2021年8月27日、東京都千代田区の外国特派員協会(FCCJ)で、中外製薬の代表取締役社長兼最高経営責任者である奥田修氏が、日本政府から要請され販売開始される、新型コロナウイルス感染症治療薬など3種類の治療薬について、説明を行った。
中外製薬は2002年10月、スイスのバーゼルに本拠地を置く世界有数の製薬企業であるロシュ社が過半数の株式を取得して買収された。現在は発行済株式総数の59.89%をロシュ社が取得してロシュ・グループの一員となっている。
中外製薬が開発、販売する治療薬は、ウイルスの増殖が進んでいく無症状から軽症の段階の患者には、抗ウイルス剤の「AT-527」、軽症から中等症1までの患者には、抗体治療薬の「ロナプリーブ(抗体カクテル)」、そして炎症が起きてくる中等症以降の患者には、抗炎症剤の「アクテムラ」の3種類が用意される。
このうち、抗体カクテル療法で注目を集めている「ロナプリーブ」は、7月に厚生労働省の特例承認を受けた。現在軽症患者に投与される唯一の薬剤で、8月25日に外来での投与が許可されたばかり。
一方、中外が開発した国産初の抗体医薬品「アクテムラ」は、米国ですでに緊急使用許可を得ているが、国内では2021年内の承認申請を目指している。
ロシュと米アテア社が開発を進めている経口薬の抗ウイルス剤「AT-527」は、2022年に承認申請が予定されている。
奥田社長は「ロナプリーブ」について、「6月29日に申請して、特例承認をいただいたのが7月19日。3週間という異例のスピードで、世界で初めて薬事承認を取得した」と胸を張ってみせた。
奥田社長は同薬の流通について「薬事承認を得て、薬価を取得して保険償還(価格)の中で一般流通をするという方法は取らず、ロナプリーブを政府が購入し、それを中外製薬が委託を受けて医療機関に配送するという仕組みを構築した」と述べ「2021年分は政府が買い上げることになっている」と述べた。
また同薬は、現在は入院時にしか使用できない点滴薬として承認されているが、外来や、一定の条件下での自宅療養などでも使えるよう、皮下注射薬としての承認も「申請していく」と語った。