人口を抱えております。しかしながら、都市における、開かれた空間について研究追跡を行っている国際機関によりますと、世界の主要な都市の中でも、東京は、市民に設けられたこういう空間が最も小さい都市とされております。

 今回、懸念されております、この開かれた、その空間が失われるということ。東京の全体の面積からすれば小さな空間と思われるかもしれませんが、これが意味するところは大変大きいと言わざるを得ません。

 全体の計画が示唆しているのは、この再開発事業によって、3000本以上の樹木が破滅してしまうということです。それに加えて、その3000本以上の樹木のうち500本以上が、推計では、100年以上の樹齢であるとされておりますし、さらにそれ以外の500本以上は、推定で50年以上の樹齢だといわれております。

 イコモスとしては、これは文化遺産の不可逆的な破壊であると見ております。

 さらに、それを超えて、この開かれた空間が失われるということ。そして、成熟した『ヘリテージ樹木』が破壊されるということは受け入れられないと考えております。

 なぜならば、今や、全世界は気候変動ということを認識し、いかに都市の開かれた空間を保全していくかと、その重要性を認識しているからであります。

 成熟した森林が、都市の中で失われていくということだけではなく、イチョウ並木にもストレスがかかることになります。新しいスタジアムが建設されることによって、この、日射が減るということ。そして、水の流れも変わっていくということ。これが、神宮外苑のシンボルとも言えるイチョウ並木にストレスをかけることになります。

 イコモスとしては、国際的に名だたるこの公園において、市民やステークホルダーとの協議もなく、高層ビルを建てるということに対し、強く警鐘を鳴らすものであります。

 イコモスとしては、再開発事業法に関わるすべての責任者に対し、再開発事業を直ちに『中止する』ことを呼びかけたいと思っております。これは、将来の世代のために、やはり、直ちに中止をしていただきたいということです。

 この公園は、イコモス日本国内委員会によりますと、そもそも、『市民によって、市民のために、また、市民からの献金によって作られた』公園であるということであります。ですから、開発事業者に対しては、引き続き市民が公園のその利用をできるようにしていただければと思っております。

 また、東京都に対しては、これは、都が今回の事業計画の承認を行っているということですので、その事業計画の見直しをお願いできればと思っております。より長期の観点に立って、都市計画法のもと、あるいは、都市計画条例のもとでの厳格な審査をお願いできればと思います。

 イコモスとしてお願いしたいのは、『環境影響評価』については、『いくつものエラー、いくつもの科学的とはいえない手法を用いたいろいろな結果が盛り込まれている』という批判がありますので、これを見直していただければと、お願いしたいと思ってます。

 また、イコモスが懸念をしておりますのは、一般の人々にほとんど情報提供がないままに、法律上の手続きが進められてしまったという点です。

 私どもが要望をしたいのは、『民主主義原則』を尊重していただいて、神宮外苑の将来についての情報を広く国民に提供していただくとともに、さまざまなステークホルダーが議論に寄与できる形でのフォーラム・対話の場を設けていただければと思います。

 イコモスとしましては、イコモス国内委員会、ならびに、国際文化的景観科学者会議、そして他のさまざまな専門家もお手伝いをし、より持続可能な神宮外苑の未来が作れるように、いろいろお手伝いをする用意がございます。ご清聴感謝します」。

 他の登壇者の発言や質疑応答など、記者会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2023年9月15日(金)11:00~12:00
  • 場所 日本記者クラブ10階ホール(東京都千代田区)
  • 日本記者クラブ サイト内告知

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