原発推進政策に忖度する判決ばかり出る中、「理性と良識」を重んじて3.11後初となる原発の運転差止め判決を下した元裁判長が「私が原発を止めた理由」を語る! 岩上安身によるインタビュー 第1033回 ゲスト 元福井地裁裁判長 樋口英明氏 2021.3.10

記事公開日:2021.3.25取材地: テキスト動画独自
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(IWJ編集部)

 2011年3月11日の東日本大震災、東京電力福島第一原発事故からまる10年を迎える前日、3月10日に、岩上安身は元福井地裁裁判長・樋口英明氏にインタビューを行った。

 樋口英明氏は2014年5月21日、大飯原発運転差止めの判決を福井地裁の裁判長として言い渡した。これは、福島第一原発事故後初の原発運転差止め判決となる画期的な判決となった。

 インタビュー冒頭、岩上は樋口氏の肩書きのない名刺を見ながら、弁護士にならない理由についてたずねた。樋口氏は、2017年8月に退官している。裁判官は退官後、弁護士になるのが一般的だが、樋口氏は「原発のことをやっていきたいから」と答えた。

 弁護士になる道を捨てた樋口氏は、裁判を通じて学んだ原発の危険性を広く伝えるための講演を行っており、IWJでも取材している。また、ご著書『私が原発を止めた理由』が2021年3月に発売された。

 「大飯原発運転差止め判決」を出すときに、出世に響くとは思いませんでしたか、という岩上の質問に、樋口氏は以下のように答えた。

樋口氏「原発事故が起これば日本の国が傾く、司法制度、裁判所自体がなくなるかもしれない、そういう時に自分の出世など考えていられない」

岩上「原発を止めることができるのは裁判官だけ、とお書きになっていますね」

樋口氏「そうです。しかし、でも、それがわかっていない裁判官も多い。原発のことがわかっていない。これだけの被害をもたらすものだから、よほどの安全策が取られていると思ってしまうんですね。一般には新幹線などでも事故リスクを抑えるように踏切を作っていない。そういう一般の法則でそう考えてしまうんですね」

 樋口氏は、「私はごく普通の裁判官、どちらかといえばやや保守的なほう。特にリベラルでも、人権派でもない」と自らを分析する。

 そして、「普通の裁判官」を自認する樋口氏は、大飯原発運転差止めの裁判では、「原発が動き出す前に判決を出さないと、稼働を事実上認めることになり、意味がない」と考え、最初に「大飯原発が危ないと思えば差し止めます。危険ではないと思えば運転を認めます」と裁判官としての方針を示したことを明かした。

 樋口氏は、大飯原発運転差止めの裁判は原子力発電に関わる高度な技術的議論になると考えて裁判に臨んだという。しかし、関西電力は「700ガルを超える地震は福井原発では起こらない」という非科学的な主張をし、そこが大きな争点となった。

 2000年以後に日本全国で起きた主な地震をみると、700ガル以上の地震は、先日の2月13日の東北沖を震源地とする地震を含めると31回起きている。2004年の新潟県中越地震は2515ガル、2008年の岩手宮城内陸地震は4022ガル、2011年の東北大震災は2933ガル、2016年の熊本地震は1740ガル、2018年の北海道胆振東部自身は1796ガルとなっており、電力会社の見通しの甘さを痛感させられる。

 インタビュー後半、樋口氏は「日本の原発は一般ハウスメーカーに劣る耐震基準で設計・建造されている」という恐るべき事実、「原発は固い岩盤の上に建っている、とはいえない」実態、「失敗し続けている地震の予知」など、次々と「思い込み」を裏切る事実を明らかにする。

 さらに、従来保守派の政治家の一部は、原子力発電と核兵器を結びつけるような発言をしてきたが、それに対して原発存在自体が国家安全保障上の脅威となることや、安倍・菅政権で政治介入が進む司法の実態、そして危険な原発の稼働を止めるため「今後、住民側が訴訟をどう闘ったら良いか」という貴重なお話をうかがった。

■ハイライト

  • 日時 2021年3月10日(水)19:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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