【IWJ号外】米国のジャーナリスト、ロバート・パリー氏による旧統一教会の最暗部追及の報道シリーズ第2回(その1)! 「反共」を看板とした文鮮明の本質はビジネスを超えたコリアン・ナショナリズムだった!? 2022.8.24

記事公開日:2022.8.24 テキスト
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(取材、文・IWJ編集部)

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 旧統一教会の教祖・文鮮明と北朝鮮とブッシュ家の関係に関するIWJ号外をお届けしますのでぜひ御覧ください。

 米国の著名な調査報道ジャーナリスト、ロバート・パリー氏による旧統一教会追及報道をご紹介する第2回は、4回連続シリーズでお伝えします。

 この2000年10月11日に発表された記事の総タイトルは、「文鮮明と北朝鮮とブッシュ家」です。

 今回は、「文鮮明と北朝鮮とブッシュ家」その1です。

 米国防情報局(DIA)の新資料により、DIAが文鮮明から北朝鮮指導者への秘密の金の流れを追跡していたことが明らかになり、それは、ブッシュ家を困惑させる可能性があると、ロバート・パリー氏はこの文書を要約して紹介しています。

 以下から仮訳となります。

 「米国防情報局(DIA)の文書によれば、保守的なワシントン・タイムズを含む文鮮明のビジネス帝国は、強硬派の政府が兵器開発資金を調達するために外貨を必要としていた1990年代初期に、北朝鮮の共産主義指導者に何百万ドルも送金していた。

 その中には、現在(2000年当時)の共産党指導者である金正日総書記への300万ドル(現在価値で約4億円)の『誕生日プレゼント』や、共産党の前独裁者である金日成への『数千万ドル』に及ぶオフショア送金が含まれていたと、一部機密解除された文書に書かれている。

 文鮮明は、北朝鮮でのビジネスの足がかりを求めていたようだ。しかし、この取引は文鮮明に法的問題を提起し、ジョージ・W・ブッシュ(第43代米大統領2001年~2009年)の大統領選挙キャンペーンに影を落とす可能性もある。ブッシュ家は文や彼の組織(旧統一教会)と長年にわたって金銭的・政治的なつながりがあるためだ。

 韓国を拠点とする統一教会の80歳の創始者は、北朝鮮の共産主義指導者への送金の他に、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領に多額の資金、おそらく数百万ドルをつぎ込んだ。

 ある有力な統一教会の元指導者は、ブッシュ元大統領のために用意された総額は1000万ドル(現在価値で約14億円)だと私に語った。共和党候補の父親は、アジア、米国、南米での講演やその他のサービスに対して、文鮮明の組織が実際にいくら支払ったかについて言及することを避けている。

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 1996年にアルゼンチンで行われた文鮮明主催のある演説で、ブッシュは、 『ビジョンを持つ男』と賞賛する文鮮明に対し『敬意を表したい』と宣言した。

 ブッシュは、文が強烈な反米感情を表明していた時期に、このような演説を行ったのである。文は自らの演説で、米国を『サタンの収穫』と呼び、米国の女性は『売春婦の家系』であると主張していた。

 今年の(ジョージ・W・ブッシュの)大統領選挙期間中、文のワシントン・タイムズは、クリントン・ゴア政権が北朝鮮のミサイル計画に対してより積極的な措置を取らなかったと攻撃している。同紙は、同政権の決定を『国家安全保障の責任放棄』と呼んだ。

 救いの手

 しかし、1990年代、北朝鮮がミサイルをはじめとする先端兵器の開発にしのぎを削っていた頃、文鮮明は北朝鮮に静かに投資する少数の外国人ビジネスマンの1人であった。

 歴史的に熱心な反共主義者でありながら、文は1991年に長年の共産主義指導者である金日成とビジネス取引を行ったとDIAの文書には書かれている。

 その取引は、平壌でのホテル建設と、文鮮明の出生地である北朝鮮での新たな聖地建設を要求していたと文書には記されている。DIAは、この取引は(IWJ注・ソ連が崩壊し、停戦が終焉した直後の)1991年11月30日から12月8日にかけて北朝鮮で行われた文鮮明と金日成の直接会談から生まれたものであると述べている。

