2020年5月13日(水)12時30分から、東京都千代田区霞が関の厚生労働省にて、加藤勝信厚生労働大臣による囲み記者会見が行なわれた。内容は新型コロナウイルス感染症診断のために使用される抗原迅速キット(製品名「エスプライン」、製造販売業者 富士レビオ株式会社)が薬事承認され、実用化されることの告知であった。以下は加藤厚労大臣による発言の全文である。
加藤勝信厚生労働大臣「本日、我が国の企業が世界に先駆けて開発した新型コロナウイルスに関する抗原検査キットが薬事承認され、さらに保険適用されることになりました。抗原検査とは、抗体検査が過去の感染歴を判定するものであるのに対して、PCR検査と同様に現在の感染の有無を判定するものであります。新型コロナウイルス感染症対策における強力な武器になることを期待しております。
この抗原検査キットの特徴のひとつは30分程度の短時間で感染の有無を判定できるということであります。それによって、これまで感染が疑われる方は結論が出るまで、例えば、一度帰宅をしなければならない、といったことがありましたが、このキットを活用することによって、その場で判定をし、陽性が確認されれば、入院あるいは宿泊療養といった措置をおこなうことが可能となります。
また第二の特徴はPCR検査と比べて、特別な分析機器や試薬が不要であり、まさにセットになっているそのキットだけで対応できる、また検体を搬送して分析を違う所でする必要がなくなります。企業によれば毎月78万回分のキットの製造が可能であるということであります。これまでの検査能力は大幅に引き上げられると思われます。
今月中に約40万回分の供給が見込まれますので、一つは、私どもとしては、帰国者接触者外来検査センターと、最近の新規感染者数が多い都道府県の施設等を優先したうえで、月末までには全国で希望する施設に配布していきます。
二つ目には、中核的な機能を果たしている、また感染リスクが高いとされている医療機関にも優先して配布していきたいと思っています。
三点目としては、院内あるいは施設内感染など、いわゆるクラスター対策における利用ということで、感染研に一定量をストックして、そうしたクラスターが発生するような事案に対して対応する準備に充てていきたいと思っております。
これは企業側とも連携をして、私どものほうからこういう機関にまずは意向を聞いて、そしてその医療機関等から希望があれば優先順位をつけていただいて、配布をしていただく、ということをお願いしていきたい。
なお抗原検査はPCR検査と比べて、より多いウイルス量でないと正確に判定できないという課題もあります。従って当面はPCR検査と併用していただいて、まずはこのキットで陽性が出れば、陰性の方についても必要なPCR検査を実施していくということが必要になると思います。今後現場での使用を通じて調査研究をさせていただきながら、より効率的に検査を行っていくためにはどうすればいいのか、これはさらに研究をしていきたいと思っております」
その後質疑応答が行われ、記者からの、「抗原検査で陰性となってもさらにPCR検査をするとのことで、中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)の複数の委員から現場の混乱が指摘されているが、それをどう認識するか」との問いに、加藤大臣は、「これまでは検査を必要としたときにPCR検査しかなかった。そこにこの検査キットが加わり、短時間で結果が出て、陽性の結果にすぐ対応できるようになる。それ以外の方には従前どおりなので、より効率的に検査が行われていくはずだと思う。このキットのある/なしで検査の対象群は変わらない。PCR検査をする対象者にまずこの抗原検査をする。現場にはいろんな懸念があるだろうからそれをよく聞き、連携をとってやっていく」と答えた。