2020年12月1日、改正漁業法が施行された。同日、東京都千代田区の参議院議員会館講堂で、「JCFU沿岸漁民フォーラム」が開催され、IWJが生中継した。
フォーラムのテーマは、「改正漁業法下の『新たな水産資源管理』は 沿岸漁民と漁協に何をもたらすか ~沿岸漁民の暮らしと漁協経営が守られる資源管理を」。JCFU全国沿岸漁民連絡協議会とNPO法人21世紀の水産を考える会の共催、家族漁業の未来づくりを支援する研究者文化人の会が後援した。
改正漁業法は、水産資源の持続的な利用を目的に、漁獲してよい量(TAC(漁獲可能量))の対象魚種を8魚種から20魚種以上に拡大するなど、漁獲量制限を進めることで、水産資源を保護、将来の漁獲量拡大を目指すという。しかしこうした施策が、日本漁民の94%を占める、家族漁業・小規模漁業を営む沿岸漁業経営体にもたらす問題があるとJCFUは指摘している。
フォーラムでは、はじめにJCFU共同代表で、北海道焼尻島で沿岸クロマグロひき縄漁を営む漁民の高松幸彦氏が登壇した。高松氏はクロマグロ裁判の原告である。クロマグロ訴訟とは、2017年、一部の漁業者が北海道の漁獲枠の大半を占める大量のクロマグロを水揚げしたため、同じ北海道の漁業者というだけで、連帯責任として漁獲枠0を6年間との指定を受け、廃業の危機にさらされた高松氏が国の施策の不当性を訴えたもの。11月27日に札幌地裁で敗訴の判決を受け、高松氏はその問題性を強く訴えた。
続いて、元・水産政策審議会会長で、東京海洋大学名誉教授の櫻本和美氏が、西欧型のMSY(最大持続生産量)理論にもとづく、国の新たな水産資源管理施策の問題点を指摘した。櫻本名誉教授は、親魚量と子魚量の密度効果にもとづいて水産資源の増加量を規定するMSY理論は誤りであり、資源の増減は環境変動で決定されると、多数の詳細なデータによって説明。MSY理論にもとづく資源管理に科学的正当性はないと主張した。
次に、元水産庁資源管理推進室長で、現在は鳥羽磯部漁協監事を務める佐藤力生(りきお)氏が、漁業法改正は、「公共資本である水産資源を私的資本(証券)化し、その市場取引で儲けることができる制度に移行すること。資源管理はそのための隠れ蓑に過ぎない」とし、「日本の漁業者は小作人化」すると自らの経験と知見を踏まえて強く批判。さらに新漁業法への対処法を提案した。
香川県与島漁協組合長の岩中孝夫氏の文書によるコメント代読後、最後に行われた会場との質疑応答では、水産業界紙『みなと新聞』の記者が、櫻本名誉教授や佐藤氏の主張に批判を展開。これに両氏や高松氏が再反論する一幕があった。
日本の漁業の今後を左右する改正漁業法の問題の詳細が語られる動画をぜひ御覧いただきたい。
IWJが取り上げてきた、漁業法等に関するコンテンツは下記で御覧いただける。
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