 DIAは1994年2月2日に『これらの会談は韓国政府に知られることなく秘密裏に行われた』と書いている。『金[日成]との最初の取引で、文は頭金として数千万ドルを海外口座に送金した』とDIAは1994年8月14日付の電報で述べている。

 DIAは、文鮮明の組織は金日成の息子で後継者の金正日にも送金したと述べている。

 DIAは1994年9月9日に『1993年に統一教会はペンシルベニアにある不動産を売却した』と報告した。売却益である約300万ドル(現在価値で約4億円)は、中国の銀行を通じて韓国企業である『サムスン・グループ』の香港支社に送金された。このお金はその後、金正日総書記に誕生日プレゼントとして贈られた。

 1994年に金日成が亡くなり、息子の金正日が後継者となった後、文鮮明は長年の側近である朴普熙(パク・ボヒ)を派遣し、金正日と『その同胞』との商取引がまだ生きているか確認したとDIAは報告している。

 『必要であれば、文は金正日総書記のために2回目の支払いを行う権限を朴に与えた』とDIAは書いている。

 DIAは、情報公開法にもとづく請求で私に公開した文書について、詳しく説明することを避けた。DIAのスポークスマン、マイケル・ステインブルック海軍大佐は、『あなたが持っている文書に関しては、あなた自身が結論を出さなければならない』と述べた」

 以上が、「文鮮明と北朝鮮とブッシュ家」その1の全文仮訳となります。

 これも、すごい記事です。

 背景は、共和党のジョージ・W・ブッシュが、民主党の現職副大統領アル・ゴアを破って当選した2000年11月7日の米大統領選挙に至る選挙戦真っただ中の時期に当たります。

 国際勝共連合を作り、熱心な反共主義者として、韓国でも、日本でも、米国でも売り込みをはかっていた文鮮明ですが、何とその裏では北朝鮮の独裁者たちと3代にわたって機密の、そして密接な関係を築いてきたというのです。

 統一教会と北朝鮮の関係については、一部の日本の週刊誌も報道していますが、この記事は、ロバート・パリー氏自身が、米国の情報公開法にもとづいてDIAに文書公開請求を行って入手した文書を根拠としており、記事の信頼性という点では、二次資料をもとにした類似記事と比較して、群を抜いて高いと評価できます。

 さらに、文鮮明から北朝鮮へ渡った資金の名目や金額まで、詳細に記述してあり、注目されます。

 現在でも、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、国際勝共連合と一体であり、「反共」を看板にしており、北朝鮮との関係を公には語りません。

 信者の中ですら、この秘密の関係を知らない人も多くいるはずです。

 この記事でまず注目されるのは、1991年11月30日から12月8日にかけて北朝鮮で行われた文鮮明と金日成の直接会談が、韓国政府に知られないように、秘密裏に行われたものだった、ということです。

 第2に、文鮮明と金日成の関係がビジネス取引関係だったという点です。北朝鮮は文鮮明の生まれ故郷ですが、そうした郷愁は、多くのきっかけの一つにすぎず、関係の本質はビジネスだったのです。

 第3に、文の送金が行われた90年代という時代は、ソ連が解体し、冷戦が終わりを迎え、「反共」主導者にとっても曲がり角にさしかかっていた時代です。そんなポスト冷戦の時代の始まりにあっても北朝鮮では核開発問題が指摘され、1994年10月に米朝枠組み合意が締結されるなど、核ミサイル開発が進められていた時期に当たります。

 つまり、文鮮明が北朝鮮に秘密裏に送った多額の資金が、多額の外貨を必要とする核ミサイル開発に流れた可能性を否定できません。

 北朝鮮と文鮮明の関係は、文鮮明の行動原理が、イデオロギーでも、宗教的信条でもなく、ビジネスさえ超えて、特異なコリアン・ナショナリズムに根差している可能性は否定できません。

「文鮮明と北朝鮮とブッシュ家」その2では、「文鮮明の右腕」と題する記事をお伝えします。

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