電源開発が「原発直下の逆断層」について、規制委に説明できず、審査が膠着! 同じ被告側の規制委さえ「バンザイしてもらっていい」!~3.1 函館市大間原発建設差止等請求訴訟 第29回口頭弁論「大間原発裁判報告と講演会」 2023.3.1

記事公開日:2023.3.2取材地: テキスト動画
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(取材・文、木原匡康)

 2023年3月1日、青森県の大間原発の建設差し止めを、津軽海峡対岸の函館市が提起した、電源開発と国を被告とする訴訟の口頭弁論が行われた。

 これを受け、弁護団による報告と、元原発技術者の講演が、午後4時から東京都千代田区の参議院議員会館で行われた。同訴訟は、日本で初めて、自治体が原告となって原発差し止めを求めた裁判である。

 只野靖弁護士によれば、裁判で当日提出した1つ目の論点は、北方沖断層に関するもの。電源開発は、その断層の存在をしぶしぶ半分認めたが、実際にはもっと大きく広がっているという。只野弁護士は「(電源開発の)こういう値切り方は、(東電が)福島沖で津波は起きない、根拠がないと言っていたのとそっくり」と批判した。

 只野弁護士によると「2つ目の論点はもっとシビア」で、「敷地直下の断層は、どう見ても逆断層」であるとのこと。被告側である規制委員会も認めているという。

 断層があるのは、耐震重要施設の下であるため、地盤がずれたら、いくら丁寧に作っても壊れること必定で、只野弁護士は、断層の活動が否定できなければ「一発アウトだ」という。この議論は4年前位から規制委員会で続けられており、電源開発の反論を規制委員会が認めないため、審査が進まず、膠着状況であるとのことだ。

 断層に対して、炉心位置を変えれば、被害回避の可能性はあるが、既に30数%を作っており困難。規制委員会も電源開発に「(説明できないなら)バンザイ(ギブアップ)してもらってもいいんですよ」とまで言っているというのである。

 一方、只野弁護士によると、函館市は、規制委による審査を「どこまででも長くやってもらって構わない」「(原発が)できないということで、それで構わない」と言っているとのこと。

 そのほか弁護団は、「求釈明」等について報告した。被告である電源開発は、人口密集地帯に近い立地や、事故対策の根拠となる重大事故や被害の想定について、きちんとしていない。「求釈明」とは、これらについての説明を求めたということである。

 弁護団の海渡雄一弁護士は、原発問題では、福島事故当時の検証が重要と指摘。事故直前2011年3月9日、大津波の可能性を指摘した地震調査研究推進本部の長期評価の改訂版の公表が予定され、数万人の命を救った可能性があるが、公表を止めたのは電力会社、中央防災会議、推進本部事務局だと主張した。

 また、事故直後の放射能線量が高まった3月16日、福島県により健康管理アドバイザーが選ばれ「100ミリシーベルトまで安全」と喧伝し始めたのは、民主党政権と関係なく、裏の「本物の原子力村」が県にやらせたと、海渡弁護士は述べた。

 次回裁判は9月、次々回は来年2月の予定である。

 後半では、日本原子力事業で技術者として福島第一原発建設等に携わった小倉志郎氏が講演した。小倉氏は6年半ほど前から、日常の外出時に、「原発を並べて自衛戦争はできない」等のプラカードを首から吊るして街中を歩き、電車に乗って、「一人デモ」を行っているという。

 小倉氏は、放射線の遺伝子への影響を解説する自作の紙芝居「ちいさなせかいのおはなし」を披露。その後、原発技術者の知見から、原発のしくみと危険性をわかりやすく講演。「原発は、ここを壊せば福島のような大事故になる箇所が何か所もある」「こんな原発をまだ続けよう、最大限利用しようなんていう政府は狂っている。原発利用を認める候補者には投票しないでほしい」と訴えた。

 詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2023年3月1日(水)16:00~18:30
  • 場所 参議院議員会館 B104
  • 詳細 レイバーネット サイト内告知
  • 主催 大間原発反対関東の会

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