2022年9月25日、午後2時より、東京・千代田区のたんぽぽ舎にて、第3回 浅野健一が選ぶ講師による「人権とメディア」連続講座~緊急講座『なぜメディアは統一協会と自民党の癒着を報じてこなかったのか』が開催された。
第3回は、現在、統一教会問題についての発言で各種メディアの注目を集める、『やや日刊カルト新聞』主筆でジャーナリストの鈴木エイト氏を講師に迎えた。主催者の浅野健一氏(元同志社大学大学院教授)と受講者とが、統一教会の霊感商法や国葬問題などについて、忌憚なく意見交換し、共に考える講座となった。
鈴木氏は、自身が統一教会の問題を取材するようになった経緯を、次のように語った。長くなるが、以下に一部中略をはさむが、ほぼ全文を紹介する。
「2002年、最初に街頭で統一教会の『偽装勧誘』の現場に行き会って、それをやめさせる活動をしていたんですね。そんな中から、だんだん、勧誘をする側の信者たちが、どういうメンタリティーで『偽装勧誘』、正体と目的を隠して、『手相の勉強をしてます』とか、『青年の意識調査アンケートです』と噓をついて勧誘をしている(のかが分かってきた)。
そういう信者たちが、本当に目の前の人をだまして、この人から金銭を巻き上げてやろうと、そういう悪質な考えでやっているのではなくて、大元は当然、間違ってはいるのですけど、目の前の人を幸せにしたいという気持ちで、嘘をついて、勧誘をしている。
そういう状況のカルト問題に特有の構造にだんだん気づいていったんですね。そんな中で、ただの詐欺とかではなく、悪質な団体が悪質なことをしている、悪意をもって人をだましているのではなく、善意で人をだましている、そういう構造にすごく興味を惹かれて、どんどん現場の信者たちと交流をもって、取材をしてきました。
その中で、カルト問題、本当に現場で使われている人たちは、人権侵害を受けている被害者なのだ、ということに思いいたって、ずっと取材を続けてきました。(中略)
2009年に、『やや日刊カルト新聞』というウェブメディアを、藤倉善郎さんというライターの仲間と立ち上げて、(中略)そこでいろいろとカルト問題を報じてきたのですけど、その中で、足立区議会議員選挙で、統一教会の青年信者の全面的なバックアップ、選挙運動の協力を受けて当選したまったく無名の女性候補者がいました。
脱会した信者からその情報を聞いて、トップ当選したその区議の二期目が始まったくらいのときに、その人の取材を始めました。その人は、統一教会の地区教会の青年のイベントにも積極的に出ていたし、明らかに統一教会であるということをわかった上で、支援を受けていたんですね。
ところがですね、取材を始めて、僕が、その人に直あてをした瞬間に、その人は、『そんなことはまったく知りませんでした』と、『統一教会だとわかっていたら、頼んでいません』みたいなことで、信者たちをポイ捨てするようなことをしたんですよ。
当然、統一教会側も、そういう、かこっている候補者を政治家にすれば、自分たちの利益になるということで、邪(よこしま)な思いは当然あるんですが、末端の現場で政治家を支えて、運動をきちんとやってきた青年信者たちの思いは真摯だったんですよね。
そういう青年信者たちの思いを裏切るようなかたちでポイ捨てするような政治家っていうのはもう、カルトより政治家のほうがひどいんじゃないか、っていうことから、政治家の問題も追及するようになったんですね」
続いて、「統一教会と癒着してきた自民党は解散・解党して直せ」という過激なタイトルのもと、浅野健一氏の講演が行われた。浅野氏は、講演を次のように締めくくった。
「山上徹也氏のたった一人の、協会のシンボル政治家・安倍氏への銃撃で、自民党と協会の癒着関係が明るみに出て、国政選挙のない『黄金の三年間』が、自民党の暗黒時代となった。(中略)ジャーナリズムの力が今、問われている。
人民は、統一教会問題の取材報道で、真実を伝えるジャーナリストを支援し、ジャーナリストはメディアスクラムを組んで、自民党の解党を求めて欲しいと願う」
質疑応答では、受講者から、以下のような質問があった。
「自民党と統一教会を結びつけているものを、今のように『切るよ』と言っても、絶対切れないわけで、統一教会を解散させなきゃダメと思うんですよ。
解散させるには、基本的に文化庁の権限なのかどうかということと、その文化庁を攻めていくために、是非とも、お二人(浅野氏と鈴木氏)にですね、統一教会との文化庁の色んなやりとりというのを暴いていただいて、いかに文化庁が、いかに忖度してやっていたのかという材料を今後ぜひとも明らかにしていただきたい」
これに対し、鈴木氏は以下のように回答した。
「宗教法人の解散命令というのは、別に、団体を崩壊させるという意味じゃなくて、単純に、『税制上の優遇』を無くすだけのことなんですね。団体は続いていくし、つまり、信者の『信教の自由』には一切抵触しないということで、ただ、『税制上の優遇』を無くすことで、教団を追い詰めることは確かにできる。
でも一方で、そうすると地下に潜ってしまって、より苛烈な献金などが行われるかもしれないなど、色々見ていかなければならないことが多いですね。
文化庁と統一教会の関係がどうだとかってことは、当然、検証の必要があるし、当然いろんな材料はもっているので、今後もきっちり追及していこうと思います」
また、次のような質問もあった。
「統一教会と創価学会っていうのは私から見れば五十歩百歩のようにみえるのですが、鈴木さんから見て、創価学会について、何かあれば、一言コメントをいただきたいと思うのですが」
鈴木氏は以下のとおり述べた。
「局面、局面で見ていくと、色々と変わらないところはいっぱいあるんで、当然、そこも追及するべきだとは思っています。
『お前はなんで統一教会のことばかりで、創価のことは言わないんだ?』というふうに言われるところでもあるのですが、とりあえず、今のところ、僕の守備範囲からはちょっと外れちゃってるかなと(思います)。
当然、問題視している部分もあり、創価学会をいじりに行ったこともあるんですけど、そのあたりもやるべきだという意見も真摯に受け止めつつ、っていうくらいしか言えないです。今のところ。
当然、創価学会が全く問題がないとは思っていないので、当然、そこで苦しんでいる人もいたりとか、実際に被害はあるという認識はしっかりもってはいます。
ただ、今、法整備をしようというときに、宗教団体への規制をしようという流れになってしまうと、特に二世問題などに関しては、絶対に、創価学会を支持母体として抱えている公明党は絶対賛成してこない、というところがあるので。
公明党も納得できるような形で法整備を進めていく必要があるかなと、運動論として思っているので、そのへんを、うまく創価学会を巻き込みつつ、やっていくべきかな、という話はしています」
講座の詳細はぜひ、全編動画をご視聴ください。