2022年1月26日、東京都千代田区の参議院議員会館で、函館市大間原発建設差し止め裁判 第26回口頭弁論後の弁護士による報告と、北海道寿都町の最終処分地選定に関する講演会が開かれた。
函館市大間原発建設差し止め裁判は、2014年4月に国と大間原子力発電所を所有する電源開発株式会社に対して、原子炉設置許可処分の無効確認などを求めて、函館市が提訴したもの。日本で初めて自治体が原告となって原発差止などを求めた裁判として注目されている。
報告会で青木秀樹弁護士は、この日の口頭弁論で2021年3月に水戸地方裁判所で下された東海第二原子力発電所の運転差し止め判決をあげ、函館市は津軽海峡対岸の青森県下北郡大間町に建設中の大間原発から50キロメートル圏内に市の大半が位置しているため、原発の過酷事故時の避難計画策定は事実上困難であり、大間は原発の立地には適さないと主張したことを報告した。
水戸地裁判決は、「深層防護の第1から第5の防護レベルのいずれかが欠落し、または不十分な場合には、原発が安全であるという事はできず、周辺住民の生命、身体が害される具体的な危険がある」「深層防護の第5レベルについても自然現象による原子力災害を想定した上で、実現可能な避難計画が策定され、これを実行し得る体制が整っていなければ(住民の)人格権侵害の具体的な危険がある」として、東海第二原発の運転差し止め請求を認めた。
深層防護とは、原発事故の進行段階に応じて、それぞれ必要な対策を準備する考え方である。前段の対策を十分講じたとしても、その対策が失敗したと想定し、次の段階の対策を考え備えるというもので、IAEA(国際原子力機関)が定めた安全基本原則の一つだ。
講演で登壇した、本間照光・青山学院大学名誉教授は、2020年8月に北海道寿都町が、国の核のゴミ最終処分地選定に関して「文献調査」を受け入れるとしたことについて解説した。
本間氏は「最終処分法(特定放射廃棄物の最終処分に関する法律)には『文献調査段階』はない、すでに概要調査段階に入っている」と述べ、「『文献調査』は概要調査段階の入り口に組み込まれた入り口部分で、そのままボーリングなどに直結し、最終段階の精密調査につながる」「自治体に決定権はなく、途中で手を下ろすことはできなくなる」と指摘した。
また、本間氏は「そもそも、核のゴミ処分と処分地の安全基準はいまだに作られていない。安全基準に照らした合否ではなく、合格者選びを開始してから後でそれに合わせて試験問題が作られる」と述べ、「今なら間に合う、一緒に考えよう」と呼びかけた。