2月1日にミャンマーで起きた国軍によるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相やウィン・ミン大統領、与党国民民主連盟(NLD)の関係者らの拘束は、民主化に逆行する軍事クーデターとして、西側先進国を中心に国際的な非難が広がっている。
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2021年2月16日午後、東京銀座にある国際交流ラウンジ「GOWELL TOWN銀座」で、5人の在日ミャンマー人が記者会見を開いた。
会見を行った5人は、軍事政権下のミャンマーで育ち、留学で来日して、現在も日本で働く20代から30代の女性たち。
人材派遣業で働くモンさんは「日本人に今、ミャンマーで起きている現状を正しく伝えたい。ミャンマーの若者が今、どう感じているか、世界にどういう対応をしてほしいと思っているか伝えたい」と、記者会見を開いた理由を述べた。
同じく人材派遣業で働くジンさんは、「クーデターは憲法違反で、法律違反だ」と述べ、次のように説明した。
「ミャンマーは2008年の憲法にもとづいて民主化しました。ミャンマーの憲法71条の1には、『大統領に空席ができた場合に限り、副大統領が大統領の代行として任務を推敲する』とされています。
しかし今、大統領は死亡していない。拘束されている中で、副大統領が任務を行なっています(編集部注:クーデターで元国軍幹部の副大統領ミン・スエ氏が暫定大統領に就任。ミン・スエ氏は、国軍のミン・アウン・フライン総司令官に立法・行政・司法の全権を授けた)。
憲法418条には『国家緊急事態の宣言ができるのは大統領』だとされている。今でもウィン・ミン大統領は、国家緊急事態宣言を認めていません」。
その上でジンさんは、次のように日本政府への要望を訴えた。
「2020年11月8日に開催された総選挙で、日本、EU、米国などは選挙監視団を派遣しました。現地大使も監視にあたり、自由・公正な選挙の実施を支援しました。選挙結果が(国軍が主張するような)不正ではないことはあきらかです。
日本は総選挙監視に協力した国として、(選挙に不正はなかったという)事実を把握しているはず。もっと(国軍に)圧力をかけてほしい。早急に適切な対応をしてほしい」
続いて語学関係の企業で働くプインさんが、抗議活動について説明した。
プインさんは「ミャンマー国内では1988年にデモがあったが、そのデモ参加者の中にスパイを紛れ込ませ、暴動を誘発した。緊急事態だと見せかけてクーデターを正当化するという国軍のやり方は、過去にも事例があった」と述べ、「私たちは無暴力で平和に事態を終わらせるため、独裁者から政権を取り戻すために『市民的不服従運動』というやり方が最善だという結論になった」と語った。
プインさんによると、不服従運動にはこれまで、医療従事者、教育関係者、公務員などをはじめとする75%ほどの協力者が参加しているとのこと。しかし、国有銀行や外務省の管轄の大使館などでは、この運動への協力が得られないということだ。
さらに、ミャンマー国内では不服従運動の参加者が、退職を強要されたり脅されたりしているといい、プインさんは「緊急事態宣言を終わらせるため、不服従運動への全面的な参加と国際社会の軍事クーデターに対する圧力が欲しい」と訴えた。
プインさんは「今夜何が起きるかわからないという不安で生きる毎日です。軍政になれば、何もかもが不自由になるということを、私たちは経験済みです」と述べ、「独裁者が言う、『1年後に総選挙を再開する』など、過去の経験から信用できないしありえない。全てが聞きなれた物語です」と不安を表明した。
その上で、「私たちは、1年はもとより、1秒たりとも国軍が政権を握ることなど看過できません。日本も独裁者の不法な行為に強い圧力を与えるように、素早い対応をお願いしたい」と訴えた。