2020年4 月28日(火)、午後5時30分より、東京都千代田区永田町の中央合同庁舎第8号館1階会見室にて、内閣府 西村康稔(やすとし) 経済再生担当大臣・新型コロナ対策担当大臣の定例記者会見が行われた。
ゴールデン・ウイークが週末に迫り、翌29日(水・昭和の日)から連休が始まるこの日、GW末に設定された緊急事態宣言の、期限延長の可能性に注目が集まった。
外出自粛と営業自粛により、非常に大きなダメージを受けている、飲食業をはじめ、さまざまな分野の事業者、被雇用者等は、緊急事態宣言が延長されれば、一層大きな打撃を受けることになる。その支援がきちんとなされるのか否かは、今後の日本の経済と社会の存続にかかわる大きな問題のはずである。しかし、そうした中小企業への積極的な配慮は、西村コロナ担当相からはうかがえなかった。
西村大臣からの冒頭の報告はなく、そのまま、各社記者と西村大臣との質疑応答となった。
記者から、緊急事態宣言の期限の5月6日が近付いているが、その延長や解除についての考えを聞かれ西村大臣はこう答えた。
「5月6日まで、GWも含め、自宅でできる限り過ごしていただきたい。人との接触の8割削減を目指してやっていただきたい。
5月7日(木)以降はどうするか。混乱が生じないよう、適切なタイミングで基本的対処方針等を、委員会を開き、専門家の意見を聞いて判断する必要がある。専門家の皆さんは5月6日ぎりぎりまでいろんなデータを見たいとおっしゃっており、あまりぎりぎりの決断となっても混乱が生ずるが、専門家の意見をしっかり聞いて判断したい」。
結局この日の段階では、延長・解除のいずれの方向も示唆されなかった。
また、記者の「3月の完全失業率が2.5%となり、前月比で0.1ポイント悪化した。4月以降、緊急事態が発生して、これが加速度的・指数関数的に高まる恐れがある。このことについてどのように考えるか?」との質問に対して、西村大臣は、「今、経済は大変なことになっている」と答えた。
「特に飲食、宿泊関係、また文化・芸術、エンターテインメント関係の方々はイベントも中止となり、苦しい思いをされている。
また、医療関係者も大変な思いをしておられる。『雇用と生活をしっかり守る』、それが安倍政権の最重要課題。そのためにできるだけ早く補正予算を成立させたい」と、補正予算の中身の問題には触れず、成立されることを、第一に急ぐ姿勢を見せた。
この「補正予算」には、コロナウイルスに対する包括的支援交付金として1490億円が組まれている。しかし29日の衆議院予算委員会で、日本共産党の志位委員長が、新型コロナウイルス患者に対応している全国の病院の減収を補償するだけでも10倍近い1.4兆円が必要との見込みを明らかにしていた。
つまり医療体制を支援するには、1490憶円という乏しい補正予算では完全に不足しており、最前線でコロナウイルスと戦っている医療機関に対し後方支援を怠って「見殺し」にするつもりか、との批判を浴びるのは当然の予算なのである。「医療崩壊」をひどく懸念し、そのために検査を過少におさえることを是としておきながら、他方で医療機関へのロジスティックスをおろそかにして、別の理由で「医療崩壊」を招きつつある。安倍政権のやろうとしているコロナ対策は、あまりにもチグハグ過ぎて、戦略的な意図が何、なのかそもそも戦略があるのかないのかさえも、わからない。
- 新型コロナウイルス患者を受け入れた病院は平均で月2億円の赤字! 財政的な側面から起きつつある医療崩壊を日本共産党志位委員長が明らかに!(日刊IWJガイド、2020年4月30日)
なお、西村大臣は、補正予算として計上されている「持続化給付金」について、こう述べた。
「この『持続型給付金』は、200万円・100万円の給付金を中堅中小企業や小規模事業者、そして個人事業主、フリーランスの方々にも給付するもの。だから、一日も早く補正予算を成立させて、連休明けにも給付できるようにスピードを上げていきたいと考えているところだ」と述べて、会見を結んだ。
西村大臣の言葉は、中小企業やフリーランスの方々に、慈しみ深く慮(おもんぱか)るように聞こえるが、緊急事態宣言が延長されれば、事業者、被雇用者、個人事業主等、さまざまな立場の人々の経済的苦境が一層積み重なっていく。
休業も1か月なら耐えることができたが、それ以上は無理という企業も少なくないだろう。延長するならば、そのたび「持続化給付金」を繰り返し支給することが必要になるはずだ。そうでなければ多くの業者はもたず、倒産、破産、失業が続出する。緊急事態宣言延長目前にして、そうした長期的な支援計画に関する発言は、西村コロナ担当相からは、残念ながら聞かれなかった。