神宮外苑再開発着工目前! 事業者の暴走を都が追認!? 正当な手続きで行われなかった環境アセスに原科幸彦・東京工業大学名誉教授が異議を訴え!~1.19 緊急記者会見<神宮外苑再開発~環境アセスメント危機的局面を報告> 2023.1.19

記事公開日:2023.1.22取材地: テキスト動画
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(取材・文、山内美穂)

 三井不動産などが進める、神宮外苑再開発事業(神宮外苑地区まちづくり)を巡り、識者や市民から「十分な環境配慮がなされないままの計画は反対」「都心の貴重な自然を残してほしい」など疑問の声があがっている問題で、東京都は環境アセス(環境影響評価)審議会を延長するなど、注目を集めてきた。

 こうした中、都は、2022年12月26日(月)に突如、当該の審議会総会を開催した。都議会や都民に十分に知らされないままだった。このことを受け、2023年1月19日(木)、都庁記者クラブで、「議題も知らせず、情報公開から程遠い、民主的なプロセスを踏んでいないやり方だ」と、環境アセスメントの第一人者である原科幸彦氏(千葉商科大学学長・東京工業大学名誉教授)が緊急記者会見を行った。

 原科氏は、神宮外苑は「100年前の創建時には国民が献金、献木してボランティアでつくったという世界に誇るべき事例だ」と説明し、「以降、公共空間として都民に親しまれ、国際的に評価されてきた。インバウンドとしても非常に重要な空間であり、都市にオープンスペースを取ることは大変大事なことである」とその価値について触れた。

 また、「これまで都のアセスプロセスは情報公開に消極的で形式的な参加が目立っていた」としながらも、審議会の専門委員については「委員のみなさんは専門家としての責任を果たしてこられたと思う。しかし進め方としては少々強引ではあったかと思う」との見解を示し、意見書や都民の意見を聞く場での「意味ある応答=アカウント(事実に立脚して説明すること)」の重要さを語った。

 樹木約1000本が伐採される危機に加え、この計画で懸念される問題の一つに、イチョウ並木の危機があげられる。再開発計画ではイチョウ並木の6mギリギリに迫る近距離に高さ20mの神宮球場が新設される予定だ。このイチョウ並木は樹齢100年ほどだが、600年~800年は生きるという。日差しがなくなるばかりか、根を傷つけ、生育を阻害させるなどの影響も懸念されており、計画が実行されると、数十年後には球場側のイチョウが枯れてしまうことが心配されている。

 審議会では、事業者と審議会の合同でのイチョウ並木の根系調査を行うとしていたが、審議会に知らされないまま、2023年1月11日~20日の期間で、事業者による根系調査が突如始まった。

 12月26日の審議会では、根系調査は事後調査で報告するとされていた。つまり、手続き上「事後調査」の位置づけである根系調査が始まったということは、事業者がすでに着工届を都に提出したことになる。しかし、事後調査を行うために必要な事後調査計画書の公表は、行われていない。しかも事後調査計画書の公表を行うために必要な届出もない。

 さらに着工するには、評価書を都が認めて確定し、公示した日から起算して15日間、縦覧にかけなければならない。ところが、これらの手続きも行われていない。

 原科氏は「評価書を確定していない。縦覧もしていない。だけど、事後調査で報告するものを調査している。びっくりした」と、都の公表している手続きとの矛盾を指摘した。

 原科氏は記者会見当日にも都の担当者にこの件について確認したが、「評価書が提出されたかどうかは言えない」との回答を得た上で、「(事業者から都に)事業者の評価書を受け取ったかどうか、『事業者の情報だから言えない』というのはまったくおかしなことで、本来は公表しなければならないことだ」と断じた。

 また、「都はこの調査自体を『事業者の自主的な調査だ』と言っているが、この手続きの踏み方はあいまいな状況なので、きちんとしたプロセスをたどってほしい」「『しっかりとしたアセスメントをしなさい』という指示を出している都知事は、このプロセスをご存じないかもしれない。きちんと把握してほしい」と訴えた。

 最後に「この神宮外苑のプロセスがこのまま行ってしまうと、日本の公園計画が狂ってしまう。アセスメントの専門家として黙っているわけにはいかない。専門家の責任です。アセスメントとはこういうものですよ、とみなさんにわかっていただかなくてはいけない」と締めくくった。

 その後、1月21日付け『日本経済新聞』は、「東京都は20日、神宮外苑地区の再開発事業を担う三井不動産など4事業者が提出した環境影響評価(環境アセスメント)書を告示した。公開された評価書では、再開発による生態系への影響について『神宮外苑の豊かな自然環境は維持・保全される』と示された。事業者が都に着工届などを提出し、施行認可を得たら工事に着手できる」と報じた。

 詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2023年1月19日(木)11:00~12:00
  • 場所 東京都庁 都庁記者会見室(東京都新宿区)
  • 主催 神宮外苑を守る有志ネット(詳細

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