岩上安身は2023年4月6日、『ルポ特殊詐欺』著者で神奈川新聞報道部デスクの田崎基氏に第3弾のインタビューを行った。このインタビューは、3月7日の1回目、13日の2回目のインタビューの続編である。
これまでの2回のインタビューは以下より御覧ください。
インタビューの前半では、特殊詐欺と暴力団との関わりについて、田崎氏にお話をうかがった。
「ルフィ」事件では、一連の広域強盗事件の指示役「ルフィ」だと目されている、渡邉優樹容疑者、小島智信容疑者、今村磨人容疑者、藤田聖也容疑者ら、逮捕された4人について、その上にさらに暴力団と関わりのある首謀者(金主)がいるとの話が、週刊誌やネットを中心に報じられている。
これについて田崎氏は、「結局、物証がないというところじゃないか」と述べ、次のように語った。
「『ルフィ』とされる人たちを逮捕し、携帯を何十台も押収し、やり取りや資金の動きを洗っているんだけど、この方(黒幕とされる暴力団)との資金の動きが途中で途切れていて物証がないと、逮捕できない、(逮捕)令状が出ないことなんじゃないですかね」
しかし、田崎氏の著書『ルポ特殊詐欺』には、「ある捜査関係者は『特殊詐欺を敢行する過程で、「暴力団等」が関与しているのは、ほぼ間違いない』という」との一文もある。これについて田崎氏は、次のように説明した。
「暴力団対策を担当している捜査関係者への取材で、『これ、誰がやってんですかね?』という話をしていく中で、結局、暴対法(暴力団対策法)が施行されて、いろんないわゆる古典的なシノギができなくなっていったと。競争入札妨害とか、総会屋みたいな話とか、ノミ行為とか。そういうところから、どんどん駆逐されていったわけですね。
ネットの普及とか、外的な原因もあるんですけど、暴力団の構成員を食べさせていく資金源を得る手法が、どんどん削り取られていった。
『じゃあ、どうなってるんですか? 今』って聞くと、その捜査関係者は、『ここしかないんだ』という言い方をして、私のノートを指差した先に、『トクサギ』と書いてあったということです」
その一方で、田崎氏の著書では、指定暴力団・稲川会や住吉会、神戸山口組のトップが、組員が関与した特殊詐欺事件で使用者責任を問われ、民事訴訟で和解金を支払ったという事例も紹介されている。そして、指定暴力団の多くは、傘下の団体に対し、特殊詐欺への関与をやめるよう、通知を出しているとのこと。
また、「ルフィ」事件についても、渡邊容疑者との関係で名前が報じられている6代目山口組の本流弘道会直系の3次団体、福島連合が関係を否定していることに対し、田崎氏は「聞いている先ですよね」と述べ、「結局、上層部、まさにトップとか2次団体くらいは、やってないよという話なんでしょうけど、ダーッと追って行った下の方は、何らかの形でコミットしている可能性が極めて高い」と語った。
さらに田崎氏は、関与の方法についても、取材にもとづいて、次のように語った。
「上がりを直接吸収するということをやると、使用者責任という話になります。
実際に、何億円という賠償があったケースも、暴力団の2次団体、3次団体、その傘下みたいなところの構成員が『受け子』をやっていて、そのお金を横浜市内の事務所に持って行って、計数機にかけて計算をしたと。これが、使用者責任の訴求理由になっているんですね。
それは困るわけです。それをやっちゃうと、ダーッと訴求されて、結局奪い取られて損害賠償請求で払わなきゃいけなくなってしまいますよね。
ですから、関与の方法としては、飛ばしの携帯の提供であるとか、名簿の売買にコミットする、仲介するだけでもお金が発生してくる、という形で、非合法に荒稼ぎできる手法に関して、どんどん暴力団が入り込んでくると思った方がいい、と、捜査関係者は言っていました」
そして田崎氏は、特殊詐欺という犯罪が社会に与える影響について、「一番言いたいこと」だとして、次のように語った。
「結局、1日1億円、年間で360億円以上の被害というものが出ている。その被害を受けた人は、本当に悲しいし、胸が痛むんだけども、そのお金はどこに行ってしまうのかというと、ほぼほぼ戻ってこない。
その詐欺事件を完成するために費やしているお金が、恐らく被害額の30%から40%くらい。残りの60%から70%くらいは、反社会的な組織の資金に流れて行っているということなんですよね。
結局、そこはもう、追えないわけです。実際に仮想通貨にされたり、闇カジノに流れて行ってる。
ギャンブルをすごくやってしまう人が、この特殊詐欺に関与しているケースが極めて多い。私が取材した中で言うと、『何でそんなことしちゃったんですか?』っていう問いに対して、最初はパチンコや競馬をやっていたけど、だんだんレートが高いものがほしくなって闇カジノに行ってしまう。闇カジノは、お金を貸す人とセットになっていますから、借金がかさんできて、手っ取り早く返すんだったらこれしかないという形で、ツイッターで(闇バイトを)検索してしまったというケースもある。
そういうふうに考えると、グルグルグルグル、ここが、反社会的な構造の中で、お金と人が回り続けている、しかも高速回転していってるということが浮かび上がってくるんですね。
ですから、この特殊詐欺っていう問題が社会に与えている害悪っていうのは、とんでもないところに行っている。さらに関わった人間たちが、さらなる凶悪犯罪に突き進んでるっていう問題が、『ルフィ』事件で明らかになってるし、その前から散々、私、書いてますけど、プラス、グループ内や対立グループによる拉致・監禁、傷害事件の加害者、被害者になるケースもあると。
実際にこれは、起きている事案。抜けようとしたり、被害金をかすめ取って飛んでしまう、持ち逃げしてしまうという人が追い込まれる。
本当に、スパイラル的に起きている回転が、凄まじい勢いで害悪を撒き散らしているということが、一番問題の本質かなと思いますね」
このあと、インタビューでは、「富める高齢者」と「貧困の若年層」の格差が犯罪を生み出しているという、日本の社会構造について、田崎氏にお話をうかがい、IWJ独自の防犯アイディアをご紹介した。
詳しくは、ぜひ、全編動画を御覧ください。